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たった6語で言える、成功への真理【人間は~2】

 前回は本書の著者、アール・ナイチンゲールの幼少期から、「読書好きだった母の偉大さ」が説明されました。今回は、アール氏の後半生、そして「成功を導く真理」にいたったプロセスを紹介します。

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 やがて私も母と同じように、ロングビーチ公立図書館に通うようになった。成功する秘訣を見つけたかったのだ。図書館には、何千冊もの本が並んでいた。どの本が目的の本かはわからなかった。しかし、どこかにあるはずだと信じていた。きっと秘密のカギをつかんだ人間が本に書いてくれているはずだ、と思っていたからである。
 しかしいつのまにか私は、小説に夢中になっていた。読んでいると心が晴れ晴れとするゼーン・グレイのウエスタンもの。また、スタンリー・ベスタルの『プレーンズ・インディアン』(かつて大草原地帯に住み野牛を追う放牧生活をしていたインディアン)などには、ぐいぐいと心をひきつけられたものだ。

 こうして、知らず知らずのうちに私は、母親と同じように活字中毒になっていったのである。そして、正直、誠実、勇気、正義、自由のために戦うことの重要性がわかってきたのだった。こうして早くから本に接していたことが、私の知識を平均以上のものにしてくれた。

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 第二次世界大戦の火ぶたが切られると、私は学校をやめ、海兵隊に入隊した。しかし勉強はやめなかった。そして手に入る本はすべてむさぼり読んでいったのである。
 私は、今後の人生に2つの大きな願望を立てた。1つは成功するための秘訣を発見することであり、もう1つは作家になることである。本好きが高じて、自分でも本が書きたくなったのだ。

 終戦間際には、ノースカロライナ州のキャンプ・レジューンのインストラクターとしてアメリカに戻っていた。そして、基地と住居との間の道路を運転していたとき、偶然ラジオ局が建築中であることに気づいた。そこですぐに、夜間と週末を利用してラジオ局でアルバイトをしたいと思い、アナウンサーの職に応募したところ、運よく採用されたのである。
 私のラジオの仕事は、WJNCジャクソンビルという小さなラジオ局のマイクの前で始まった。このとき以来、オーナー兼経営者のレスター・グールドとは親友の間がらとなったのである。放送の仕事は、それまで一度も経験はなかったが、ラジオは私にうってつけの職であった。40年経った今でもマイクの前に座っているのが、そのよい証といえよう。作家になるという夢もふくらみ、番組台本の書き方も少しずつ勉強していった。仕事を覚え、コマーシャル、ニュース、スポットの放送を行ったので副収入も増え、海兵隊も心おきなく除隊できた。

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 この間にも、読書や成功の秘訣についての探究は、相変わらず続けていた。世界の大宗教を研究し、哲学と心理学にも並々ならぬ興味を覚えるようになった。しかし、啓示が訪れたのは、シカゴのCBSで働いていた29歳の、ある週末の読書中のことであった。だしぬけに私は、何年もの間、繰り返し同じ真理を読み続けていたのだ、という事実に気づいたのである。

 私は17年もの間、ブッダの言葉、老子の著作、新約聖書、エマーソンの作品など、無数の本を読んできた。
 しかし、探し求めていた言葉が脳裏にひらめいたのは、ほんの一瞬の出来事であった。

「人間は自分が考えているような人間になる」
(We become what we think about)

──この言葉が、私を驚きで打ち震わせた真理なのである。
 明るい光がさっと差し込んできたような気分だった。今でも、この短い言葉が思い浮かんだとき、体が金縛りのようになり、その突然の気づきとともに、オルテガ(訳注…ホセ・オルテガ・イ・ガセト。スペインの哲学者。マドリード大学教授、1955年没)の「人間は世界に白紙の状態で生まれる唯一の創造物である」という言葉を思い浮かべたことを思い出す。すなわち、人間だけが神と同じように、世界を自由に創造していく力があるのだ。

 人間は生まれてからずっと、自分の思い描いている世界を創り出してきたのである。もし、何も考えず本能に従って生きているだけだとしたら──かつて子どものときに私が住んでいたロングビーチの人たちのように──人間は何ものにもなれないのである。

 ほんの短い言葉に真理が隠れていた。英語には60万以上の単語があるが、私が探し当てた真理は、わずか6語であった。しかも、この言葉を発見するのに、17年もの歳月を要したのである。しかし、それは無駄な歳月ではなかった。思考こそ生命を導くメカニズムである、という究極の真理をついに発見したのだから。

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 なぜ人が成功したり失敗したりするかは、人の考えが千差万別であるということから説明がつく。すなわち、人間は思考を通して自分で自分の運命を切り拓いていくものなのだ。

 では、どのような手段で自分の運命を改善していくことができるのか? アーチボルド・マクリーシュ〔訳注…アメリカの詩人。『コンキスタドール(征服者)』(1932年)で33年にピュリッツァー賞受賞。82年没〕の戯曲『自由の秘密』の中に、「人間を人間たらしめているのは、脳みそだけである。脳以外のものは豚や馬のものとも取り換えることができる」という一節がある。

 この言葉がふと浮かんできたのは、あの啓示があってしばらくたったころ、私がスタンフォード大学病院で、ボロボロになった大動脈をブタの大動脈と取り換えてもらったときのことである。
 私は、愛すべき裏庭の友人、つまりブタから素晴らしい贈り物をもらったのであった。これはまことに愉快なことだった。

 しかし、どうしても交換できない器官がある。それが脳だ。脳があるからこそ、人間はユニークな生き方ができるのである。思考が人生の羅針盤なのである。いったん方角を定めてしまえば、自分が意識して修正しないかぎり、同じ方向へとどんどん進んでいってしまうものなのだ。

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『人間は自分が考えているような人間になる』
きこ書房

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