芸人の個性を見極め、組み合わせる相手を決める。スラッシュパイル・片山勝三の芸人との向き合い方。
企画でメシを食っていく2019。今回のテーマは「お笑いの企画」。
ゲストには、スラッシュパイル代表の片山勝三さんをお迎えしました。
<<片山勝三さんプロフィール>>
1974年生まれ。神戸市出身。吉本興業で今田耕司・極楽とんぼ・南海キャンディーズ・キングコングのマネージャーを担当。その後、舞台、ライブ、その他興行の主催・企画・製作 番組制作・キャスティング・進行管理等 各種コーディネート クリエイター・芸能人の育成及びマネジメントを行う「株式会社スラッシュパイル」を設立し、たくさんのお笑いの企画を行なっている。
大切なこと、それは嘘をつかないこと
片山さんとお話できることがとても楽しみだったと語る、モデレーターの阿部広太郎さん。
吉本興業時代のマネージャーの仕事について聞いていきます。
今田耕司さん担当時代の話をしてくださいました。
「いきなり、ずっとテレビで見ていた今田さんの担当になったんです。『ダウンタウンのごっつええ感じ』がちょうど終わった頃で、まだまだ活躍してやろうと意気込んでいる今田さん(当時:32〜33才)はゴリついていて、怖さもあり、当初、必要最低限の話しかできなかったですね」
ほどなくして、今田さんから仕事について意見を求められることも増えてきたそうです。
片山さんが芸人さんと向き合う時に大切にしていたこと、それは「嘘をつかないこと」。
いい顔をしてしまい、あることないことを言ってしまうと当然ながら信用を失います。そうすると、段々意見も求められなくなってしまう。臆せずに思ったことをちゃんと伝える。人と向き合い続けてきている片山さんの言葉は、企画生の心に響きます。
収録の場以外でもずっと喋っている明石家さんまさん、一方で楽屋では物静かな今田さん。本番に向けてのコンディションの持って行き方は人それぞれ違い、一人ひとりに合わせたアプローチの仕方を考えていたそうです。
ただ人に紹介しない、輝き方を伝える
その後、片山さんは「南海キャンディーズ」の面白さに惹かれ、自ら手を挙げて担当することになります。
片山さんの目から見た南海キャンディーズは、スタイリッシュなコンビ。山里亮太さんのツッコミには、テレビにあうテンポ間があり、きっとテレビに出れば売ていくと当時から確信を持っていたそうです。
山里さん本人が強いキャラクターを持っているので、向いているのは他者のキャラクターを演じるコントではないのではないか。それよりも「名司会者」という見え方の方がハマるなと思い、どういう風にすればそこまで辿り着けるのかを隣で考えていたそうです。
マネージャーである片山さんは、テレビ局に売り込みに行った時、ただ芸人を紹介をすることをしません。
こういう時にこの芸人はこう輝くと、輝き方の取扱説明書を添えるように伝え続けて、仕事のきっかけをつくっていたそうです。
「その人を冷静に見れる位置にいて、客観的な意見を言えるのがマネージャーなんです」
片山さんが話を続けます。
ライブ後に本人が「よっしゃ」という感じだとしても、うまくできてないと思う時は「そんなでもないで」と伝える。余計なことは言わないにしつつ、言った方がいいと思う時は遠慮なく愛を持って伝える。
講義中でも言葉を選びながら精一杯伝えてくださる片山さんの姿から、その思いは伝わってきました。
スラッシュパイルの企画の作り方
スラッシュパイルが企画するライブ、寄席は、そのどれもが気になるものばかり。
たとえば、キングコングの西野さんの「西野と西野を嫌いな5人の男たち」という企画。
SNSで西野さんが叩かれていた時期もありましたが、どうせするなら表でやろうということで、表立って愛を持って、舞台上でクレームをぶつけるという企画を提案したところ大好評。
その後、結果的に、テレビ東京のプロデューサー・佐久間宣行さんから「ゴッドタン【マジギライ1/5】」に呼ばれたり、テレビ朝日のプロデューサー・加地倫三さんから「アメトーク」に呼ばれたり、いろいろな出会いを作れることができることを感じたそうです。
片山さんの企画する興行では、芸人さんが輝いている。それゆえに、その後、テレビでも取扱説明書になっているのかもしれません。
そんな数々の企画はどのように作っているのでしょうか?
ずばり興行の企画は、日常の会話の中など、「笑ってしまった瞬間」や「笑いになった瞬間」を、意識をして思い出して、そこから起点に考えているそうです。
もしくは人の組み合わせを起点に考える。
また、先程のキングコング西野さんの企画であれば、吉本が主催してしまうと、吉本びいきの企画を見えてしまう。それゆえ、スラッシュパイルのような第三者がやるから成立しているのも肝だそうです。
講義は、後半の課題講評に。
お題は・・・
「チケット料金4,000円、キャパ300人(下北沢 北沢タウン ホールを想定)、平日の19時開演、登壇するのは2名・・・ この条件で満員になるお笑いトークライブの、その人と人の組み合わせを考えてください。」
というものでした。
「この二人でどういうテーマで話すことが大切ということよりも、この二人が出会った段階でいい打ち合いになることが予感できる組み合わせがいい組み合わせ」
片山さんが今回の課題をどう見たかを教えていただきます。
企画生の企画案に一つひとつ、興行をずっとしてきた片山さんの生の声で、できる理由できない理由を仰ってもらいました。
「値段設定の棲み分けが必要」「その芸人さんは今、テレビを中心に動いている人。オファーしても今年は漫才はやらない」「今その芸人さんはそれだけお客様と距離が近いのか」など、片山さんの肌感覚で理解しているリアルな言葉を伝えてくれます。
最後にモデレーターの阿部さんが質問します。
「片山さんにとって企画とはなんでしょうか?」
「ここ座ってきた人、ええこと言ってきたんでしょうね〜〜〜!」と片山さんは会場の笑いを誘います。
「メシを食うためにやり続けないといけない、生きるための手段ですかね」と。片山さんにとって、企画することは生きることそのものなのだなと、そこにある覚悟を聞いて3時間の講義は締めくくり。
最後の最後までたっぷりと片山さんの仕事論に触れた3時間でした。片山さん、ありがとうございました!
ライター・サムネイルデザイン:小田周介
写真:友田和俊
11月3日(祝・日)に「企画でメシを食っていく」5周年を祝して「企画祭〜湯気ある時間〜」が横浜みなとみらいのBUKATSUDOで開催されます。歴代のゲスト講師によるトークイベントも!ぜひ、お越しください。
お読みいただきありがとうございました!
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