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smashing! おもいがけないいやしとは
佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして最近、伊達の家に一緒に住み始めたのは彼の後輩、設楽泰司。
週明けから怒涛のスケジュールやなんかで、疲れて帰宅して、美味い物食って風呂にゆっくり浸かって、それでも頭の真ん中辺りがどうにも冴えてしまって寝付けなかったり、そんな時。
「すいません雲母さん、お願いできますか」
「もちろんです、ささ設楽くん、こちらに」
雲母さんの膝枕で耳掃除をしてもらう。伊達さんがコンビニ行ってたり風呂入ってたり、まあ雲母さんの膝が空いてないとやってもらえないやつ。家にいる時ほぼ伊達さんが体のどこかしらを雲母さんにくっつけているので、レアといえばレアですね雲母さんの体が空いてるのは。
男子なので、当然柔らかくはない。かと言って硬すぎず、高すぎなくて丁度いい。ソファーの上、その膝に頭を乗っけて目を閉じると、雲母さんのすべすべの指先が耳元を滑って、用意された綿棒や数本の耳かきを携え耳掃除が始まる。雲母さんこだわりのコレクション。今日こんなことがあったんですよ、微かな声。まるで寝物語のように雲母さんの話が紡がれ、全身が温かくなってきて。はい、ええ、最初は相槌を打ったりするが、そのうちどこか遠くのほうで、かさかさ、さわさわ、軽い音が響く。あこれはオレの耳の中の音?それとも。
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「…あらー、秒で落ちたねえ」
「寝付けないとちょっと、このあたりが少し熱くなりますから」
ハルちゃんの手が、膝の上で寝こける設楽の耳の後ろ辺りを撫でる。そっと膝から体をずらして、ブランケットで設楽を雑に包んでやる。凄いわ全然目覚める気配がないねえ。このままここで寝かせてやろ。ハルちゃんの耳掃除の効果は絶大。これで寝落ちなかった奴俺知らないもん。てかさせないけども。俺の一番のパワースポットでもあるハルちゃんの膝の上。癒される、それ以上になんだろ、催眠効果?検証するまでもなく俺も毎回のように落ちるから、本当のとこはわかんないんだけどね。
その事をハルちゃんに話した時、この子は目を真丸に見開いて、僕今までにいろんな方々に言われたんですよ、ちょっと感動したように答えてた。ウン、まあ過去はもう「ない」ものだからいいけど、そんなさ団体様も大歓迎です、みたいにウチのハルちの膝をそんな。危ない危ない、迂闊に耳掃除請け負っちゃだめだからね、そう釘を刺しといたのよ。
ハルちゃんの特殊能力(?)は、門外不出で俺と設楽と、あと仲間内だけってことで、こっそり味わわせてもらお。