いつか、この感情は伏線回収できるときが来る
都心では8月すべての日が真夏日と例年以上に暑い夏だった。そんな中、心も「熱い」日々を送ってきた人たちがいる。
それは、コピーライター・阿部広太郎さんが主催する連続講座『企画でメシを食っていく2023(通称:企画メシ)』に参加する企画生たちだ。
『自分の物語をつくるための連続講座』というテーマに惹かれて集った彼らは、この夏『チームの企画』に向き合った。
それは短いながらも濃い日々だったのではないだろうか。
今回、8月19日に開催された講義の様子を『言葉の企画2019』企画生、ユイ タムラがお届けしたい。
今年の『チームの企画』のお題はこちら。
チームは事前に構成された12チーム。
出会って3ヶ月、仕事も年齢も異なるメンバーが3週間という短い期間を経て企画を提出した。『言葉の企画2019』に参加したときは『チームの企画』はなかったので、もし自分が企画生として参加したらどんな風に関わっていったのだろうと考える。
当時の自分を考えると「関わりたい!」と心の底では思いながらも、チームの様子を伺ってしまうような気がした。
その企画は自分の心を通過していますか?
企画書は誰のために作るのだろうか。
それは企画書を届ける相手のため?仕事であれば、クライアント、企画メシで言えば、ゲスト講師のことを指すのではないだろうか。
そんな中、阿部さんは「自分のために企画書を作っている」という。
企画メシのゲスト回では、企画生が課題を出すかたわ阿部さんも提出をしている。講義中にゲストがよかった課題を講評するのだが、阿部さんが出した課題もスルーされてしまうこともあるそうだ。
それでもへこたれないでいられるのは、「スルーもフィードバック」という阿部さん自身の考えと「自分自身の企画を納得感を持って提出している」からだという。これは個人で提出する企画に限らず、チームの企画でも同様のことが言えるのではないだろうか。
初回にこそ120%
「ラストスパートってみんな頑張りますよね。」
この言葉にハッとさせられた。
「僕の中では、 初回は軽く挨拶じゃなくて初回にこそ120%。お互いに準備した上で聞き合うことが、いいチームを作っていくと思っています。」
最初に自分の120%を出す。 それ以降はチームとして企画を共に作る気持ちを持つ。その大きな方向性を握ることができたら、もっといい言葉はないだろうか、もっといいデザインがないだろうか、もっといいやり方がないかと考えていく。最後まで粘り続ける。
この話で印象的だったのは阿部さんのスケジュール感覚。
もし企画書を作るなら、初日に方向性を固める→中間時点でほぼ完成→残りの時間は企画を推敲作業に当てるという話だった。自分が最初に想像していた「粘り続ける」に対する甘さを感じさせられた。
負担だけど充実感があるチームがいいチーム
「いいチームって本当に不思議なんですけど、1人1人のやるべきタスクがあるじゃないですか。それは負担なんだけど、やっていると充実感がある。そういう関係性を作れていたら、それはもうすごくいいチームだなと思います。」
講義前に何チームか見学をした中で、とあるチームを思い出した。集まったメンバーは企画初心者だというが、打ち合わせが進めば進むほど、ワクワクしながら企画を考えていることが伝わってきた。
このチームのリーダーに講義後、企画をする際に意識していたことについてインタビューをした。
このお話を伺ったとき、自分たちがどういうメンバーかと正直に話したことで共通認識を持ち、お互いの意見を聞きあっていたからいい雰囲気のチームだったのかもしれないと思った。まさしく阿部さんが話していた「組む」を体現したチームだったと思う。
共感される企画書は心の的を打つ
提出された12個の企画書は、企画生に向けた、この「企画メシ」という場を盛り上げる企画が多い印象があった。阿部さんが選んだ企画も、企画生に関わる企画に対してのコメントが多い。参加したからには繋がりたいと考えている企画生が多いのだろう。
その雰囲気を感じながら、私が上司に言われた言葉を思い出す。
今回でいえば企画書をみる人は阿部さんや企画生。彼らにとって「企画メシ」は最もインパクトがあり共感に繋がった。
共感が多かった企画でいうと、今でも忘れられない企画が私にもある。それは『言葉の企画2019』を受講していた時に出会った『ことばの日』の企画だ。
この企画は当時企画生の中でも優秀作に選ばれた企画で、多くの企画生が賛同し、プロジェクトになった。そして言葉の企画が終わる日に『ことばの日』が生まれた。
『ことばの日』は記念日だから毎年訪れる。当時の課題だった「講義内でできる一生忘れられない経験」を体現した課題だった。
仲間を必要とするから企画書がいる
講義中、阿部さんは全チームに丁寧にフィードバックをしていった。
その様子を見て印象的だったのは「読む人を常に意識すること」。阿部さんのコメントをいくつかピックアップしたい。
「自分の脳内で関係することだったら、企画書を別に作る必要がなくて、自分が思ったことをやればいいわけですから。」
この言葉を聞いたとき、阿部さんの企画書について「関係を作り出す小さな魔法」と言っていたことを思い出す。(阿部さんの著書:『あの日、選ばれなかった君へ』(ダイヤモンド社)より)
企画書はもちろん自分のために作っていい。
だけど、届ける相手の目線を考えなければ、はじまらない。
企画書は終わりではなく、はじまりだ。
チームの企画は伏線回収できる
今回、提出をした企画は、実行するチームもあれば保留にするチームもある。大事なことは、やるもやらないも、自分自身が、チームのみんながその判断に納得していることだ。
もしそれができなかったとしても、別の機会で昇華できるときも来るかもしれないと、私は思う。つまり、今回のチームの企画で感じた感情はいつかのタイミングで伏線回収ができるかも知れない、ということだ。
なぜそんなことを思ったのかというと、
自分の周りにもそんな人たちがいるからだ。
今回の講義を聞きながら、言葉の企画に参加していた2人の卒業生を思い出した。講義が終わった後に、個別に連絡をとってみた。
1人は、人を巻き込むことが上手い『言葉の企画2019』同期。
巻き込むときに意識していることを伺った。
もう1人は、いろんな企画生から声をかけられたり、コラボをしている『言葉の企画2020』企画生へ。
企画するときや誘ってもらうために意識していることを伺った。
この2人は受講期間中だけではなく、卒業した今でも卒業生や企画生とコラボしては企画をし続けている。
伏線回収できるタイミングは受講期間中も、企画メシ卒業後もできる。実をいうと、私も卒業してからのほうが『言葉の企画2019』同期と関わっている。当時受講していた気づきが今になって腑に落ちていることだってある。
だから、今回感じた感情を、大事にとっておいてほしい。
今までも、これからも。
今回の講義を経たあなたはチームの企画を続けることも、新しいチームを作ることもできるはず。
そんなあなたのこれからを私は応援している。
執筆:ユイ タムラ(言葉の企画2019)
編集:きゃわの、阿部広太郎