頼まれてもないのにルームツアーをしたくなるようなクリエイティブな家。
きのうは引っ越し2日目だった。荷物をひたすらほどく。途中、前の家の退去立ち会いもおこなった。文字通り引っ越し完了である。完璧。
あとは部屋を作るだけ。
こんなもの1日で終わるわ、俺だぞ? と思ったら甘かった。部屋作り、全然終わらないのだ。本気を出せばマジで1日で終わると信じていた。
クソ。ムリだ。
頭の中には「理想の部屋」がぼんやりあるんだけど、なんていうか、理想はふわふわしていて、妻にも伝えきれない。
どんな部屋を作りたいのか。
私は、
クリエイティブでバーティカルでストラクチャルでオーセンティックな、それでいてカジュアルでオルタナティブでギャラクシーな、部屋の角にはジャングルのような緑が広がっていて、壁には巨大な謎の抽象画が飾ってあるような、そういう部屋を作りたいのである。
つまり、部屋をどんな感じにしたいのか、実は自分でもよく分からないというていたらくである。でも理想の状態は頭の中にあるわけだから、それを目指したい。
なのに。
目の前にはダンボールの山。
山、山、山、見渡す限りの山。
ネパールかここは? あ?
ムカついてきた。
俺はこんなにがんばっているのに。
三毛田さんとちがって、この引っ越しは妻の指示のもとすべてを私が決めてきた。
物件の調査から始まり、そこからすべてを手配、連絡、調整し、お金を払い、引っ越しお兄さんと話し、当日は運ぶのを手伝い、いっしょに腕まくりしながら作業して「あついっすね」と笑顔で汗をかいた。
よしよしと思ったら引っ越しのお兄さんたちは「じゃ、ぼくたちはこれで〜」と言ってどこか西だか東だか知らんが遠くのほうに消えてしまった。私は右手を伸ばして「い、行かないで〜」と言いたかったが、そういう弱い気持ちをグッとこらえて見送った。
残されたのはダンボールの山。
テトリスを3段目まで放置したような量である。それを見つめながら腕を組む妻、頭を抱える私。さあどうしたもんか。だれかこのダンボールを一列そろえて消してくれないか。
山、山、山。見渡す限りの山。
ああ、ムカついてきた。
とにかく作業が終わる気配がないのである。ダンボールをポカっと蹴り飛ばしてやりたくなる。
けど、なんでも初動が大事っていうし、ここで気を抜いたら一生このままになりそう。だから今日も全力でやるのだ。床に座ってあれこれ配置を考えてみる。どんな部屋にすれば理想に近づくんだろう? 手探りで進めて、少しずつ理想に寄せていくしかない。
理想の部屋。
クリエイティブでバーティカルな。
ストラクチャルでオーセンティックで、それでいてカジュアルでオルタナティブでギャラクシーな、そういう部屋。
部屋の角にはジャングルのような緑が広がっていて、壁には巨大な謎の抽象画が飾ってあるような部屋。
コンクリ打ちっぱなしで太陽が差し込み清潔感にあふれ、かと思えば雑誌社の編集室のような雑多な気配もあるような。
いかにもクリエイティブがはかどりそうで、窓からの景色は札幌を一望でき、頼まれてもないのに家の写真をSNSにあげちゃいそうな、安藤忠雄とか隈研吾とかもびっくりの。
noteに「ルームツアーやります」みたいにして記事をあげたらコメントで「うわぁ、めっちゃ憧れます〜!」と言われるような。コメントしない勢がそれをみてひとり「ぐ、ぐぬぬ、悔しいけど思わず見ちゃう」と嫉妬するような。
そういう部屋を作りたいのである。
が、
ムリやろな。
【関連】理想というかあこがれの話はこちら