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妊娠高血圧腎症で早産した話②出産決定、2時間後に緊急帝王切開手術
前回の続きです
Day 0(29w5d):診断を受けて2時間後に手術・出産
前日同様に、採血、血圧、レントゲン、、、と一通り検査をしていく。エコーで赤ちゃんの元気な様子も確認でき、母子ともに緊急な状況ではないということで今日も出産は無さそうだと医師から説明を受ける。その後、NST(ノンストレステスト)で胎動を確認していたところ、反応が弱く、しばらく継続して確認を続けることになった。一時間近く胎動を確認したが弱々ししく、再度エコーをすることに。女医さんがお腹を強めに押して「起きろー!」とゆすっていたが、反応は弱く、経過観察となった。病室に戻り、再度お腹にバンドを巻き付けて、NSTで胎動の確認。ベッドでNSTをしながら安静にしていると、あわただしく医師と看護師が部屋に入ってきた。子宮が収縮した際に赤ちゃんが反応するのが通常だが、収縮時の反応が弱く、これが決定打となり、出産が決定した。
その場で、準備でき次第手術しますと言われ、一気に慌しくなった。呆然としてしまった。着々と準備を進める医師や助産師に対して、思わず、「私はまだ帝王切開するとは同意していないですよ!」と主張。もちろん医師の判断に抵抗する意味はないのだが、他に方法はないのか?なぜ今なのか?自分を納得させることができなかった。この数日間担当してくださった医師からあらためて説明を受け、今日このタイミングで出産することが母体にとっても赤ちゃんにとってもベストだということで、しぶしぶ同意書へサイン。
そこからは本当にあっという間で、診断を受けた二時間後には手術が始まった。夫が来てくれ、医師からあらためて説明を聞き、手術室に運ばれる私を見送ってくれた。下半身麻酔のため、意識がある状態で手術が開始した。
手術室には20名もの人がいて、こんなにたくさんの人に全裸を見られるのは恥ずかしいという思いと、こんなに人がいてやることあるのかな?人件費大丈夫?と思ったり、これだけ緊急事態ということ?!と驚いたり、一方で、この人たちで本当に大丈夫なのか、赤ちゃんは助かるのか、どれくらい痛いのか、お腹を切られる恐怖、いろんな気持ちが入り混じっていた。
手術室では、助産師さんが真横で手を握ってくださり、ずっと声をかけてくださった。とても明るいベテランの看護師さんで、事前にお願いしていたからなのか、麻酔科の先生3名のうち一人が逐一今どういう状況した説明してくださって、手術の様子は見えないもののなんとなくどういう状況分かるようにしてくださった。手術は終始明るい雰囲気の中で行われた。
いよいよ赤ちゃんが出てくるときに、運動部の部活ではないかと思うような異様な声援の中で執刀医の先生が赤ちゃんを取り出した。これがとても印象的だった。応援されているのは私でも赤ちゃんでもなく、執刀医の先生だったのだが、
赤ちゃんの泣き声が遠くから聞こえてきた。
生きてる…。
本人の意思と関係なく、こんなに早く生まれてきてしまったのに。ちゃんと声を出して普通の赤ちゃんと同じように泣いている。もはや現実かどうかもよくわからない状態だったが、ちゃんと聞こえてきた。それから、先生がわが子の顔を見せてくれた。もうあんまり覚えていないけれど、かわいい、とは思わなかった。小さくて猿みたいで。申し訳ない気持ちと無事に生まれた安堵と感動と入り混じっていた。小児科の先生が、これからNICUに連れていきますと声をかけてくれた。私のお腹はというと、早速縫い合わせるのが始まった。痛くはないがなんとなく感覚はあるので気持ち悪さを感じていた。
先ほどの麻酔科の先生が、「幸帽児」の状態で産まれたよ。と枕もとで教えてくれた。なんでも、子宮内の卵膜を破らず、膜に完全に包まれた状態でお腹から取り出す方法のことを言うらしい。早産の手術では、出産のタイミングも感染等のリスクがあるため、なるべく卵膜に包まれた状態で出すのが望ましいそう。幸帽児は日本でも海外でも幸せの象徴と言われるのだとか。そんなことを聞きながら、20名ほどの医師や看護師に見守られて、祝福されて、ホッとして徐々に意識が遠のいていった。
(つづく)