レゴシリアスプレイメソッドにおける創造性について考える(3)『ジグザグに考えよう』:学ぶ
レゴシリアスプレイメソッドにおける創造性はどこにあるのか。
上記の本にある創造性を高めるステップのうち、今回は「学ぶ」のステップである。
ここでいう「学ぶ」は理解を深めておくことだ。理解を深めるとは、より多くの知識とそれらの間のつながりをつくっておくことである。それにより、より幅広い状況に対応することができるようになる。
未知の状況に手持ちの経験と知識で対応することができれば、それは創造性の一つの表れであるともいえる。
その「学ぶ」に関して、本書では主に4つの演習を紹介している。
(1)計画的に練習する
(2)自分の専門分野をマスターする
(3)いつまでも学び続ける
(4)専門領域と基本領域のバランスをとる
計画的に練習する
ここでは、学ぶために活動するときの、目標の設定が大きなポイントとなる。特に、自分にとって挑戦的な課題を立てる、特定の範囲の課題に絞り込む、次の目標のための振り返りをしっかりとすることが大事である。そしてチクセントミハイのいうフロー状態に自分自身を入れるのである。
これに関しては、レゴシリアスプレイメソッドを使って、現状の自分をブロックで整理し、挑戦的な目標設定をさせてもいい。何らかの経験を振り返るために、モデルを作らせることも効果的である。また、モデルを作るプロセスのなかで経験が整理され意味付けられるし、モデルになると客観的に自分のことをみる手助けにもなる。
フローの概念は、レゴシリアスプレイメソッドのファシリテータートレーニングを受けた方ならご存知の通り、ワークショップのプログラム設計の考え方に反映されているが、ワークのテーマとして、自分をフローに入れるための課題設定を考えさせることもできるということである。
自分の専門分野をマスターする
自分の専門分野をマスターするプロセスにおいて、専門研究の中で使われる概念を理解することを意識することは重要である。例えば、数学で言えば、分数を理解するときに、分子分母を扱う手続きを学ぶだけでなく、分数同士を掛けたり、分数を分数で割るとはどういうことか、少数を扱うのとはどう違うのか、ということを説明できるようにするということである。
分野にもよるだろうが、レゴシリアスプレイメソッドを使って、概念を意識し、その本質や問題を考えさせるための一つの方法として、その概念を説明するためのモデルを作らせることがある。例えば「自由」という概念とはどういうものか、それぞれにモデルを作ってもらい、お互いのモデルの説明を比べていくということである。これによって解釈の違いや、ある概念の含む意味の広がりを感じることができるだろう。
一方で、レゴブロックでの表現は定義が厳密にされている専門的概念を表現するには向いていない。したがって、上記の概念を表現させるワークで何らかのすでに確立した専門知識をマスターできるわけではないことに注意すべきである。
いつまでも学び続ける
これは至ってシンプルで、今までの自分が学んでこなかったことについて、意識的に学び続けるということである。
ネット検索をしたり、本屋で詳しくないコーナーにあえて行って入門書を買って読んでみたり、新しく注目されるようになった考え方などを追っていくことは、いつまでも学び続けることに対する習慣である。
実績ある人と組んでメンターになってもらうことで、学びへの刺激を受け続ける環境を作るという方法もある。
レゴシリアスプレイメソッドとの関係については、強いて言えばメソッドを使った対話の場をとにかく持つ(ワークショップに参加する)ということであろう。そこでは、ブロックで作られたモデルを使って話をすることで、より意識的に深い、他者の多くの経験や考えに触れることにつながるということである。ただ、前項でも指摘したように、経験や考え方には触れやすくなるが、厳密に定義された専門知識の場合にはブロックのモデルでは表現しにくいということには注意しておく必要がある。
専門領域と基本領域のバランスをとる
これは学ぶことの対象の領域をより広げようという提案である。ある専門領域をマスターしていけば概念の理解とその対応力を上げることが期待できる。しかし、同時に対応できる領域はその専門に限られているということにもなる。
そこで、他の専門知識との連結をめざすために、自分の知らない領域に触れるということである。
色々な方法があるが本書で推奨していることの一つは、毎日1時間ずつ、1000時間分、他の分野のことを広げるようにして学んでいくということである。そこから、自分の専門領域には無いような考え方に触れて、自分の専門領域の対応力を上げていくという狙いである。
レゴシリアスプレイメソッドで考えるならば、このような他の分野への広がりをつくれるかどうかは、まず、基本的にワークショップ参加者がそれぞれ何らかの専門知識をもっていて、かつその専門領域の多様性があるかどうかによる。その上で、それぞれの参加者がモデルなどを通じて、お互いに自分の専門領域のイメージを伝えるような場を作る感じになるだろうか。
それを一つのきっかけとして、創造性が高まる素地を作れれば素晴らしいことではある。