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daisaw33
あなたの罪は何色ですか? ― 罪悪感可視化メガネ【ショートショート/578文字】
「この街で、もし罪悪感が色で見えたら?」
朝、SNSにそう投げた瞬間、配達ドローンが小箱を置いていく。
中にはグレーのメガネ。
ヴェールグラスVer.2.1と刻まれ、「罪悪感可視化ツール」とだけ説明がある。
赤は他人を踏みにじる成功、
紫は裏切り、
灰青は見過ごし、
緑は隠し事、
橙は不注意。
誰もが、目には見えぬ小さな罪を内に秘めているらしい。
メガネをかけて街へ出ると、人々が淡い色を纏っていた。
上司は赤黒い気配。
いつも立派に見えた人が、陰で誰かを犠牲にしたのだろうか。
苦手な営業担当はほぼ無色。
後悔がないのか、それともただ冷淡なのか。
先輩は淡紫を揺らし、わずかな裏切りに苦しんでいるのかもしれない。
だから優しいのだろうか。
罪を自覚し悩む人ほど、他者を思いやるようになるのかもしれない。
昼、鏡に映った自分に藍色が沈んでいた。
かつて誰かを見捨てた記憶があったのかもしれない。その色が、メガネが、今になって問いかけてくる。あの過去が、いまのぼくをどう変えたのだろう。
夕方、メガネを外しても脳裏には色彩が残る。
罪を抱える人が優しく見え、ほぼ無色の人が不気味に映るなら、何が本当で何が仮面なのか。真実はどこに潜んでいるのだろう。
帰宅後、SNSに「たぶん、みんなが色を抱えてる」と書き足す。
世界は複雑だ。
でもぼくはきっともう、メガネに頼らなくても、誰かの痛みを感じ取れる気がした。
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