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概念から自由になるためにレゴ®︎シリアスプレイ®︎ができることー『アーキテクト思考』より

 以前の記事では、教育についての研究実践から生まれてきた「概念型カリキュラム」とそれを実現する「思考する教室」、そしてレゴ®︎シリアスプレイ®︎の関係について書いてみた。

 その関係の核になっていたのは事実と概念の相乗作用であり、この作用の必要性をビジネスにおいても主張する人たちが現れた。

 上記の本では、事実と概念の相乗作用を自ら起こして大きなビジネス(問題発見・解決)の構想を打ち出すことができる思考を「アーキテクト思考」と名付けている。

 「思考する教室」構想と違う点としては、この本では、教育期間を終え、さまざまな経験から多くの概念を「すでに知っている人」が対象になっていることである。そして、そのような人(いわゆる経験を積んだ社会人)ほど、その概念で世界を見ていることに無意識になってしまっている。ビジネスでは「業界の常識」とか「不文律」とよばれるものである。

 したがって、アーキテクト思考はそれらの概念から自由になることから始まる。そこで本書で推奨されているのが「枠を外して物事を見る(メタ認知)」「第一原理思考」である。

 「枠を外して物事を見る」というのは、そのビジネスを考えるための情報の並びやセットを意識的に崩すこととされる。例えば、「コンビニ」といえば「店舗」を構えて「商品」などが「棚」に置いてあり「カウンター」まで欲しい「商品」を持って行って「代金」を支払っている。その枠を意識的に外してみるとどうなるだろう。「無人」で「端末」から「御用聞き」され、該当する「商品」が「自宅」に配送されてきて利用料金は「サブスクリプション」になっているような「コンビニ」も視野に入ってくる。

 「第一原理思考」は、その名の通り、あることの根っこにある原理や本質から思考をスタートするということだ。例えば、「自動車」という商品の本質は何なのかを考えるとき、具体的な自動車を思い浮かべるのではなく、その本質を「安全に高速で移動できるパーソナルな移動手段」と考えれば、タイヤやエンジンを使わないものでも考えられるし、空や海や地下を掘って進むようなものも許容されるだろう。

 アーキテクト思考では、概念から自由になった後にも、「事実の観察」や「座標軸の設定」、その軸を使っての「情報の整理やモデル化」、「具体的な構想案への取りまとめ」などのステップが続く。それらの中でも全体を通じて一番の難関は、やはり概念から自由になることである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎ができること

 概念から自由になるため、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は「枠を外して物を見る」ときの「枠」を浮かび上がらせることに一役買えるかもしれない。

 「枠」は課題や分類と密接に絡んでいるので、「コンビニエンスストアの抱える大きな悩みとは?」や「コンビニエンスストアが他のビジネスと際立って違う点はどこか?」という問いをモデルで作ってもらうことが考えられる。
 もしくは「こんなのコンビニじゃない!とライバル企業のコンビニ担当が叫んだ新しいコンビニとは?」などの問いを投げて、モデルを作ってもらうのもあるかもしれない。

 「第一原理思考」についていえば、「コンビニの本質とは?」という問いや「コンビニのビジネスの根底にある考え方とは?」という問いでモデルを作ってもらう、などが考えられる。

 このとき、何よりも問いが非常に大事なのだが、問いに言葉で答えるだけでなく、やはりモデルにすることでより成果は大きくなると考えられる。

 ひとつには、抽象的なものを言葉に捉えるのはそもそも難しいことがある。言葉で問いに対してダイレクトに表現しようとするよりも、まずは手を動かしモデルで表現するところからはじめるということだ。言葉にしづらいことをモデルで表現するメリットは以下の記事にまとめてある。

 次に1人でするのでなく、皆でモデルを持ち寄ることで得られるメリットがある。モデル表現にはいろいろな部分要素が入っているので、その共通点や関係性を観察することである。その比較の中で、枠や本質を浮かび上がらせる機会がもたらされる。
 言葉で語られたことを記録し比較することもできなくはないが、それを何かに書き出すよりも、モデルを見比べたほうが視覚的に共通点を見出しやすいので、圧倒的に考えやすい。

 もちろん、レゴ®︎シリアスプレイ®︎でアーキテクト思考の全て完結するわけではない。レゴ®︎シリアスプレイ®︎は抽象的な考えを表現するのに向いている分、数字を並べて調整する予算立てや、詳細な行動計画やマニュアルの作成などにはあまり向かない。ただ我々が、これからの時代に向けてアーキテクト思考の感覚を理解しておくことや、実際に出発点に立つとき「概念から自由になる」ことを助けてくれるだろう。

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