菊池遼

画家|博士(造形)

菊池遼

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【自己紹介】 菊池遼

画家の菊池遼です。 よく考えると自己紹介記事を作らないままnoteを始めていたので、ここいらで最近私のことを知ってくださった方にも私がどのような人物なのかを分かるようにしておこうと思い至りこの記事を作成しました。 … 私は2023年に東京造形大学という美術大学で博士号を取得しました。 美術大学の博士課程は制作系(作品+博士論文で修了)と理論系(博士論文のみで修了)があるのですが、私は制作系の博士になります。なので博士号持ちとはいえ作品も作っています。 博士課程修了後は

    • 【研究】絵画における「サイズ」と「スケール」

      「大きさ」を表す言葉に「サイズ」と「スケール」がある(他にもいろいろあるけど)。この言葉を絵画に適用してみると、絵画の物質としての測定可能で客観的な大きさがサイズ、絵画の描かれたイメージの中の測定不可能で主観的な大きさがスケールと言える。 それを言い換えると、画面に定規を当てて測れる大きさが「サイズ」。 で、絵画は仮に「サイズ」が5cmだとしても、それがイメージ内では巨大な山脈であったりする訳で、そこで感じ取られる大きさが「スケール」(その山脈はイメージなので大きさを測定で

      • 【展示告知】「存在の輪郭、輪郭の存在」

        「LUMINE ART FAIR」の直後となりますが先日より個展が始まりました。 会場は、北海道のニセコにオープンしたばかりのMEDEL GALLERY SHU NISEKOです。過去作を中心に、これまで私の作品をご覧いただいたことのない方に向けて会場を構成しました。 ステートメントもそうした方に向けて普段より噛み砕くことを意識して執筆しました。(むしろ普段からこのくらい噛み砕くべきだなと思いました…) 関東からはなかなかアクセスの難しいロケーションとなりますが、もしご都

        • 【エッセイ】展示を終えて

          先週末に開催しておりました「LUMINE ART FAIR -My 1st Collection Vol.3-」は無事終了いたしました。 ご高覧いただきました皆さま、お気にかけてくださりました皆さま、誠にありがとうございました。 実はこの「LUMINE ART FAIR」への参加は2回目になります。 2019年に開催された初回にも参加させていただいていたためです。 … 2019年は個人的に思い入れのある年です。 それは3年間勤めた助手の最終年だったということもありますが

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        【自己紹介】 菊池遼

          【研究】日本とフランスのキャンバスの比率

          以前、日本のキャンバスの比率が号によって異なることについて記事を書きました。 ここではF規格とP規格の100号までの縦横比を出して、それを正方形に近い順に並べた表を作りました。 それがこれです。 この表を作って、比率にバラツキがあるのは知っていたがまさかここまでだったとは…という気持ちになりました。 と思ったところで、上の記事でも触れた「日本のキャンバスの比率のバラツキは、フランスからキャンバスの規格を輸入する際に、数値を尺貫法に変換することによる端数処理で生じた」とい

          【研究】日本とフランスのキャンバスの比率

          【エッセイ】アウトリーチについて

          私の勤めている絵画教室はカリキュラムが美術史に則って組まれているというユニークな特徴を持っています。 絵画教室という場は指導が講師の恣意的な美術の理解に基づいたものになりがちという問題を抱えているように思いますが、それを美術史の参照という工夫でクリアした社長のアイデアにとても魅力を感じています。そのため働くのが楽しいです。 他には講義形式のコンテンツもあって、美術関係者などが登壇する美術にまつわるトピックのレクチャーを受けることもできます。私も一度登壇して「美術作品とタイ

          【エッセイ】アウトリーチについて

          【研究】シリーズが展開すること

          自分は作品の中で偏光顔料やラメをよく使います。 それらは〈void〉のコンセプトに与する効果(鑑賞者の移動を促す)を持っているので作品に用いられているわけですが、実はそれ以外の選択の理由もあります。つまり、作者である自分の欲望を単に満たすためです。 その欲望とは単に自分がキラキラしているものが好きだから使いたいとかいうようなものではなく(いや、それももちろんあるんですが…キラキラは正義)、作品の中にどうにかして色を導入したかったというものになります。 ところで、自分は作品

          【研究】シリーズが展開すること

          【展示告知】「LUMINE ART FAIR -My 1st Collection Vol.3-」

          「LUMINE ART FAIR -My 1st Collection Vol.3-」 もっと気軽に生活にアートを取り入れたい、アートと暮らしたい、それを叶えるLUMINE ART FAIR。 3回目の開催となる今回も、ルミネがキュレーションした人気の新進気鋭のアーティスト約30名が参加するアーティストが主役のアートフェアです。 自宅に飾りやすいサイズや手に取りやすい価格帯の現代アート作品が会場に並びます。コンシェルジュによるアドバイスや、アーティストが行うワークショップな

