新人(中途含む)に電話対応を任せるという愚行
社会の先輩諸兄の方々から撃ち殺されそうなタイトルです。
待て、話せばわかる。待ってくださいお願いします。
かくいう私はそこそこ社会経験を積んだ30も半ばにいこうかというオッチャンの仲間入りした野郎です。IT系の技術職から独立して、営業経験も多く、スポットで新人のコーチング等もやりました。成績も伸ばせたようで、いわゆる新人の機微みたいなものには一家言あろうと思います。
ネットオタク黎明期世代の私は趣味にサーフィンですと書けるぐらいにはネットの海をガンガン泳ぐんですが、最近やたら目につくんですよ、「新人が会社で電話をぜんぜん取らない理由」と銘打ってさも本質記事(笑)みたいなキャッチコピーの記事が。
人事の海千山千を経験したなにがし雄山よろしく知った風に言う訳です。
「コミュニケーションの有り様が変わり~」だの
「パワハラの無い環境で甘えが~」だの
大概は新人側の変化だから仕方ない的なニュアンスで、「べつに頑張ってる皆さんは悪くないんですよ、彼らはそういう育ち方だからしょうがないんです、合わせてあげてください」みたいな慰め記事になってる記事の多いこと多いこと。
浅はかな事です。浅すぎてアサリでも投げつけてやろうかという勢いです。
私は、入りたての新人で積極的に電話を取る人のやる気は買いますが、行動は窘めます。
むしろ新人の席には子機を置いて、先輩が取れない位置に居た際に、コールしたら子機を持って手渡してほしいと教える事を推奨します。
そうしろという訳ではありませんが、その理由について少し書いてみます。
そもそも、電話を取らせる根拠が弱い
以下のような理由をどこかで見聞きしたことはないでしょうか。
1・「新人にできる仕事なんて電話取るぐらいなんだから、それぐらいやれ」
2・「上司や他の社員は電話してる暇があったらもっと沢山稼げる仕事をしなきゃいけない」
3・「仕事も名前も覚えれてないうちは、電話を取り次いでいるうちに、部署ごとの名前や関係性、取引先との繋がりも分かるようになる」
4・「新人のうちは電話応対で少々まごついても、例えば春先なんて相手先も新人が出るの分かってるから多めに見てくれる。だからチャンス」
5・「てか電話ぐらい出ろよ、仕事ナメてんのか」
私はフリーランサーとして、様々な現場を経験していますし、それ以外にも派遣として会社に入って様々な電話応対が必要だった経験もあります。
一人社長な訳ですから、普段から電話だろうが直接の営業だろうがガンガンやります。場数は同い年のそこらのあんちゃん達より余程踏んでます。修羅場も含めて。
その上で言わせて頂きますと、こういう根拠を胸の内に1ミリでも秘めて新人と接してる人は、仕事をナメてんのかと考えています。
1個ずつ見ていきましょう。
1・「新人にできる仕事なんて電話取るぐらいなんだから、それぐらいやれ」
もしこんな事いう社員居たら即刻クビにするか、倉庫番でもやらせといてください。
電話は会社の窓口、顔、新規顧客で言えば第1印象が決まる超大事なファーストコンタクト、既存顧客で言えばそのやり取りで信用が一瞬で吹き飛ぶ場です。
更に言えば、表情や支線、身体の動きが分からないうえ、周波数が一定数カットオフされて更に感情や機微が読みづらい相手方の声を聞いて、応対する必要がある場であり、そして相手に好印象を与えながら受け答えをする事により仕事が獲得できるチャンスの場です。
営業の方は、何故電話を最初から取らないのでしょうか。取次ぐらい相手も待ってくれる(悪い印象は抱かない)とでも思っていますか?
甘すぎます。創業当初の100円ショップのクオリティぐらい甘い考えです。
新人の訳分らん取次で全く別の話だと勘違いした営業が取ったやり取りで、偶々似たような別の案件の話と噛み合ってアンジャッシュしたまま、結果的に先方に迷惑、というか損害を出し、営業はそれでブチギレて新人を恫喝、パワハラで訴えられた。営業は懲戒処分、新人はそれが嫌になりさっさと辞職、誰も幸せにならないクソのような結末です。
でも普通に起こります。
そもそも、専門の電話オペレーターもない部署に電話が直接かかってくる規模の会社なんて、話の分かる奴がさっさと取れば良いんです。何カッコつけてんですか?それとも新人イジメたいだけですか?って話です。
新人はそのように感じます。最近では取引先からもそういう会社なのかな、と思われます。
それでも電話、取らせますか?
