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あなたの行動があなたの思い通りにならない根本的な理由

 クリストファー(10歳)は、自転車を使って自分の行きたいところに行くのが大好きだ。今日は、ピアノのレッスンが終わって家に帰る途中、バスケットボールをしに公園に寄る。前にも何度か公園に寄り道している。帰りが遅くなって、お母さんがひどく心配するのはわかっている。お母さんのことは大好きで心配させたくない。でも、やめられない。

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 カテリン(26歳)は、母親と2人の祖父母をガンで亡くしている。自分もガン体質かもしれないと思うと恐い。そう思いつつも、その日2箱めのタバコの封を開ける。

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 ジェイソンは2度目の保護観察中で、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)では3度目の謹慎処分を受けている。今年は326万ドル稼ぐ予定だが、それもプレイすればの話だ。一緒にいる少女は家に帰りたがっている。少女を家に帰すべきなのはわかっているが、ジェイソンはそうしない。少女の意思に反して手元に置いておくのはいけないことだとわかっている。彼の母親も人一倍失望するだろう。それでも彼は、ホテルの部屋のドアをロックし、シャツのボタンを外しはじめる。

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 バリーとケイは、親がこんな大ゲンカをしているのを見たり聞いたりしたら、子供たちが傷つくとわかっている。結婚してから9年半もたてば、仕事でクタクタになるまで働いたあとで、家でお金の問題を持ち出したら大ゲンカになることくらいわかっている。今夜は、ナイフで片を付けることになるかもしれない。それでも、どちらもやめようとしない。どちらも、別な時に話し合ったほうがいいとは言い出さない。ケンカは続く。

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 キンバリーは、以前のように小柄で均整のとれた身体になるためなら何でもするつもりだ。すでに35キロ近く体重が増えている。彼女にとって、外見は命だ。彼女は自分の体型がイヤで、メークとヘアスタイルをばっちり決めようと必死だ。ありがたくない体重の増加をカバーしてくれると言わんばかりに。真っ暗な部屋の中でベッドに横になりながら、彼女は5本めのキャンディー・バーを食べる。

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 もしあなたが、これらの話に出てきた人たちの誰かと、少しでも似たところがあるなら、たぶん繰り返し何かを言ったり、したりしたあげくに、信じられないという気持ちと挫折感から、首を横に振ったことが、何百回、いや何千回とあったと思う。あなたは自分にこう言ったかもしれない。

「私はどこか悪いのだろうか? いったいどうして、こんなことを続けているんだろう? こんなことは全然したくないし、こんなことをしている自分は大きらいだ。それなのになぜ、こんなことをしているのか?」

 そういったことをするのは、あるレベルではそれでうまくいくからである。あなたはあるレベルで、その明らかに望ましくない振る舞いが、ある目的にかなっていることを感じ取っているのだ。

 クリストファーやカテリン、ジェイソン、バリーとケイ、キンバリーの話を読みながら、彼らの生活に共通するパターンが自分にもあることに気づいただろうか? 
 みな、あるレベルでは望んでいないことをしていた。みないっぽうでは、自分の行動が自分自身や他の人にとって望ましくないマイナスの結果に必ずつながることに気づいていた。にもかかわらず、彼らは望ましくない行為にこだわった。あなたとまったく同じように。あるレベルではそれでうまくいき、その行為には見返りがあるということが、ありえるだろうか?

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 今までのことから、選ぶ行動によって得る結果が決まることは、きわめて明らかであるはずだ。当然、同じ行動を繰り返すなら、その結果は望ましいものであるのにちがいない。そうでなければ、同じ行動を何度も何度も繰り返さないだろう。

 逆に、その行動を繰り返さないなら、結果が望ましくないということになる。つまり、そんなことをしても何のメリットもないのだ。熱いストーブに触ったところを思い浮かべてほしい。望ましくない結果が生じることははっきりしている。だから繰り返すことはない。

 同じように、行動を変えると結果も変わることは明らかだ。もしあなたがそのことを本当に「わかっている」なら、違った行動をとることができれば、これまでとは違うものが手に入るということもわかるはずだ。従って、あなたは人生を変えるための大きな一歩を踏み出したことになる。

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 何をしなければいけないのか知っているのと、そのためにどうすればいいのか知っているのは、まったく別物だ。あいにく、人はしばしば、イヤでイヤでたまらなく自分でもやめたいと思っている行動を、頑固にとり続けてしまうことがある。でもなぜこんなことになるのだろうか? 伝統にとらわれず自由にものを考える合理的な人間のあなたが、なぜ、絶対にしたくないことを繰り返し行い、そのせいで大きな苦しみを味わうのか?

 論理に反するどころではない。きっと合理的な人間なら、自分がしたくないことはしないはずだ。きっと合理的な人間なら、望んでいない結果をもたらしたり、望む結果が得られなくなったりするような行動はとらないはずだ。だが、合理的で論理的な人間だと自分で思っていても、まさにその通りのことをしている。

 きっと、いくらでも例を挙げられるはずだ。食べたくない時に食べる。全然お腹が空いていないのに食べる。吸いたくないのにタバコを吸う。そんなことはしたくないと思っているのに、言い争ってかっとなる。他の人の要求にいちばん屈したくない時に、屈してしまう。プレッシャーがかかっていて、最高の成果を上げたいと思っている時に、へまをやる。感じたくないのに後ろめたさを覚え、本当はしたくもないことに膨大な時間を費やす。毎晩「ゴロゴロ」して、じっとテレビを見たりせずに、運動や読書をしたり、妻や子供と一緒に過ごしたりしたい─でも、テレビに張り付いている。そのうえ、こうしたことを何度も何度も繰り返す。

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 どうすれば、この一見、不合理な行動をなくせるか知るのは、人生を改善するのに必要不可欠なことだ。あなたは少なくとも2つの重要な方法で、これを実践できる。1つは、望むものを手に入れるのに必要な建設的な行動を取ることだ。それと同じくらい大切なもう1つの方法は、望むものを手に入れるのを妨げる行動をやめることである。

 後ろ向きな行動をなくすには、なぜ自分がそんなことをするのか、その理由をまず理解することが不可欠だ。それを理解してはじめて、どのボタンを押せば、自分自身や他の人の行動に望ましい変化をもたらせるかわかるようになる。(つづく)


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