ブラジルでコロナ禍に広まった「鍋の活動」、"panelaço"とは
現在ブラジルでは大統領選中です。前回の大統領選ではわが家はブラジルに在住しており、選挙にまつわるさまざまなことを外国人在住者なりに体験してきました。今回はそのうちの一つを思い出しましたので、記していきたいと思います。
物議を醸し出すことの多かったボルソナーロ現大統領
前回の大統領選では誰もが知っているかとは思いますが、ボルソナーロが当選しました。
「ブラジルのトランプ大統領」と言われるような個性の強い大統領で、当選当時から大きな賛否が巻き起こっていました。
直後から私の近所では夜中頻繁に、人々が窓を開けて鍋をおたまなどでカーン、カーンと盛大に打ちならすようになりました。
最初は何のことだかわからず、夜中に急に人の叫び声と鍋を打ち鳴らす音であたりが騒がしくなりただただびっくりしていたのですが、次第にボルソナーロが様々なことで物議を醸し出すたびに、反ボルソナーロ派の人たちが鍋を打ち付けることで抗議の意を表しているということがわかりました。抗議をする人たちは
“Fora Bolsonaro!”
と大声で叫んでいました。「ボルソナーロ、出ていけ!」というような意味です。
思わず過去にこの抗議のようすを録画したことがありまして、こちらにアップしようと思ったのですが、noteでは録画をアップできませんでした。興味がありましたら、"panelaço Bolsonaro"で検索して見てみてください。
鍋で抗議活動をすることを"panelaço"という造語で表現
この鍋を打ち付けて抗議することを鍋というポルトガル語”panela”から派生して”panelaço”という造語で表現していました。この鍋を使った抗議活動が行われ、この言葉が使われるようになったのは、もっと前のことだそうですが、一気に広まったのはボルソナーロが大統領に就任してからだそうです。
私の想像ですが、おそらく「活動」を意味するポルトガル語"ação"(英語では"action"の意味)の複数形の"ações"と響きが似ていることから、"panela"に"ações"がくっついて作られた作られた造語なのではと思います。
この造語を知ったとき、「鍋の活動」という意味を想像したことから、更に想像が進み、私は「日本では鍋の活動、といったら鍋パーティになるよなあ」ということまで呑気に想像してしまいました。今はコロナ禍でなかなか難しいと思いますが、学生時代にはよく友人と鍋をして親睦を深める大切な機会だったと思い出しました。日本とブラジルで「鍋の活動」と言ったときに、穏やかで和気あいあいとしたイメージのある「鍋パーティをする」という意味と、激しいイメージがある、といいますか実際とても激しかった「抗議活動をする」というようにこんなにも意味が異なってくるのかと勝手に想像した上に勝手に感心していました。
コロナで毎晩行われるように
この”panelaço”は彼の在任してからことあるごとに行われていたのですが、2020年にコロナが広がった時からは毎晩行われるようになっていました。
毎晩午後8時にまず医療関係者に感謝と敬意をあらわす拍手をし、一段落してからみな盛大に鍋を打ち鳴らし、「ボルソナーロ、出ていけ」と叫び、ということを繰り返していました。
私の友人の中でもひとり、強くボルソナーロを批判している人がいて、彼女もzoomで話をしたときに熱い眼差しで毎晩鍋を打ち鳴らしていると言っていました。彼女は当時まだ赤ちゃんの息子がいて、寝かしつけが大変な時期であったと思います。息子くんがようやく寝付いた後であってもかまわず、夫に息子を任せて夜8時には大音量で鍋を打ち鳴らし、情熱的に叫んでいたのだそうです。
私たちはコロナが広がって程なくして日本に帰国をしたので、この抗議活動がいつまで続けられていたのかわかりません。もしかしたら今も毎晩続けられているのかもしれませんし、早い時期に毎晩はやらなくなっているのかもしれません。しかし少なくとも言えるのは、コロナ禍から一気にこの抗議が「あたり前に行われるもの」になったようです。
まとめ
今回の選挙でもボルソナーロ派と前大統領のルーラ派の人たちが熱くぶつかり合っているそうです。各支持者は相手への批判も加熱しているようです。ブラジルではまたあの「鍋の活動」をする機会も増えているのかなあと想像しています。
※見出しの画像はchiiyan1217さまのものを使わせていただきました。ありがとうございました!