【ぼく、できるよ。お手伝いする?】#37
”子どもと遊ぶ”が仕事の
小児の作業療法士ミキティです。
私には
”知ってもらいたい家族がいる”
私が関わる障がいを持つ
お子さんとその家族。
その家族のストーリーから
いつも沢山の学びがあります。
その一部を皆さんに
知ってもらいたくて綴っています。
(過去の投稿はコチラで読めます)
今回のテーマ:
「挑戦したくなる環境をつくる」
1.低体重だと脳性麻痺の確率が10倍になると知る
アオトくんは3月の早生まれだ。
産まれた時、小さかったけど
元気な産声は
”無事で産まれてきてくれて良かった”
とママを一安心させた。
成長するにつれ、ママは
ふと、発育の遅さが気になり始める。
スマホで検索する回数も日々増える。
そして、それは毎日の日課になっていく。
”低体重だと脳性麻痺の確率が10倍になる”
あるサイトで知る。
2.産まれた病院で診察してもらう
首がすわらない、
うつ伏せが苦手…
”この月齢はこんな事が出来る”
と育児サイトに表示されている。
すべてが当てはまるわけでは
ないとしても、
定型と言われる発達よりも
明らかに遅れている。
もしかして、
いや、たぶん、、
脳性麻痺かもと頭をよぎる…
生後9ヶ月。
産まれた病院で診察。
「見る限り問題ない」
とDrに言われた。
産まれた時と同じだ。
本当にそうなのか?
診察が終わりかける時に
ママは訴えた。
『物を取ろうとする時に
手が震えるんです。』
「脳性麻痺かもしれないので
病院紹介するね。」
淡々と話が進められた。
3.治らないなら今できることをやる
紹介先でMRIと触診をした。
すぐに”脳性麻痺”と診断された。
ママはこう話す。
”多分そうだろうと思っていたので
疾患名がハッキリ分かり
もやもやが不思議と吹っ切れた”
その時から、
今まで検索していた”脳性麻痺” から
”何をすればこの子に良いのか?”
に検索はシフトした。
良いと言われる治療方法や
リハビリの方法を調べては
手当たり次第、スタートした。
『治らないなら
今できることをやるしかない』
ママは前に向かって進み始めたのだ。
4.可哀想、なのか?
時々、私はこう思う。
『可哀想ですね』
って言われること。
障がい児を持つ母親なら
少なからずあるだろう。
そう言われると、
誰だってグッと落ち込む。
本人が幸せだと感じていれば
幸せなのではないか。
障がいを持っているからといって
その人が不幸だと限らない。
母親だって、
”障がい児だとすぐに分かる姿をしていたり、
特徴ある行動をする事が恥ずかしい”
と考えを抱くこともあるかもしれない。
だが、時を経るにつれ、
「今までとは違った考えを
教えてくれるありがたい存在」であり、
自分自身の弱さ、限界、孤独、醜い考えに
直面しながらも、
それまで以上に精神的な強さ、
人に対する優しさ、謙虚さ、
特別な存在であることなどを
母親は見出していくのだ。
子どもたちは
それを乗り越えることが出来る
お母さんを選んで産まれてきている。
それは決して
『可哀想なことではない』
と、私は思う。
5.OTの私ができること
リハビリでは動きづらい手足を
第三者のセラピストが動かす。
動かすことでその筋肉や腱、血流を刺激し、
硬直してしまうことを少しでも阻止するためだ。
でも私は、基本、他動的に動かさない。
子ども達にいつも
自分から動かすように仕向ける。
能動的に自分で「あれがやりたい!」
と、脳に指令を送って手足を動かす方が
はるかに効果があると思っているからだ。
だから
「アオくん、みきてぃのお手伝いしようか?」
とアオトくんが、自分から
つい言いたくなる環境を
私はよく作る。
アオトくんはママが後ろで
支えないと1人で座れない。
自分で両手・両足を動かすことも難しい。
だけど、
色んなことに挑戦したい気持ちや
誰かのお手伝いをする気持ちは
人より何百倍もある。
そんな彼に
遊びやお手伝いを仕掛けて
一緒に過ごすのが
私はとても幸せに感じるのだ。
6.ママからアオトくんへ
歩道の斜面をバギーを押して歩く時、
重くなった体重を支える手首が痛い。
将来を考えると不安が積もる。
でも、
アオト本人は無邪気で前向きなので
辛いをいう気持ちが見られないことが
今は救いになっています。
とにかく笑顔がかわいい。
楽しんでる時の笑顔、
好きな物を食べている時の笑顔
を見ていると胸がきゅーんとなる。
辛い事も多くて、
人に助けてもらう事が
多い人生かもしれないけど、
大丈夫、なんとかなる。
その分、人の優しさに
触れる機会が多い人生だから
沢山の幸せを感じられるよ!
撮影 福添 麻美
参考 障害児を育てる母親の視点の深化の家庭に関するー考察
石川 友香