本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。
Carlo Spellucciは世界的にも著名なLSPのファシリテーターである。筆者にはグローバル・ミーティングでの彼の新規事業アイデア開発支援の報告が強く印象に残っている。そこでも参加者をリラックスさせ、心の声をよく引き出すことを何よりも大切にしているとの印象を受けた。
冒頭に出てくるIDEOはデザイン思考を提唱して世に広めた会社である。デザイン思考の特徴は、徹底的に人間(ユーザー)の視点から考える点にある。そのCEOであるFred Durstが提起したのは人々の間の会話のデザインである。ちなみにここでの「テレビ」という訳語を当てた原語は「the boob tube」で、「下らない内容」ということが暗に含まれている表現とのことである。
対話のアート
この文章の脇には、そのFast Companyの記事の写真とコメントが掲載されている。このページはまだ読むことができる(そのページはこちら)。このページでは問題提起のあと、IDEOは「クリエイティブ・テンション」という対話の技法をデザインしたと紹介している。記事の範囲で理解する限り、あるテーマについて、部屋の中で意見の少し異なる人のそばに座り、対話を繰り返しながら共通点を見つけながら、新たな理解を深めていくという手法とのことである。
Fredの提示した「対話をデザインする」という課題にCarlo Spellucciはすぐにレゴ®︎シリアスプレイ®︎がそれについては優れていると反応した。これはレゴ®︎シリアスプレイ®︎の本質が、レゴ・ブロックではなく、「対話のデザイン」であると彼がしっかりと捉えていたから出来ることであろう。
後半の彼の提案は非常に重要である。誰に頼まれてファシリテーターとして認められる場がなくともレゴ®︎シリアスプレイ®︎はいろいろな場に持ち込める。例えば私も時折、家族にブロックで作品を作ってもらい、それを使って話すときがある。そのような眼で周りを見渡せば、LSPを使う場の広がりに気づけるだろう。
ある実験
この文章の脇には、このワークときの実際の様子らしき写真と、ワークの結果についてのコメントも掲載されている。
研修やミーティング以外の場面、例えばここにあるように、友人や家族との間の会話においても(スマートフォンなどで家族同士の対話を忘れてしまっていても)、レゴ®︎シリアスプレイ®︎は効果を発揮する。会話のあるところ、どこにもその活躍の場は埋まっている。
対話を再設計する
constructivismは心理学者のジャン・ピアジェの提唱した用語である。彼の考えを発展させた考え方としてconstructionism(教育学者のシーモア・パパートが提唱した。こちらは「構築主義」と訳されることが多い)という概念がある。構築主義では、使っている材料・道具のほか、周りの人々とのやりとりも学びにとって重要だとみなし、子供だけではなく大人でも同様の学びは起こるとしている。そう考えると、後者の考え方も含んでここでは「構成主義」という言葉が使われているというべきだろう。構成主義(構築主義)はレゴブロックの使用を前提とはしていない。
ただし、さまざまな材料・道具の中でもレゴブロックが、対話を促すために非常に優れたものであるのも間違いではない。このレゴブロックの材料・道具としての価値については以下のリンク先で公開されているワーキング・ペーパーによくまとめられている(英語)。
https://imagilab.org/wp-content/uploads/2021/01/WP20.pdf
最後に、Carlo Spellucciらしい最後のメッセージで記事は締めくくられている。常にそうありたいものだ。