2・「上司や他の社員は電話してる暇があったらもっと沢山稼げる仕事をしなきゃいけない」
もしこんな事いう社員居たら即刻クビにするか、倉庫以下略
上述の通りですがそもそも会社にかかってくる電話というのは売り込み営業を除けば、受注案件か、取引先との難しい確認の問い合わせとか、或いはクレームな訳です。あとは売り込みの電話。
よく考えて下さい。どれもこれも営業が捌く内容且つ、やり方次第で良くも悪くもなる大事なイベントです。会社から電話が無くならない理由でしょう。
何ならクレームや緊急の問い合わせは、相手も慌てています。例えば1分1秒が惜しい時にまごつく新人が初手で来たら、分かってはいてもイラつきますし、その時担当者がトイレ言ってて、「生憎と席を外しておりまして、折り返しお電話でも宜しいですか?」なんてマニュアル朗読野郎は要りません、保留にしてダッシュで確認に走れば良いのです。例え出れなくても、息を切らせながら電話戻って来た人にイライラぶつける奴は、居るかもしれませんがナンボか減る。小さな差ですが、神は細部に宿るものです。
新人にそこ、全幅の信頼おいて任せますか?
3・「仕事も名前も覚えれてないうちは、電話を取り次いでいるうちに、部署ごとの名前や関係性、取引先との繋がりも分かるようになる」
分かるわきゃねーだろバカチンが。
失礼言葉が過ぎました。
仕事サボるな先輩社員この薄らトンカチというべきでした。
電話越しに分かる情報なんてそもそも少ないのです。先の通り勘違いだって多いぐらいです。
営業活動上有益たるパーソナル情報をわざわざ取引先が開陳する訳も無く、何ならそういった情報は営業していた自社担当者が最も握ってなければならないものです。
電話口で応対ミスらんように全集中してる間に、そんなリサーチかける余裕ある新人は居ません。素直に先輩が余裕持って教えてあげるモノです。
教育とはそういう事です。
4・「新人のうちは電話応対で少々まごついても、例えば春先なんて相手先も新人が出るの分かってるから多めに見てくれる。だからチャンス」
客を練習台にするな。
そりゃあ相手も大人ですから大目に見てくれますよ。でもそういう所に甘えてくる会社なんだなって思われる事は覚悟して下さい。
新人にとってのチャンスもあるかもしれませんが、社としてのチャンスは明確に減っています。
5・「てか電話ぐらい出ろよ、仕事ナメてんのか」
最後になりますが、電話に出ない新人を私は評価すると言いました。
何故ならそれは、単純に怖いと感じる人も居るのでしょうが、それは心のどこかに上述のようなリスクをイメージできる慎重さや謙虚さを持ち合わせているからです。それを明言して断る胆力が無いとか、言語表現力が無いとか、それこそ新人だから許されるべき不足している能力です。
「それを私は分かっている。だから君が電話を取って会社のチャンスを増やしてくれる実力がつくまで電話に出ず、先輩の電話対応をしっかり見せてもらって、内容についても後でしっかり教えてもらうような勉強をしていって欲しい。」と伝える訳です。
営業に適性のある子ならそこから勉強してもらえばいいし、内向的で別の仕事に適性がある方は、別の仕事に集中できる環境へ割り当てればよいわけです。
少なくとも諸所のデメリットを差し置いて、「この会社は新人を顎で使わないし、こちらの不安を汲んでくれる」という気持ちは芽生える訳です。
何なら芽生えた奴はハッキリとやる気が出ます。良くしてあげれば会社の忠誠心が高い奴です、囲ってしっかり育てましょう。
やる気が上がってない子は既に何らかの不満があったりします。早急に腹を割った面談をするなりして、配置換え或いは気楽に転職への誘導を行ってもよいです。「合わないならまだ重要案件を任せてない今のほうがお互い気が楽だから言ってね」って事です。
つまり何が言いたいかといえば、新人に電話番させる事を是とする連中は、仕事をナメてるって事です。
なんでそういう記事増えないんだろう。バグかな。