経験したことがないことについて論じる法
おはようございます。菊池です。
私の専門は小論文なので、小論文を教えるときに、どうやって生徒が興味をもっていないことに対して書いてもらうか?について書きます。とはいえ、おそらくこれはほかの学問分野とか、ほかの勉強、特に受験勉強にも関わってくると思うのです。
とある授業から。
数年前、私がまだ福岡にいる間ですね。こういった小論文の問題がありました。
高名な書物の文章をあげて
という問題があったのです。
では、これについて、高校生がどう書くか。
これを読んでもらっている皆さんにはそれなりに読書経験があって、じゃあ私だったらこうかなぁ、ああかなぁってのがあると思います。ただ、私が前にしているのは、全く読書をしたことがない生徒です。その生徒に対して小論文指導という点でどういうアプローチができるのかって話なのですね。読書経験がほとんどない人に対して、読書のあり方を聞くっていうのは一見不可能ですよね。例えば野球を挙げましょう。野球を見たことがない人に対して、野球のあり方、楽しさを聞くのは不可能です。それと同様に、読書を絵本程度しか読んだことがない生徒に対して、読書のあり方について聞くのは不可能だと思われます。
ただ、受験において小論文というのがあるから書かなきゃいけないのです。ではどうするかというと、私がとった方法はこうです。読書と共通点があるものを挙げて、それに言い換えて考えてみよう、という方法です。何かと申しますと、例えば読書はしたことがなくても、人って誰でも何かしら好きなものあると思ったのですね。最近の高校生で言うと簡単な例でYouTubeにしましょうか、と考えました。いろんなコンテンツがあって楽しいですよね。もちろん今回の小論文において、YouTubeの楽しさを書くわけにいかないですよね。そこで、先ほどの「読書のあり方についてあなたの考えを述べなさい」という問題の"読書"の部分について、これをYouTubeに「いったん」読み替えるというアプローチをしてみたのです。要は「YouTubeのあり方についてあなたはどう考えるか、それを考えていきましょう」というところで書いていくよう設定したわけです。
YouTubeの楽しみ方はもちろんいろいろあります。YouTubeを見て、例えば音楽を楽しむ人もいれば、娯楽目的に楽しむ人もいますよね。それから知識を求めて見る人もいると思います。つまり、いろんな動画があるYouTubeの中で特定のコンテンツを選び、そして娯楽とか知識とかを暇つぶしで見ることがある。これ何かに似ていませんか?はい、「読書」です。ここで、読書をしたことがない生徒に対して、どのようにアプローチするかという話に戻ります。
本が苦手な生徒へのアプローチ。
読書、つまり、すなわち「本を読むこと」を念頭に置いて、「本」と共通点を持っているモノに読み替えていく方法をとると、仮に読書に対して全く知識がないとしても、「読書」を、その生徒が好きなものに置き換えて考えることができると思うのです。そしてここが重要なのですが、本という媒体とYouTubeという媒体はどこかで共通点がありませんか?情報を伝える媒体という意味で同じものなのです。すなわち、「情報メディア」です。こういったメディアに対して、先ほどの生徒がどういうふうな考えとか、発想ができるかを引き出していくのが大事なのかなって思うのです。
生徒に「なんでYouTube見るの?」って言ったら、私は「あのアイドルの曲聞きたいから」という話になります。「なんで聞くの?」とたたみかけると、「暇つぶし」とか、「自分が好きだから」になりますよね。じゃあ、それって結局自分が好きなコンテンツを見たいからって話だよねってなるのですね。自分が好きなコンテンツを見たい、つまり、自分が好きなものについて触れていたいっていうものは、読書でも同じじゃないの?という話になっていくわけです。そうすると、読書に関して言っても、話として楽しいものも悲しいものもあるし、もちろん面白くないものもある。とはいえ、面白くないものだろうと面白いものだろうと、それはメディアという点ではYouTubeと同じなのです。YouTubeに面白い動画も面白くない動画もありますから当然です。そうすると、その点で、読書をすることとYouTubeを見ることって、ほぼ「メディア」である点では一緒ですよね。そのように考えていいと思うのです。
そう考えると、先ほどの「読書のあり方について論じなさい」という問題は、「あなたのYouTubeの楽しみ方について論じなさい」とひとまず読み替えていくことができる。そして論じ方として、次のようなものがありえるでしょう。
というように書くことができるのです。これってほとんど本を読むことと同じだと私は思ったのですね。少なくとも小論文の答案として多少成り立つ。その答案として成り立つのは、このYouTubeの部分を読書に読み替えても成り立つから、ということでもあります。
まとめ。
ここで整理しますと、読書のあり方、楽しみ方について私たちはどう考えるかについて、読書をしない生徒であっても、それと共通点があるモノ、今回で言えばYouTubeというメディアというものについて、共通点を抽出できるのならば、それと読み替えて考え、「読書」にさらに戻すことで答案が書けるのです。もちろんこれに関しては反論もあるとは思います。「いや、読書とYouTubeは違うじゃないか」と思う人もいるはずなのです。ただメディアでかつコンテンツが多様にある点で、本とYouTubeは一緒なのですよね。そして、その点に着目して指導するというのはありえるのかなと思います。少なくとも受験指導の場合において、何も書けないよりも何かを書けた方がいい。それは明らかです。何かを書いてみて、「あ、こういう観点があるんですね」と生徒が学ぶだけでもいい。生徒が考えることができれば、次に繋がっていくのかなって思います。というように、今回は小論文における答案の出し方について書いてみました。何かの参考になれば幸いです。
おわり。