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かくいう私も
ボカコレ2025冬TOP100
「マルシュ・マカブル」
雨草樹季 feat. 歌愛ユキ, v flower
公開しました。
今回の曲は、グンタイアリをモチーフに「音楽家としての死」を寓話的に描いた作品です。
グンタイアリは、熱帯雨林に生息し、群れの結束力と獰猛性の高さで有名です。
その結束力は本当にすごいもので、進むのが難しい時は抱き合うことで橋を作り、渡って進むんだと。
ほぼ視力がないため、仲間のフェロモンの跡を辿って集団行動するんだと。
そのため時々、みんながみんな仲間の跡を追いかけてぐるぐる円を描くように歩き続ける「アントミル」という渦が形成されます。
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これ!!(本物は耐性ある方だけ調べてみてね…)
通常は時間が経つとフェロモンが薄れてアントミルは解散されるらしいが、中には死ぬまで回り続けたなんて逸話もあり。
そのためアントミルには、「デススパイラル」とか「死の行進」なんて呼び名があります。
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さて、蟻の話は置いといて。
いつも曲から作るんですが、曲調は「ドリームコア」をテーマに作りました。
ドリームコアとは「夢で見たような、ちょっと不気味だけど覗きたくなる世界」みたいな世界観。
TikTokでは、古い遊園地のような画像に、ぼわぼわっとリバーブの効いたレトロな曲を合わせた動画が流行っています。
それも冒頭に取り入れまして、
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グンタイアリの「盲目」「渦巻」「死の行進」という性質。
ドリームコアの「夢に見たような景色」「流行している」という特徴。
これらをキーワードに
盲目的に夢を追ううちに承認欲求に飲み込まれ、本来表現したかったものを見失い、バズりたいというだけで安易に流行だけを追いかけ回し始める。
一度そこに嵌ってしまえば、まるでグンタイアリの死の行進のように抜け出すことはできない。
己の音楽の指針を失った先にあるのは、音楽家としての死である。
という皮肉と、
自分の音楽のタクトは自分で握りなさい。
他人(流行)に指揮を委ねるのではなく。
というメッセージを込めた作品になりました。
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曲のメッセージ性をより高めるため、今回MV演出は今まで以上にこだわりました。
1サビ直前の歌愛ユキの問いかけをより強調するため、スマホであれば画面に聴き手の顔が映り込むであろうことを想定して、完全に画面が真っ暗になる演出をしてみたり。
作中何度も出てくるアントミルの渦だけでなく、作品全体も完全にループするようになっていたり。
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私の曲は情報量がかなり多い。
それでも歌詞も聴いてもらいたい。
そのために歌詞を体現する映像になるよう、細部まで作り込みました。
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なんでこんな曲を作ったかというと、これ作ってた時、ちょっと音楽でもやつくことが続いていたのです。
スランプだった時期。
いただくあたたかい感想コメントの数々。
その中に、表面上褒めてるような言葉だけれど、これは「自分の方が上だ」と暗に主張しているように感じるコメントが1つ2つ。
馬鹿にしやがって、見下しやがって。
そう怒りを感じながら書いた曲なんですね。
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でも、そう感じる時って、たいてい相手も自分も自信ないんですよね。
自信がないから「自分の方が!」と相手を見下すことで自分を保とうとする。
そしてそう思われていると被害的に感じた私も、やっぱり自分に自信がないから、相手に対して「自分の方が!」「なのに見下しやがって」と見下すことで自分を保とうとする。
スランプで焦ってるものだから。
負のスパイラルだ。
満たされず肥大した承認欲求によって、見下し合いのアントミルが形成される。
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承認欲求が悪いとは思っていない。
頑張ったものを認められたいのは当然の気持ち。
ただ、承認欲求自体が目的になってしまったり、承認欲求が人への攻撃性になってしまったりは良くない。
分かっていてもどうしても醜い感情が生まれてしまうことへの戒めとして、この曲の物語は「かくいう私も、音楽家としての死に向かって行進しているのだ」という方向に進んでいきます。
その物語を強調するため、ドリームコアやポエトリー等の流行りを取り入れてみたのでした。
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ボカコレ2024夏用として作っていた曲だったので、暑い熱帯雨林に生息するグンタイアリが主役だったんですよね。
でも中止になっちゃって。
ぼかえりで出すにはね、タイトルの直訳が「死の行進曲」だなんてそんな曲はね、出せませんよ。
ちょうどあの頃災害予報も出ていたし。
色々考えて夏に出すのは我慢して、代わりにマカブルの野生っぽさを若干受け継いだ「青嵐のレガリア」と言う曲を急ピッチで作って出し、我慢して我慢して、ようやく満を持してボカコレ2025冬にて公開することができました。
自作曲の中で誰よりも醜く、誰よりも弱く、誰よりも人間らしい子。
あの夏を超えてやっと公開できたことが、今はただただ嬉しいです!
よかったら是非是非何度でも聴いてみてください。
MVループしてるから笑