組織進化論とレゴシリアスプレイメソッドとの接点(2)組織のメンバーシップ感覚をめぐって
ハワード・オルドリッチの『組織進化論』を少しずつ読みながら、考えたことを書き下ろしていく。今回の話もまだ第1章の序論部分についてである。
前回は組織を特徴づける「目的志向性」について考えた。
今回は序論で触れられている、組織のもう一つの側面について考えたい。
それは、組織のメンバーシップである。
ここでいうメンバーシップというのは、組織に属する人が誰であり、誰がそうでないかを区別する境界が存在するということである。
組織は、組織のメンバーとそうでない人に対して、活動の報酬内容や責任、情報のアクセスや発信の権利などを変えるような仕組みを用意している。
そうすることによって、組織のメンバーを目的に向かわせようとする。また、組織のメンバーでない人からの影響を小さくしようとする。これによって、組織のメンバーの仕事のしやすさを確保する。
これは組織の管理者が目的の達成のために作り上げる基本的な仕組みの一つであるが、それ以外に、人々が自ら作り出すメンバーシップの感覚というものがある。
これは、自己カテゴリー化理論という社会心理学の分野で特に研究されている心の働きである。
この自己カテゴリー化理論については、改めて別のNoteで詳しく取り上げてみたいが、簡単に説明すれば、人は自分の行動を決めたり、生きている世界を理解するために、自分や他の人をグルーピング化して意味のラベルを貼ることによって、カテゴリー化していくということである。
組織の中でも、その組織が制度を作っていないのに、派閥や仲間集団が生まれるのは、この自己カテゴリー化の役割によると考えられる。
その結果として、組織の中で活動する人々は、組織から与えられた役割の他に、他の人との関わりの経験や得られた情報から、お互いに自分や他者を独自にカテゴリー化する。
これが時間とともに繰り返されていくにつれ、自然と人ごとにメンバーシップの感覚がバラバラになっていくのである。メンバーシップの感覚というのは目に見えず、行動に微妙に反映されることになる。場合によっては、人々から協調のエネルギーを徐々に失わさせ、目的の達成から遠ざかることになる。
このズレは、メンバーシップ規範の強制などによって、一定程度抑えることはできるだろうが、その発生を根本的に無くすことはできない。
そこで、重要なことは、そのズレをお互いに認識し、必要に応じて修正する場をつくることである。メンバーシップ感覚というのは目に見えないので、可視化することが第一歩となる。
そこでレゴ・シリアスプレイ・メソッドはそのための手伝いができる。お互いに、自分の周りがどう見えているか、モデルを作って可視化し、その認識をお互いにどう調整すれば、より目的達成に向けて力を出せるかについて、話し合うことができる。