No.0|『持続不可能な社会をどう生きるか』を書いたワケ
Prologue
1972年にローマクラブが『成長の限界』を発表しました。「地球の資源は有限であり、経済は無限に成長することはできない」、そう発表された50年経った後も、私達、特に日本人の意識は恐ろしいほどに楽観的で、関心を持とうとしません。
現在生態系はすさまじい速度で破壊されています。気候変動——最近は気候危機と呼ばれますが、将来の危機は過少化され、事なかれ主義のモラルハザードが起こっています。私達は生態系があってこそ生きられているにも関わらず、それを失う寸前までその価値に気づかないのかもしれません。
歴史を紐解くと、土地の酷使によって文明が滅んだ例がたくさん挙げられます。ある時ある場所で、持続不可能な形で土地を利用したために、毎年1%ずつ土地がやせ細りました。しかし1%はあまりに小さく、誰も気づくことができません。何十年と経った後、土地が再生不可能な形に変わり果ててしまいました。あまりにゆっくり進むことに対して、人はその危機を認知することがとても苦手です。
このマガジンは、未来を担う高校生や大学生を想定の読者としました。気候危機が何をもたらすのか、持続不可能な形で積み重なる国債の何が問題なのか、競争の先に何が待っているのか、それらを正しく理解しなければ、今どういう状況であって、何をすべきかを正しく判断できないと考えたからです。
No.1~No.4では、臆病であることの大切さ、学ぶべきことの重要性、認知バイアスの恐さを記載しました。物事はとても複雑で、学ぶことでしか課題を正しく認識できず、解決策を見出せないと考えたからです。
No.5では、競争が生み出す暴走・衰弱のメカニズムを紹介しています。私達はついつい利己的に行動しがちです。けれど、みんなが利己的に動けば、秩序は簡単に壊れてしまうことが分かっています。また"合理的に判断するからこそ間違ってしまうことがある"ことを紹介しています。
No.6では気候変動について、現在分かっている情報をコンパクトにまとめました。温暖化の影響はただ暑くなるだけではありません。とても恐ろしく、しかも時間制限があることを伝えたかったからです。
No.7~No.8では、日本の財政問題を扱いました。無尽蔵な国債の積み重ねの先にある深刻な状況と、国債に安易に頼ってしまうメカニズムを記載しています。多くの経済学者は、あまりに観測できることに頼り過ぎ、それゆえに認識を間違えていると考えています。
No.9~No.10は、資本主義が内在する欠陥を紹介しました。経済は成長すべき、生産性は高いほど良い、という常識が一体何を引き起こしてきたのか、俯瞰的に見なければ分からない部分があるからです。私達はルールを知らないからこそ、搾取の構造に気づきません。競争に飲み込まれ、リストラの恐怖と戦わざるを得ない状況に置かれています。
No.11~No.12は、現状のシステムを踏まえて、どうすれば持続不可能な社会を持続可能な形に変えられるのか、について紹介しました。これはいささか空想的かもしれませんが、現状の課題に悩む人にとって、一つの指針になるのではと考えたからです。
新聞やテレビを見ても情報は断片的にしか手に入らず、俯瞰的な視点に立って書き表された書物も見つからなかったことが、本マガジンを執筆し、無料公開するきっかけになりました。無料であるのは、少しでも多くの人、特に若い人達にハードルなく読んでいただきたかったからです。
けれど、全てが無料であるべきだ、という風潮にも危機感を感じています。努力をしたけれど報われない、誰かの犠牲に成り立つシステムは長続きせず、きっとどこかで行き詰まっていまうからです。
ただ、このマガジンを通して、多くの人々が学ぶことに積極的になり、これらの問題に正しく立ち向かっていただけたらという希望にかけてみました。予測される未来は暗いかもしれませんが、未来は私達で創らなければなりません。
未来について、笑って話せる時が来ることを祈って! 2020.12.21
目次
●No.1|「社会や将来に不安を感じるということが正常な感覚である」ということ(Link)約2,100字
●No.2|なぜ学び続けるべきなのか~その本質的な理由 - 前編(Link)約2,300字
●No.3|なぜ学び続けるべきなのか~その本質的な理由 - 後編(Link)約1,700字
●No.4|No.4|なぜ環境破壊に対する感じ方がこれほど冷淡になったのか?(Link)約1,800字
●No.5|私たちはどうして行き過ぎてしまうのか?(暴走・衰弱のメカニズム)(Link)約3,500字
●No.6|気候変動は何を招くのか?(Link)約2,900字
●No.7|国債という名の病 - 前編(Link)約3,200字
●No.8|国債という名の病 - 後編(Link)約3,800字
●No.9|資本主義という願望機の欠陥 - 前編(Link)約3,100字
●No.10|資本主義という願望機の欠陥 - 後編(Link)約2,300字
●No.11|ポスト資本主義はどうあるべきか?(Link)約6,400字
●No.12|物質的な豊かさを乗り越えて(Link)約2,400字
その他
noteの執筆も単発モノを随時更新しようと考えております。またtwitterも始めました。こちらもよろしくお願いいたします🐇 ただ、現在方向性が定まらず試行錯誤中です。
アイコン:北極うさぎちゃん
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note:kiki(持続不可能な社会への警鐘者)