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VRガンナガンの「こだわり」ポイントから見える「現実のボードゲームをどうVRゲーム化するか」【VRインタラクションを見てみよう:VRガンナガン編】

 この記事をはじめとする「VRインタラクションをつくろう・見てみよう」シリーズは、私がVRコンテンツを触る・作るうえで特にこだわっている「インタラクション」の部分を自ら解説・明文化することで、私が発信したい「VRインタラクション」というテーマを明確に示すこと、ひいては後進のVRコンテンツ開発者の一助になることを目的としている。
 なお、ここでいう「VRインタラクション」とは、「市販のVRデバイスに付属するコントローラーなどを使ったVRコンテンツ特有の操作方法・演出・表現」という意味合いである。
 今回は、つい先々週にVRChat上で公開された「VRガンナガン」について、設計や演出などを私の目線から解説・分析をしてみようと思う。


イントロ

ボードゲーム「ガンナガン」のVR化、「VRガンナガン」

 VRガンナガンについて説明する前に、まずはボードゲーム「ガンナガン」について解説しなければならない。

 「ガンナガン」とは、『プレイヤー同士が二丁の機銃を組み合わせて対戦する「高速二丁銃バトルカードゲーム」』である。
 その特徴は、銃士(4種)と機銃(6種から2種選択)の組み合わせによる戦略の幅広さ、豊富なカード効果が織りなす戦略の奥深さにある。

 そして、「VRガンナガン」は、一般社団法人REARVによって制作された、文字通りガンナガンが遊べるVRChatワールドのことを指す。
 ゲームプレイの様子やおおまかなイメージを知りたい場合は、ヤタノ氏とレナス氏のレビュー動画を視聴するといいだろう。しかし、私がこれから語るワールドの設計や演出、ギミックなどについては、実際に遊んでみなければ分からないことも多いので、ぜひ一度足を運んでみてほしい。


私が感じた「こだわり」ポイント

 ここからは、私がVRガンナガンを遊んでみて「こだわり」を感じた表現やシステムをランキング形式で解説する。

1位「銃での攻撃、注射での回復」

 やはり1位は本作の目玉、「銃での攻撃」であろう。ガンナガンの世界観を表すのにこれほど適した小道具は存在しない。これはやはりVRならではの表現であり、既存のボードゲームをVR上に実装する際の強いモチベーションにもなりうる。

銃を撃つと相手のライフが-1、注射を打つと自分のライフが+1される。

 この仕組みが素晴らしい理由を一言で説明すると、

  • 「ライフ管理」という現実では少々労力がかかる工程を、「銃での攻撃、注射での回復」に置き換えることで、ストレスフリーかつ世界観を楽しむ工程にまるごと変容させてしまっている

ということである。このことは、あらゆるボードゲームにとってイノベーション以外の何物でもない。
 
ぜひとも、さまざまな方に体感してもらいたいポイントである。

2位「カード一枚一枚の挙動」

 VRガンナガンを初めて遊んだとき、あることに驚かされた。
 なんと、カードが机に埋まらないのである。これには思わず唸らされてしまった。とてつもない「こだわり」を感じる。

 VRに馴染みが無い人にとっては「カードが机に埋まらないのなんて、当たり前じゃん」と思うかもしれないが、VRゲームに限らず、ゲーム設計全般では物体(Object)一つ一つの挙動を設定する必要があり、「カードが机に埋まらないようにする」という設定も、そのひとつである。
 このような「カードの挙動」があることで、プレイヤーはVR空間内にいるにもかかわらず、実際にボードゲームで遊んでいるという「現実感(リアリティ)」を感じることができる。

3位「各種便利機能」

 実装側の事情として、VR環境(少なくとも、現状のVRChat)では物を掴む(PickUp)動作は1つの物(Object)にしか適用されず、カードを複数枚同時に持つことは(何らかの工夫をしない限り)難しい
 この問題を解決するのが、カードをまとめて持てるツールの存在だ。

ワールドにはサンプルとしてトランプ一式が置いてある。
ババ抜きもできるぞ!

 他にも、デッキをシャッフルできるツール、カードを拡大表示してテキストを読みやすくする機能など、VRChatのデフォルトの機能では難しく、手間がかかる作業を便利なツールや機能を実装することで解決している。

番外:アナログをとるか、デジタルをとるか

 蛇足であることは承知の上で、もし私が現状のVRガンナガンにあれば良いと感じた機能を例示したいと思う。言うまでもなく、VRガンナガンは完成度があまりに高すぎるため、正直なところ、重箱の隅レベルである。

  • フェイズ進行・確認用チェックシート

 ガンナガンには、「メインフェイズ」と「ダウンフェイズ」の2種類のフェイズがあり、ターン開始時・終了時に発動するカードの効果が存在することも相まって、フェイズ進行のたびに気を付けなければならない項目が多い。
 また、私自身プレイしていて、強制効果を発動し損ねたり、銃士や機銃の効果まで頭が回らないことが敗因につながるケースがしばしば存在した。
 
そのため、ユーザー側でできるフェイズの進行確認・銃士&機銃の効果を一覧で確認できるチェックシートをワールド側で用意することでよりフェイズ進行を視覚で認識しやすくできる。
 加えて、フェイズ進行に応じたエフェクト・音声を発生させるなどの工夫をすることで、世界観の表現など、ボードゲームとしての面白さを向上させる効果が期待できる。

チェックシートを自作してみた。
オーバーレイアプリ等で表示しても良いが、
銃士と機銃はゲームごとに異なるため、
やはりワールド内に設置した方が適宜設定できるなど、利便性が高い。

 しかし、これまでのこだわりポイントを見るに、VRガンナガンはあくまで「アナログなボードゲームの良さ」を追求しているように思われる。
 音声やエフェクトに頼りすぎると、一般的なデジタルゲームのようになってしまい、アナログゲーム特有の良さが失われる恐れもあるので、前述のようなアイデアは無暗に実装せず、慎重に考えるべき事項だといえる。

まとめ

 以上、VRガンナガンを実際に遊んだ際に気付いた「こだわり」ポイントから、機能・演出の解説や分析を行った。
 特に「カードが机に埋まらない」というポイントは、制作側の
「アナログなボードゲームの良さをVR空間上に忠実に再現する」という確固たる意志を感じられた。それに加えて、「銃での攻撃」というVRだからこそできる表現をバランス良く盛り込んでおり、ボードゲームのVR化としてはもちろん、いちVRChatワールドとしても非常に完成度が高い。
 まだ体験していない人は、この機会にぜひとも遊んでほしい。


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