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『実践アクションリサーチ』をレゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドの文脈で読む(3)第2章 アクションの中で知る p.32~
上記の『実践アクションリサーチ』の第2章は「アクションの中で知る」ことについて解説がなされている。
「アクションの中で知る」とは
「アクションの中で知る」は、以下のようなプロセスの中で進む。
(1)外部から感し・内部での意識から経験する
(2)データを理解する(つながりが見えたとき洞察を得る)
(3)判断する(証拠の有無などから真偽を判断する)
(4)決定する(選択肢の中での優先順位、価値を考え、行動につなぐ)
これらのプロセスの処理の出来を左右するものとして以下の要素がある。
・注意力(データのどこに注目するか)
・知性(データのつながりをどう描くか)
・合理性(つながりの中で最も説得力のあるものをどう選ぶか)
・責任感(ごまかしなどをせず公正に判断する)
良いアクションのために、これらの要素を「アクションの中で知る」サイクル繰り返しの中で高めていく(真正性をもつ)ことが求められる。
「推論のはしご」をのぼってしまうこと
しかし、人間は同時に繰り返しの中で決定を急ぐあまり、これらの要素をないがしろにしてしまうこともしばしばである。つまり、以下のようなことを半ば無自覚に素早く行うのである
・自分の好むデータばかり注目する
・思い込みや慣れ親しんだ発想でデータのつながりを描く
・データのつながりの検証はせず最初から正しいものとする
・自分の都合を優先して判断する
上記のような行動について、著名な組織心理学者のクリス・アージリスは「推論のはしご」をのぼるという説明をしている。
上記の記事を読むと「推論のはしご」についてよくわかる。
「推論のはしご」を安易に駆け上がらないための方策については、本書『実践アクションリサーチ』や上記のNoteを含め、いろいろと挙げられている。そこに共通するのは、自分の言っていることや考えていることを可視化し、一歩引いて眺めるということである。
二人称のスキル
アクションリサーチは、一人で行うものではなく複数人が形成する活動や組織の中で行われるものである。
以下のNoteでも紹介したが、アクションリサーチを行うには、一人称だけでなく二人称、三人称の視点も求められるのであり、中核になるのは二人称の視点である。
「アクションのなかで知る」ことの理解の枠組みから延長すれば、二人称の場合、お互いにどのような思考をしているのかを見せ合い、相手の言動を肯定的に受け入れ合うことが基本となる。
そのような状態へと進むために、組織心理学や組織行動の著名な研究者であるエドガー・シャインは3つの探究のレベルをあげている。
・純粋な探究:そこで何が起こっているのかについてのストーリーを参加者が中立的な態度で引き出す。
・診断的な探究:自分が起こっていることがどのように解釈的、感情的に受け止められているのかを発信し、お互いに理解し合う。
・介入的な探究:お互いに自分の視点を受け入れられるかどうかも含めて、どのような視点で物事を見るべきかについて探り合う。
これはちょうど、「アクションの中で知ること」の4つのプロセスを共同で確認しながら進めるということであるともいえよう。
このとき、置かれている状況、達成すべき目標、皆の主張や感情、可能な選択肢、価値観や倫理などを明確にする(アドボケートする)ことがポイントといえる。それらが明確にされていないと、そこから質問や考えのすり合わせもできなからだ。
レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドとの関係
人々が「推論のはしご」をどうのぼっているのかを明らかにして、二人称の視点でお互いの推論を明確化するために、レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドは非常に有効であると確信している。
自分の解釈を、モデルとストーリーという形で可視化することで自分自身の推論に対して客観的な視点をもてるとともに、他の人のことも良く理解できるようになる。レゴ🄬シリアスプレイ🄬メソッドを使ったセッションは、アクションリサーチの一人称スキルと二人称スキルを同時に強化するといえる。
また、ファシリテーターは、参加者の作る作品とストーリーを受け入れつつも、それは現実ではなくその人の現実の解釈であるということをくれぐれも忘れてはならない。
「推論のはしご」を拙速にのぼっていると感じられた場合には、立ち止まってそう考える根拠や思い込みの結果である可能性を検証する機会を作らねばならない。
このとき、「あなたの作品は妄想の範囲を出ない」などと言っては、信頼関係は簡単に壊れてしまうので、言葉のかけ方が重要である。
「どのようなきっかけで~~だと考えるようになりましたか?」
「他の人のように~~と考えようとすることからあなたを妨害しているものは何ですか?」
「~~という判断をした理由についてもう少し踏み込んで教えてください」
など、本人が推論のはしごを登っていることを自覚させる問いかけを出せるようにしておくことが重要であろう。
また、ファシリテーターには、ワークショップの各問いが、純粋な探究から、診断的な探究、介入的な探究へとスムーズに移行していけるように、参加者同士の発言をリードしていく技術も求められるといえるだろう。