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ワザなき教室の打破

先生が求めている「答え」を言えているか?

とある教科の、とある授業で。

先生にあてられたAさんは、先生からの問いに自分が考えたことを発表しました。しかし、先生のリアクションはうすく、先生は「ほかにある人?」と言って、「じゃあ、Bさん。」とBさんをあてます。
Bさんの発表に対して先生は、「それも、あるかもしれないね。」とだけ言って、「ほかに?」と次へ。
そして、Cさんの発表を聞いて、先生は、「そうですね。」と。
やっと求めていた「答え」にたどりついたように、先生は晴れやかな顔で、Cさんの発言内容を模範の答えとなるように言葉をモリながら皆の前で復唱します。どうやら今日の正解は、Cさんのだったよう…。AさんとBさんは心の中で同じことを思っています。「あーぁ、違ってたんだ。」「だったら、わかりませんって答えておいた方がよかったなぁ…」。
うしろのDさんは、ここまで何も考えていません。先生が答えを板書するのを待っています。もしあてられたら、「わかりません」というつもりです。教室のみんなは、先生が板書した「答え」をノートに書いていきます。これで、今日の授業の中のひとつの問いに決着がついたようです。Eさんは、いつも思っています。「さっさと先生が答えを言ってくれないかなぁ…。」 

先生が求めている「答え」を、1対1の問答において言い当てること。
指導者が「子を指名し、発表させ、それを判定する」という手法しか持ち合わせていないため、このような授業になってしまっていることがよくあります。ワザを持たぬ指導者がつくる教室は、子らの主体性を削(そ)いでいくことになります。それは、とても不幸なことです。とりわけ、若い先生は、自分が学生時代に経験してきた授業を自分の授業スタイルとしていることが多く、これが「ふつう」となっているのでしょう。

では、どうすればいいのでしょうか?

この記事では、指導者が持つべき教室での確かなワザについて記していきます。

先のような教室をつくらないよう、指導者が意識して身につけていかなければならないワザは、次の3つです。

1つ目。
「そうですね」「そうやね」を乱発しない

そうですね」は、子らにとって単なる「相槌(あいづち)」ではありません。「今の発言は、私が求めていた答えにかなっていますよ」という評価を伴ってしまうものなのだ、と指導者は心得なければなりません。また、「そうですね」ではない「ほかに」は、「あなたの発言は間違っていますから、スルーしますね。」になっていることも心得なければなりません。「そうですね」を使うのは、確認の時だけに限ります。

2つ目。
1対1をつくらず、子らをつなぐ

このことは、私の記事『発表の際の「指名」』でも取り上げました。子らを指名する方法を少し変えるだけで、教室を大きく変えることができます。1対1を生み出さないワザは、複数指名です。一度に複数、3~5名を指名する方法です。「では、Aさんと、Bさんと、Cさんと、Dさんの順で発表しなさい。」という指名の仕方です。挙手した子らの指名でも、指導者からの意図的な指名でもかまいません。そして、4人が発表し終わるまで、いちいち言葉をはさみません。4人の発表後、指導者がすることは、その判定ではなく、子らをつなぐことです。これに徹します。

今、4人の人から発表がありました。大きくは、2つの視点からの発表でした。もう少し、考えを出し合いましょう。付け加えや反論など、発表できる人はいますか? はい、では、Eさん、Fさん、Gさんの順で発表しなさい。

今、8人の人の発表を聞きました。どうやら、3つの視点からまとめられそうです。ひとつは〇〇〇という考え方です。もう一つは△△△という考え方です。そして、もう一つは、なんと◇◇◇という考え方です。

では、この3つを板書しておきましょう。

どこにも「そうですね」は登場しませんね。指導者は、教室を子らの考えをすり合わせる場にしていくのです。このワザを用いることで、子ら自身もつなごうとするようになります。「私は、Bさんの意見につけ足しなのですが…」「ぼくは、Eさんの意見とはちがって…」など、自分の考えがどう皆とのつながりをもつものなのかを意識した発言になっていきます。このことが教室の学習規律となるところまでねばり強くやりきるのです。こうした中でできあがってくるのが、聞き合える教室です。めざしたい教室の姿です。

3つ目。
評価するのは、〇〇科としてのものの見方や考え方ができていたか

「そうですね。」という判定の言葉は、2つ目のことができるようになれば、自然と消えていくことがわかりますね。そのかわりに必要となるワザが、「〇〇科のものの見方や考え方」ができているかの評価の言葉をかけることができることです。

今、8人の発表によって、黒板に3つの視点からまとめることができました。それぞれ、よく考えることができました。
ただし、もう一つ、大切な視点があります。それは、◎◎◎という考え方です。少し説明してみましょう。(指導者からの解説)

この時はじめて、子らのまなざしが指導者に向けられます。指導者の指導者たる出番がやってきたと考えていいでしょう。子らにとっては、新たな視点を指導者から得ることになります。

子らから言えば、教室は、ねばり強く考え、深め合う場
指導者から言えば、教室は、きたえる場

子らが自ら考え、「私も発言したい」となるためには、これら3つのワザを指導者が持ち合わせていることが必要なのです。



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