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『極夜行』

今回ご紹介する本は
『極夜行』 著:角幡唯介

極夜を4ヶ月過ごした探検家の物語

本書は、ノンフィクション作家であり探検家でもある角幡唯介さんが、
極夜(太陽が1日中昇らない日)のグリーンランドの中を4ヶ月かけて冒険した実体験が綴られた一冊です。


この度の目的は、
「太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのか」
「真の闇を経験した後に現れる太陽を見た自分は何を感じるのか」
を身をもって体験することでした。


私たちの生活の中では当たり前の存在である太陽。
その太陽が全く姿を表さない4ヶ月の日々。
そして太陽が出ないことによる氷点下30〜50℃の世界。
皆さんは想像できますか?

私は想像するだけで少し気持ちが沈んでしまうような感覚になります。
そういえば冬のこの時期は、太陽が出ない日が続くなかで垣間見える陽の光に心が少し躍ります。
それだけ「太陽」は私たちに精神的なエネルギーを与えてくれているんですね。



本書で印象的だったこと。
それは「光」に対する著者の向き合い方です。
漆黒の闇に覆われる世界だからこそ、微かな「光」が与えてくれる情報が命を繋ぐことに直結してきます。

旅の歩を進める際は基本的に「月の光」を頼りにしています。
そして、普段私たちはあまり気にすることのない「月の満ち欠け」が旅のスピードを左右したり、月日の経過といった時間感覚を教えてくれます。


月の動きを掴んでしまえば旅は案外容易なのでは?
と思う方もいるかもしれませんが、この「月」という存在に角幡さんは振り回されてしまいます。
筆者は最終的にこの「月」を「気まぐれな女」と、嫌悪するくらいの表現を用いています。
そのように書きたくなるまで振り回された体験談にも注目して読んでみてください。


この他にも、
旅の途中で手にできる予定をしていた食料が手に入らなかったり、
経験したことのない天候に見舞われたりと、
旅の中で幾度となく「死」の文字が目の前に現れます。

どのようにしてその状況を乗り越えたのか。
そしてその時に何を感じたのか。


私たちにとって、角幡さんが体験したこの究極の世界は想像すらできないものですが、筆者が目でみて肌感じたものたちが繊細かつ豊かな言葉で綴られており、読者にその追体験を届けてくれます。

本書を開いて、4ヶ月の極夜の旅に出かけてみてください。
そして本物の「太陽」との出会いに自分は何を感じるか。ぜひ体験してみてください。

それでは今回のおすすめ本の紹介は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


余談ですが、
私が本書と出会うきっかけになったPodcastがありますので、
よろしければ聞いてみてください。


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