レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを活用してのゼミナール2022〜3年生編その1
前回は2年生のゼミナールのスタート時でのレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの活用事例の紹介をしたが、今回は3年生のゼミナールのスタート時のことを少し書き記しておきたい。
3年生は、全員が2年生から引き続き参加しているメンバーである。2年生のときにレゴ®︎シリアスプレイ®︎の基礎からシステムを組んで、現代社会の問題を議論するところまで(事前に各自何冊か本は読んでその場に参加)体験しているメンバーである。2年次のときのゼミナール内での集中ワークショップの様子は、下記のようにベネッセ教育総合研究所に取材していただき、かなり詳細にまとめていただいた。
今年の3年のゼミナールでは、新型コロナの感染状況にもよるが、学生自ら「ワークショップ」作りを学び、企画実践することをテーマにあげた。
「ワークショップ」では、まずそもそも何を扱うのかというテーマの設定が非常に大切である。お互いに対話する価値の高いテーマを選び明確に提示できなければ、人も集まらないし、ふさわしい参加者も呼び寄せられない。
そのテーマ設定において、何よりも大事なのは、「社会の動向を俯瞰して今求められることを掴む」ことであり、同時に「そのテーマのワークショップは自分が取り組むべきだ」と主催者側が強く思うことである。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎の3年生向けワークの流れ
上に書いた狙いを3年生にも説明したうえで、自分に対する理解を深めていくワークを始めた。
人数は10名だが3人、3人、4人のグループに分けた。5人の2グループも考えたが、その分、相互の作品説明に時間がかかってしまう。皆が経験者であることと、お互いに作品への質問の仕方もわかっていることから、3人〜4人のグループにした。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークを行うための基礎的なスキルは身につけているので、使用するブロックも、少し表現の幅が広がりやすい、スターター・キットと呼ばれる234ピースのものを使うことにした。
ワークのやり方を思い出すための簡単なワークとしては、5分ほどで手元のピースでタワーを立ててもらい、その作品に感じる自分らしさを説明してもらった。
早速、メインのワークに入る、自分が感じる「自分らしさ」について作品で表現してもらう。
このとき、表現の切り口がイメージしやすいようにホワイトボードに「好き(楽しい)」「得意(うまくできる・褒められる)」「熱中(疲れない)」の3つの切り口と、具体的な場面や行動の表現から入ってもいいが、その根底にある核となる考え方や価値観を探るよう話してから始めてもらった。時間は10分ほど。
作品を作り終わった後、各グループ内で作品の共有をしてもらった。一人当たり2分ずつとした。余った時間は質問で、という指示だったが各メンバーも慣れているので多くのメンバーが2分しっかり使って作品を説明していたのが印象的であった。
共有が終わった後、次のワークに入る。導入として、その作品が「自分の目」によるもので、これに「他者の目」の表現も加わるとより自分の理解が深まることを話した。
そこで、グループ内でお互いに自分以外のメンバーの「その人らしさ」を説明するモデルを作ってもらう。3人グループなら自分以外の2人、4人グループなら3人分、どんどん手を動かして作らせる(1人分作るのにかけさせるのは2分ぐらい)。
その後、お互いに、他の人から作ってもらった「自分らしさ」のモデルの説明をしてもらい、最初に作った「自分らしさ」のモデルにくっつけていく。「他人の目」と「自分の目」との関係性を探ってもらう。このとき「他人の目」モデルは、自分からみてある側面が強調されている感じを受けることがほとんどだ(やや短い時間で作らせるのもそういう効果が期待できるからだ)、なぜその部分が他の人の目に入りやすいのかを考えてもらうことが、より「自分らしさ」への理解を深めることに繋がりやすい。
改めて「自分の目」と「他人の目」が合わさった「自分らしさ」モデルを説明してもらう。そのときには、自分の根っこにある「コア表現」が何なのかをしっかり説明するように意識づける。「コア表現」を中心に作品にあるいろいろな部分表現が一貫性を持って語ることができるようにチャレンジさせる。
ここまでで、モデルの写真記録をとっておく。
いつも写真の撮らせ方は悩ましいのだが、この作品は一年を通じて重要になってくるので(現代社会と自分との関係からテーマを考えるときに重要な材料となる)丁寧に写真を撮らせるようにした。4方向と「コア表現のアップ」である。どれが作品の正面で、どちらが裏側かも考えながら撮影させる。作品の正面や裏側という把握そのものも作品理解を深めるのに役立つからだ。
そして最後のワークとして、1年間のゼミを通じて「自分らしさ」をどう育てたいかをモデルに手を加える形で表現してもらう。本をたくさん読んだり、色々な人と対話したり、ワークショップを企画したり、実践したりすることが「自分らしさ」をどう育てるのか、考えてもらって表現する。もちろん、そこで作られるのは成長仮説ではあるのだが、学ぶときに「伸ばしたい力」に意識的になることは、漫然と取り組むよりも効果が高いと経験的に感じている。もちろん、作品を作るだけではなく、グループ内でお互いに作品について話してもらう。
最後に、この作品についても記録写真をとってもらう。全体像(正面)と変化した部分にフォーカスしたものの2枚を撮らせる。
ここでほぼ100分が終わり、ブロックと机の配置の現場復帰である。かなりの量のワークをしているので作品作りも相互への説明もかなりスピーディーに進めたが学生たちはかなり集中して取り組めていた。さすがに1年間レゴ®︎シリアスプレイ®︎を何度も体験していると手もよく動くし、話も的確になっていく、と感じた。
ワーク後の記録の残し方
ありがたいことに、私の勤務校ではOffice365を学生たちが全員利用できるような環境にある。
そこで、今回の作品の写真とメモは授業後にゼミナールのTeamsにアップさせることにした。ただ、モデルの記録を文章という点でどう残すかは試行錯誤を重ねている。一番いいのは、撮った写真を取り込んで、写真が入っているワークシートにしてそこにペン書きで書き込んでもらう方法だが、今回はそこまで時間がとれなかった。
そこで今回は写真とそれに沿った作品解説を書いてもらうようにした。写真付きで書いてもらうのは3項目である。
(1)「自分らしさ(自分の目線+他者の目線)」の写真(多方向)と解説
(2)「コア部分」の写真と解説
(3)1年後に起こしたい変化についての写真と解説
作品解説は、お題だけを書いてもどこまで詳細に記録を残すかの感覚がわからないと思ったので、私自身のモデルと解説を作り、先行して見本として投稿した。以下にスクリーンショットの写真をアップしておくが、こうすることで、学生たちもほぼ同じ解像度の文章で投稿してくれた。
この後、3年生はGWの期間中に、1日ワークショップをする予定である。
そこでは現代社会の特徴やトレンドを表現してもらい、それらをつなぎ合わせる中で理解を深めていく。最終的には、どのようなワークショップのテーマが価値が高いのかを考えてもらう。
今回の「自分らしさ」を表したモデルは、ワークショップのテーマを選ぶ(その後チームを組んで役割を担う)ときの一つの基準になる。「自分らしさ」とワークショップテーマの関係性を考えるために、少し無理してでも(保管場所の確保が大変…)写真としてではなく、そこまで作品の実物を残しておくべきだったかもしれない。
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