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ジャイアントパンダとレッサーパンダの違いくらい、麹と紅麹は全く別物です。

TVニュースでも大きな話題になった「紅麹問題」。
亡くなった方もおられるほどたいへんな健康被害を起こし、
まだ収束していません。

お酢をはじめ、発酵食品・料理・ドリンクなどを提案している私としては、麹と紅麹の違いをお伝えする義務があると思いました。

麹と紅麹は例えでいうと、ジャイアントパンダとレッサーパンダくらい違います。竹を食べることから、レッサーパンダの大きな新種だと思ってジャイアントパンダと名付けても、レッサーパンダはレッサーパンダ科で、ジャイアントパンダはクマ科です(中国ではレッサーパンダが成長するとジャイアントパンダになると考えられていた地域があるそうです)。

それくらい違うのです。

私たちはお酢や味噌、醤油を作るのに「麹」は欠かせないものです。 
醸造食品においては、麹は酵素の供給源としての役割が大きいです。
例えば日本の清酒造りでは、麹の持つ酵素の力によって原料であるお米のデンプンが分解され糖になり、その糖を酵母が食べてアルコールを生産します。

紅麹は一般的なお酢や味噌、醤油、清酒、焼酎などに使われる麹とは生物学的にも異なる菌を使用しており、また、食品として利用される主な目的も異なります。

そもそも「麹」と「紅麹」は生物学的に違うものなんです。

そもそも「麹」とは、米や麦や豆などの穀物に麹菌を生やしたもののことです。米に麹菌が生えれば米麹、麦に麹菌が生えれば麦麹、豆に麹菌が生えれば豆麹、となります。

食卓調味料として使われる塩麹、醤油麹、コンソメ麹などは、それぞれ、塩や醤油、野菜などを麹と混ぜた調味料や料理の名前になります。これは麹と他の食材を混ぜたものであって、「穀物に麹菌を生やしたもの」という本来の麹の定義とは異なります。

今回注目されている紅麹ですが、紅麹は一般的なお酢や味噌、醤油、清酒、焼酎などに使われる麹とは生物学的にも異なる菌を使用しており、また、食品として利用される主な目的も異なります。

紅麹は穀物(主に米)に紅麹菌を生やしたものです。紅麹はその名のとおり赤い色をしており、色素、着色料としても用いられてきました。沖縄の「豆腐よう」などが紅麹を使った有名な食品です。また、近年では抽出した色素が着色料としてさまざまな食品に用いられています。

先述のように麹とは「穀物に麹菌を生やしたもの」です。そのため、紅麹も「麹」となります。

そもそも、私たち人間は、微生物学が発展する前から発酵食品を作ってきました。そのため、生物学的な定義の正確さより、それぞれの文化の中で慣習的に呼んでいた言葉が反映されていることも多くあります。

微生物学的には別の種であっても、穀物にカビが生えて、それを食べたらおいしかったという体験が共通していれば、同じように麹と慣用的に呼んでしまうのは自然なことだと思います。

大事なことなのでもう一度言いますね。

お酢などの発酵で使う麹と紅麹は全く違うのです。


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