          【展示告知】「LUMINE ART FAIR -My 1st Collection Vol.3-」

          【研究】固有色について

          バイト先の絵画教室のスラックで「固有色」に関するディスカッションが興ったのですが、下記の内容を何も見ずに電車の中でサーっと書けて、「あ、自分前より成長してる」ってなりました。 (ヴァザーリが素描アカデミーを作って絵画・彫刻・建築をまとめて捉える概念を発明するまで美術という概念は存在していないのでやや記述が緩いですが、まあそこは今回の主題ではないので) ということで、自分の成長がなんか嬉しかったし、固有色についてこういう書き方をしてるものを見たことがない気がしたので、ここにも

          【研究】固有色について

          【エッセイ】話の分かりやすさ

          最近いろんな人から話が分かりやすいと言ってもらえて嬉しいです。 絵画教室の生徒さんからコレクターさんまで、美術を専門としている訳ではない方からそう言ってもらえているので、本当に分かりやすいと思ってもらえてるのかなという気がしています。 以前に「ツイッターでよくバズる」みたいな投稿をしましたが、それも自分の話や文章が分かりやすいからなのかなとぼんやり思いました。 そういえば、ツイッターでバズった時に不思議に思って「なんでバズるんだろう?」みたいなことを書いたら、「専門用語に

          【エッセイ】話の分かりやすさ

          三瓶玲奈「Practice_02: 繰り返す」EUKARYOTE

          2024.10.12 EUKARYOTEで見た「Practice_02: 繰り返す」に出ていた、三瓶玲奈さんの新シリーズ一作目の作品が面白かった。 ぼんやり眺めると道にかかったパースに従って目線が奥に向かうのだけど、目線は奥に行き切る前に、画面と並行ないくつかの筆触に遮られて止められる。 すると今度は、画面の中心あたりに集まっている、地に対してコントラストの強い筆触の群れに目線が捉えられ、それらをランダムに目線が行き来させられる。と思っていたら、ふと筆触がイリュージョン

          三瓶玲奈「Practice_02: 繰り返す」EUKARYOTE

          【研究】日本のキャンバスの比率

          知り合いの画家(ミノリさん)がTwitterで「絶対違うんだけどF100よりF80の方がデカい」と言っていて、物理的な大きさは確実にF100の方が大きいのに、そう感じられるということがとても面白いなと思いました。 理由についてぼんやり考えてみたら、日本のキャンバスは号数によって縦横比が変わる意味不明仕様なので、人によって描きやすい比率があって、そこでの「描きにくさ」が「サイズの大きさ」というかたちで言語化されて理解されてるのかなと思いました。 この日本のキャンバスの比率の

          【研究】日本のキャンバスの比率

          【エッセイ】形式を見る眼

          自分が絵の形式分析をする時の眼というか判断力というかの社会的条件がいまとても気になっています。 自分の博論での仕事は伝統的な絵の形式分析の前提に揺さぶりをかけるものだと自分では位置付けていて、というのも、伝統的な絵の形式分析は、ある特権的な位置、つまり「絵の正面でかつフレームが視野に収まる位置」からの眺めを対象としていたからです。その特権性を相対化する意味が自分の仕事にはあると考えています。 で、こういう何かしらの「隠された前提」がたぶん自分の形式分析にも存在していて、そ

          【エッセイ】形式を見る眼

          【エッセイ】文体について

          私の参加する金沢で9月13日(金)から開催の展示、「釘を打つ(打たれる)」のステートメント(↓のURLから見れます)は、ギャラリストからもらった骨組みをを私が解釈して書いたのですが、出品者の新井さんから、「読んだとき菊池っぽい文体だと思った」と言われて、「自分にも文体ってあったんだなぁ」みたいなことを素朴に思いました。 https://poolsidegallery.jp/posts/hammer_nail もちろん文体がない文章はあり得ないわけですが、それを「菊池のスタ

          【エッセイ】文体について

          【読書記録】千葉雅也『センスの哲学』

          千葉雅也さんの『センスの哲学』を読んだ。センスをモノの形式を捉えることと繋げて論じていて、結構なるほどとなった。作り手の自分としては前半がやや内容が薄く感じたけど(モノをいったん形式から見てみましょう、リズムとして捉えてみましょうみたいなことって、何かを作る人なら全員やることなので)、このくらいの薄さがこうした観点を持ったことのない人にはちょうど良いんだろうなとも思った。自分の目指すアウトリーチ仕事の参考になるなと思った。 というのも、この本はどんどん論が深まってくタイプと

          【読書記録】千葉雅也『センスの哲学』

          【エッセイ】造形大学ゲスト講義

          母校の東京造形大学へゲスト講義を行いに伺いました。 私の論文の師匠、藤井匡先生の大学院の授業のゲストです。 … 藤井先生から依頼を受けた時に言われたのは、「自作を通して何かを論じること」について話して欲しいということでした。 話を伺った時、これはけっこう難しいテーマだなと思いました。 テーマに答えるように話すのが難しいと思った訳ではありません。「自作を通して何かを論じること」そのものが難しいということです。 というのも、自作は「主観的」なものなので、それを媒介に何かを

          【エッセイ】造形大学ゲスト講義