本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンであるTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーター・トレーニング修了者向けとして書いている。
この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。
社会神経科学(Social neuroscience)は、脳の仕組みの解析から私たちの社会的な行動を理解していこうというアプローチで、この記事を執筆している2022年6月時点でも発展途上の領域である。社会神経科学領域の大学の講義向けの教科書はAmazonで何冊か見受けられるが日本語訳になっているものもほとんどない。日本語の本で社会神経科学についてある程度触れられるものとして、リサ・フェルドマン・バレットの『情動はこうして作られる』をお薦めする。
地位に対する脅威
SCARFモデルについては、日本語での以下のブログでも簡潔に分かりやすくまとめられている。
SCARFモデルを提唱したのは、ビジネス・コンサルタントのデイビッド・ロックという人物である。神経科学者ではないが、その知見をビジネス・シーンに組み込む取り組みを精力的に行なっている。この記事の執筆時点で日本語で読める彼の本は『最高の脳で働く方法』である。本書ではSCARFモデルは前面に出てきていないものの(注釈で紹介がある)、それをベースとして書かれている部分が結構な割合で存在している。
また、このセクションでは以下のような写真付きコメントがかかれている。
このコメントは、さきほどの引用中の「アドバイスや指示を与えたり、誰かがあるタスクで効果がないことを示唆するだけで、簡単に、しかも無意識に地位が脅かされ、脅威反応が引き起こされる」という部分に対するレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドなりの回答といえる。
モデルとして表現するとともに、モデルを見ながら話すことで「脅威反応」が和らぐという状態は、ファシリテーターが参加者に守らせなければならないエチケットである。それと同時に、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドだからこそ、普段口に出しにくい話題でも、前向きに話し合いができるというメリットがここでは示されているといえる。
公平じゃない!
ここに書かれているように、「不公平」は職場のパフォーマンスを損なう大きな原因であるとともに、人によって「不公平」の感じ方は異なる。だからこそ「あなたが公平でないと感じていること」はワークショップのメインの問いになりうるぐらい重要な問いとなる。レゴ®︎シリアスプレイ®︎のファシリテーターとして問いの主要なレパートリーの一つにしておきたい。
また、このセクションにおいては以下のような写真とコメントが書かれている。重要な点を繰り返して強調している。
SCARFについてのさらなることは
最後に、SCARFモデルについてのデイビッド・ロック氏の論文の情報が出される。GAZETTEのアーカイブからのリンクは切れているが、本記事の執筆の時点では、ここにPDFで公開されている。
ニュース!
このLEGO EDUCATIONのプレスリリースについては、本記事を書いている時点ではここから確認できる。
「BuildToExpress」というレゴ®︎シリアスプレイ®︎の基本セットを教育者向けにパーツを厳選したものらしい。これを使ってあらゆる授業を生徒にとって楽しく、かつ、授業内容についてもより深い理解に達することができるということを謳っている。
今は廃盤になっているようだが、ここから追加の教師用コンテンツがダウンロードできる(Windows版のみ)。今はLEGO EDUCATIONは、STEM教育向けの商品に力を入れているが、いずれ、こどもの哲学(P4C)のような領域を狙って、またBuildToExpressのような商品を出してくるのではないかと考えている(個人的な願望が強すぎるかも)。