断食合宿に参加してきた|その2|初日
信州・上田の外れ、青木村近くにある昔からある大きな門構えのおうち、あぐりカフェあまてる。その蔵を改装したスペースが今回の断食合宿の会場。
https://kitchen-pharmacy.blogspot.com/2019/12/2020-ayurveda.html
ひと通り、自己紹介も終わってお話しも始まっている頃だろうか。集合時刻は金曜午後1時。2時間遅れで着くと
「あ〜きくちゃん、よかった。道がわからないかとおもって心配しちゃった」「すみません〜。スマホが出がけに使えなくなっちゃって、調べたりで遅くなったんです」
席について、まずは検温。そして問診票を書いていく。普段の起床時間や食事、生活等々。春先からのわたしの生活にルーティーンはほぼ皆無、不規則極まりない。記入した問診票をタミさんに手渡しながら「最近、もうダメダメなんです〜仕事もいろいろもなくなってしまって…」言い訳じみた弱音を吐くとつい涙も出てきた。
それからタミさんが脈診で、アーユルヴェーダの3つの性質「VATA ヴァータ 風・空」「PITTA ピッタ 火・水」「KAPHA カパ 水・地」を診てくれる。
わたしはヴァータ寄りのVP(ヴァータ・ピッタ)。そして今はヴァータが過剰になっている状態。
ヴァータは風、運動のエネルギー。軽・冷・乾・粗・動といった性質などなど。以前もタミさんの講座できいていたことだけど、改めてこのタイミングできいて自分の有り様にあてはめると納得がいく。この合宿は単なる断食合宿ではなく、タミさんが師事するインドのアーユルヴェータ医とタミさんによって考案された断食とパンチャカルマ(アーユルヴェーダによる体内浄化法)を組み合わせたオリジナルプログラムなのだ。
今回参加にあたって、1〜2日前から刺激の少ないお食事にしてください、と事前にお知らせがあった。具体的には、小麦や肉魚、乳製品を控える、食事を少なめに摂るなど。前日の木曜夕食は早めに、そして当日金曜朝は絶食かお腹が空いているようであれば果物やスムージー、野菜スープなど。
わたしは木曜は残り物があり乳製品を少し摂った。金曜朝は梅しょう番茶を飲んだだけ。アトピーの症状に悩まされている参加者の方は木曜昼食から抜いてきたそうだった。
基本的に断食中に摂っていいのは、白湯・アーユルヴェーダのお茶(ハーブティーのようなもの)と薄めたリンゴジュース(かなり薄めているようだったけどとても甘く感じた)。飲む量に決まりはないので各自、適宜摂ってよい。頭が痛くなったときに耳かき一杯分くらい摂ってね、と言われたのがタミさんお手製の梅干しの黒焼き。梅干しの黒焼きとは、手作りの梅干しを炭火で24時間煎って炭化させたもの。初めて口にしたけれど、ゆかりのようでやさしいお味。全く塩分を摂っていないので、ほんの少し口にするだけでなんだか効き目がありそう!
ひと通り話がおわってからカフェスペースへ移動。今回の断食期間中に使う材料をつくりはじめる。
まずはギー(ghee)。これはバターから不純物を取り除いた、抗酸物質が豊富な「最高の油」。食用だけでなく、ヒンズー教の宗教儀式にも使われるという貴いもの。初日と二日目の朝、小さじ2杯だけ舐められる。
作り方はとても簡単!無塩バターを鍋に入れ、中火で熱して沸騰させる。沸騰してパチパチいってきたら弱火でそのまま、下の方が焦げはじめ、溶けたバターが黄金色になったらできあがり。漉し紙で漉して瓶などの保存容器にいれる。鍋底に残ったギーのおこげがとても美味しいのでそれもおたのしみ。できたてのギーと少しのおこげをなめる。普通のバターよりもさらにコクがあってほんと幸せになる味だった。
次は、薬用マッサージオイル。今回はすでにタミさんが用意していたヨモギオイル、または薬草を煎じた液と太白ごま油を混ぜたものの二種。どちらがよりその人に向いているかOリングテストを行い、それぞれ全身マッサージ用のオイルを準備した。わたしは薬草油が向いているとわかった。
そして、生のひよこ豆のパウダー(他の豆の粉でも代用可。但しきな粉だと炒ってあるので代用できない)とターメリックパウダーを適量合わせたものを身体を洗うソープとして用意してもらった。
蔵に戻って、今度はさきほどつくったマッサージオイルを使って各自、全身セルフマッサージ。マッサージしながらそれぞれ自己紹介。自分の番になるとなんだか感傷的になってつい涙が出てしまう。
背中は自分でできないので、輪になって隣のひとにやってもらいながら、反対隣の人にやってあげる。参加者はわたしを含め4人、全員女性。タミさんも入って5人、みんなパンツひとつでマッサージしあいっこで緊張も少しほぐれてきた。最初は裸になって少し肌寒かったが、マッサージをしてあたたかくなったところで近くの温泉へ移動。
クルマの中でこんな話をした。「もう春先からのこれで外に出かけられない、おうちに居なさいって感じがしんどくて」「ヴァータだからね。風さんは移動が好き。音楽や踊るのも…」タミさんがヴァータの良い側面を話してくれるのを運転しながらきいていると、ああやっぱり自分は風さんなんだなと感じた。
温泉ではまず、さきほどつくったパウダーソープを使って身体を洗う。びっくりするほど真っ黄色だけど食べられるものでつくられているので仮に誰かに文句をいわれたところで普通のボディソープよりよっぽど環境にやさしい。そのあと、それぞれサウナに入ったり、内湯・外湯に浸かったり、のんびり過ごした。
温泉から戻ったあとはご飯〜とはいかず、今日の寝床を整えてから「絶食療法の科学」というドキュメンタリー映像をみんなで見る。絶食療法は最初、旧ソ連の精神病院からはじまったとのこと。一定期間、医師の管理下において絶食を行った精神病患者が治癒し、社会復帰したことから、今現在もシベリアの一部で絶食療法を行う医療施設があり、一定の効果をあげ続けているいること。また絶食療法をとりいれたドイツの医療施設の紹介、アメリカの研究者の話など…現在の商業主義社会においては、加工食品や外食産業との兼ね合いもあり、なかなか表立って小食や絶食がいいと声高に言えないけれど、わたしたちはほんとうに必要なものを食べているの?情報で食べ過ぎていない?といろいろ考えさせられる映像だった。
食事を摂らないとそれにまつわる時間がかからない、という発見。と同時になんだかパワー不足な感じもしつつ、盛り沢山な一日が終了。普段の乱れた生活よりも早く、日付が変わるだいぶ前に休んだ。振り返るとちょっとしたきっかけで涙腺がゆるみ、よく泣いた日。タミさんも、初対面のみんなもきっとびっくりしただろう。
(つづく)