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貧乏人を生む、結婚システム【人間は~12】

 根気強く、時間をかけて考えていけば、ジグソーパズルが少しずつ完成していくように、願望や目標も見えてくるようになる。考えること、それは、「人生の意味を知るための旅」なのである。

 しかし、結婚のことしか眼中にないような若い女の子たちはどうだろうか((注・もちろん、女性に限った話じゃないですよ!))。ときどき彼女たちからは、中国のフォーチュン・クッキー(クッキーの中が空になっていて、そこにおみくじが入っている)の中で、一緒に詰め込まれ蒸されているおみくじの紙を助け出そうと夢中になっている姿を想い浮かべることがある。

 もし彼女たちが、棚からボタモチが落ちてくるようなことを待つだけで、今よりもっと充実した生活を送ろうと決意しないなら、きっと、結婚するしないにかかわらず、残りの人生をずっとピラミッドの最低辺で生きていくことになるだろう。

 じきにそのことに気づくに違いない。多くの若い女性たちは、その他大勢のままでいたいのである。こうして、結婚や出産で生活はますます重苦しくなっていく。

 こういう心構えというか、思考抜きの生き方のまま結婚すると、人は磁石に吸い寄せられたように、エマーソンの言う「社会の大きなはずみ車」から離れられないようになってしまう。気の進まない仕事に就かなくてはならなくなるのだ。それはそれで社会が必要としていることなのだが……。

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 カリフォルニア州ウィードで水道管を修理する人、インディアナ州のゲイリーで浄化槽を清掃する人、フロリダ州のフォートマイヤーズでスーパーに勤める人は、こうして誕生するのである。まことに見事なシステムだ! アメリカだけではない。世界中のいたるところでこのような仕事に就いている人々がいるのである。

 空港の喫茶店にはウエートレスが、町の大きなホテルにはタクシー運転手、ホテル職員、ベルボーイがいる。町のいたるところに、しかるべき人がしかるべき職に就いて奉仕を行っているのである。ホリデイ・インズ(世界最大級のホテルチェーン)の人目につかないところでは、調理人が腕を振るい、ガソリンスタンドの従業員は、いつもの時間に店を開けている。

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「でも、このように無数の若者がいるからこそ」と、あなたは答えるだろう。そのとおり。このような人々がいなければ、社会はいったいどうなってしまうだろう。彼らのすべてが、あなたや私と同様、奉仕を行っているのである。社会に貢献しているのだ。自分たちのやり方で奉仕しているのである。

 早朝、フランチャイズのレストランから色あせたジーンズをはいた若者が、つま楊枝をくわえながら出てくる。商品集配用の小型トラックに相棒が待っているのだ。この若者も自分の役割をきちんと果たしているのである。自分なりのやり方で、人に奉仕しているのだ。

 彼はあまり頭を使ったことはないかもしれない。しかし、両親や妊娠中の妻にとって、この若者は誇りなのである。

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 カリフォルニア州モントレーのレストランで起きた、思ってもみない出来事についてお話ししておこう。私は、朝食をとりながら新聞を読んでいる最中であった。その時、突然、ウエートレスが私のテーブルの横を全力で走り過ぎていき、隅のボックスの大きな窓の前にひざまずき、大きく手を振り始めたのである。目は、外の一点を凝視していた。

 何事が起こったのだろう、と私はレストランから下を見下ろした。目に入ったのは、交差点を渡ろうとしている自転車に乗った若者だった。こちらからは少しずつ遠ざかっていた。しかし、こちらを振り向き、丘の上のレストラン(つまり私が今いるところだ)を見上げたとき、窓辺に若いウエートレスがいるのに気づいた。すると左手を振って応え、また通りを進んでいったのである。

 ウエートレスは、この青年の姿が見えなくなるまで見送っていた。そして、私たちの視線に気づくと顔を真っ赤にしながらも、満面に笑みをたたえ、目を輝かせながら「夫なんです」と答えたのである。

 これほど純粋な喜びの表情は、めったに見られるものではない。この二人の愛は、人をいたく感動させるものであった。私が目にしたものは、人生の素晴らしい一断面だったのである。この感情は、理性では推し量ることのできない、定義不可能なものだ。

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 この世で一番素晴らしい感情ではあるが、どうしてこういう気持ちになるのか説明不可能なものである。

 男女がお互いに引かれ合うのは、世のつねである。しかし、この二人の愛は、世界一般に言われている愛とは少し違っていた。なぜなら、目にしたすべての人の心をなごませ、温かくしてくれるものだったからだ。この二人に対し、だれもが顔に笑みを浮かべ、幸せな気分になったのである。

 自分の行っていることが、人への奉仕になっていると考えていなくても構わない。それでもやはり、人に奉仕していることに変わりはないのだ。

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『人間は自分が考えているような人間になる』
きこ書房

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