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この気持ち、ママに何とかしてほしい

架空事例)
Aくんは小学4年生の男の子、ASDの診断があります。
私の療育の生徒さんです。ある日の終了間際、Aくんが爆弾発言をしました。

Aくん:「昨日、お母さんが『もう家から出て行って』て言った」
Aくん母:「(驚)言ってないよ!」

お母さまの説明では、
①Aくんは学校で嫌なことがあったらしく、帰宅後に同じクラスの子の悪口を言っていた。
②「あいつ気持ち悪い!」などと30分にわたって繰り返し言うので、お母さまの忍耐に限界がきた。
③Aくんに「もうこの話おしまい。自分の部屋で一人で怒るか、黙るかどっちかにして」と伝えた

ということでした。

A母(→私に対し)「出て行けなんて本当に言ってないんです。Aは記憶力に問題があるんでしょうか」。


Aくんによると
「ショックだった」「嫌な気持ちを聞いてほしかったのに、お母さんに出て行けと言われた」。

2人の間で認識の違いが起きています。

Aくん視点:まだ気持ちは落ち着いてない。まだまだ言いたかったのに拒否された。ボクなんていらないんだ

お母さま視点:十分聞いた。もうこれ以上は無理。あとはA自身が何とかするしかない

Aくんには、聞き続けるお母さまのしんどさが伝わっていません。また「自分(A)の怒りや不快感をゼロにしてほしい」と思っているようです。

お母さまは、「何があったかはわかった、嫌だったね、でももうこの話終わり」とAくんに言ったので、伝わっていると思っています。

私から提案するとしたら。
お母さまに:
話を聞いて受け止めたことを返してあげる。「こういうことが嫌だったんだね」「それは腹が立つね」

収まりそうもないなら「あと5分したらお母さんはご飯作るからね、この話おしまいにするよ」と予告

お水でも飲む?など感覚刺激で気がそれるように導く。

「5分経ったよ。あとはどうする、動画でも観る?」と提案


Aくんには:

私『Aくんの話、お母さんは全然聞いてくれなかったの?』(以下『 』内は私の発言)
「ううん、初めは聞いてくれた」
『途中から聞いてくれなくなったんやね?』「うん」『そっか。Aくんはどんな話してたの?』「〇〇が気持ち悪い、消えろって」『すごく怒ってたんやね』「うん」
『…あのね、怒ってる人の言葉って、長いこと聞いてると、聞いてる人も疲れてくるねん』(ここで表情の絵を描く)「…」『お母さんもきっと疲れてたんやと思う。Aくんがいらない子だからと違うで。話を聞くのに疲れて、それで話をやめたくなったんや』

『それとな…Aくん、嫌な気持ちをお母さんに全部消してもらいたいと思ってる?それは難しいねん』『嫌な気持ちはなかなか消えてくれなくてしんどいやろ?先生も一緒でな、よくお風呂で一人の時に怒ってる』『嫌なことがあった時、誰かに話を聞いてもらったら少しマシになるやろ。でもゼロにはならないから、残りは自分で引き受けるねん。そうしないとお母さんがクタクタになる。お母さんをしんどくさせたい?』「させたくない」
『そうかー、お母さんの気持ちを考えられるのは素晴らしいわ。じゃ自分で気持ちを下げていく方法は、先生と一緒に考えよう』

こんな感じでやっています。



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