見出し画像

同じ方向に帰るのに別のルートで帰る人。

私のことである。

ある夜、人とご飯を食べた。その人がどこに住んでいるかは知らない。ひとしきり話が盛り上がってお会計。店の外に出て、街中の人波であふれる場所までその人と歩いて帰る。

分かれ道がきた。

わたしは左に行きたい。できればひとりで。相手に確認する。「杉浦さん(仮名)は、どっちですか?」「あ、私はこっちです」杉浦さんは私の心の中と同じ左を指差した。クソ、同じか。

私はニコニコしながら「じゃあ、私はこっちなんで」と直進方向を指差す。「じゃあこちらで」と言ってお辞儀をし別れた。本当は私も左に行きたいのだが、一緒には帰りたくない。理由はない。だから遠回りをすることになる。


またある日、別の人たちと3人でご飯を食べた。話は盛り上がったがやがて2時間が経ちお会計をする。お店の外に出て、街中の人波であふれる場所までその人たちと歩いて帰る。

分かれ道がきた。

1人が言う。「じゃあ、私はこっちなんで」右を指差す。私は左に行きたいのでホッと胸を撫でおろす。「そうですか、じゃあここで」1人と別れる。

続けてもう1人に私は確認する。「山本さん(仮名)はどっちですか?」「あ、私はこっちです」山本さんは左を指差した。クソ、先手を取られた。理由はないけど一緒に帰りたくない。単にひとりで帰りたいだけ。「じゃあ、私はこっちなんで」と直進方向を指差す。「じゃあこちらで」と言ってお辞儀をし別れた。本当は私も左に行きたいのに。いつも私が遠回りをする。



つい最近、また別の3人でご飯を食べた。仕事の話や家族の話で盛り上がる。同年代だから分かり合えるところがある。話は盛り上がったがやがて2時間が経ちお会計をする。お店の外に出て、街中の人波であふれる場所までその人たちと歩いて帰る。

分かれ道がきた。

1人が笑顔で言う。「じゃあ、私はこっちなんで」右を指差す。私はやっぱり左に行きたいのでホッと胸を撫でおろす。「そうですか、じゃあここで」1人と別れる。続けてもう1人に私は確認......しなかった。

自分から言ってみよう。たまには私も私のオンマイウェイで帰りたい。だから言った。

「あ、わ、私は左に行きます」

すると松橋さん(仮名)は言った。

「あ、私も左です」

「......あ、そうですか」


そこはまっすぐだと言ってほしかった。


〈あとがき〉
同じ方向なのに一緒に帰るのを回避するあの行動ってなんなんでしょうね。気にする人もいれば気にしない人もいるみたいです。私の場合はガチで遠回りになったとしても「もしかしたらあの人がいるかもしれない」とビクビクしながら歩いて帰ります。みなさんはどうでしょう。今日も最後までありがとうございました。

【関連】帰り道の話はこちらもおすすめ

いいなと思ったら応援しよう!