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神が私の肩をつかんで「手放せ」と言ってくる2日間。
昨日会った経営者から「イトーくん、いま忙しくて大変だろう」と言われた。
たしかに忙しくて大変なので「おっしゃる通りでございやす」と答える。
社長曰く「事業の拡大、従業員を増やす過程には壁がある。2人から4人に増やすにはとても大きな壁があるんだ」とのことで、それは骨身に染みてわかるから「まさしく」と答える。
さらに社長は「オレの場合、従業員が4人から10人に増えたときは壁はなかった」と言う。なんだかわかる気がする。グライダーの感覚だろう。2人から4人にするには仕組みが必要である。しかし、4人から10人にする過程では仕組みが働いてくれるから簡単。とてもよく理解できる。
さらに言うには「30年以上も事業をやってきたが、振り返ると最初の4人のときが1番大変だった。あとは流れだ」とのことで、私は「では、その流れというか上昇気流はどのように作ったのですか」と尋ねる。
すると社長は「捨てることだ」と言う。続けて「小さな仕事を捨て、大きな仕事をすること。仕組みに働いてもらうこと。これがコツだ」と言う。
今日会った社長も同じようなことを言っていた。「個人の技術、スキルには限界がある。いかにして仕組みを作るかが重要なのです」と。「自分ひとりだけがいい思いをするのならそのままでいいのです。しかし、全体のことを考えれば、結局は仕組みが事業を作るのです」と。
こうも言っていた。「自己啓発本やらビジネス本やらを読むでしょう。でもそれを読んだからといって事業が拡大するかというとそんなこともないでしょう?」。私は「はい、そうですね」と言う。
「じゃあ成功の指南書があるのに、なぜ世の中は成功者で溢れていないか? これはどう思いますか?」と質問してくる。
私は答えを持ち合わせていないので「なぜでしょう?」と聞く。
すると社長は「成功者のマネを100%しないからです。みんな、本に書いてあることのうち、自分に都合のいいものだけをマネしますから。100%同じことをやらないと著者の領域にはいけないに決まってますよ。人間は愚かです」と言う。
私はゴクリと唾を飲み「では、自己啓発本やビジネス本に共通して書いてある成功の秘訣とは?」と聞く。社長は言う。
「小さなことを捨て、大きなことをコツコツと。自分一人では無理なので仕組みを作り、みんなで挑むこと。これだけです」と言う。
神が私の両肩をガシッとつかんで「イトーくん、手放せ」と言っているような気がした。肩を揺らされているような。昨日会った人も今日会った人も、どちらも紹介で出会った人であり、どちらも初対面であった。神が私に「手放せ」と言っている。「捨てろ」と言っている。「仕組みを作れ」と言っている。
昨晩、妻と一緒に占いを見た。年の瀬も迫っている。今年の運勢がどうだったのかを年末に振り返るというのが夫婦の行事になっている。いわば答え合わせ。
占いをみて「本当だ」とか「これは違うね」とか言うことが多いのだけど、占いとはおもしろいもので、あれはこじつけだ。書いてあることと自分の1年の経験則を無理やり紐づける。それで「当たってる!」と喜ぶ。
のだが。
妻に「じゃあ、ここまで当たってる占いだから、来年の俺の運勢がどうか見てみよう」と言う。妻もうんうん言っている。
書いてあった。
「手放す年になる」と。
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〈あとがき〉
手放すセンスがないんだと思います。どれくらい忙しいかを書くのも面倒なほど忙しく、貧乏暇なしという慣用句が最近の私の口癖になっている気がします。無理やりにでも仕組みを考える時間をたくさん設け、そういうことを考える時期が迫っているのだということでしょう。占いは信じませんが、何かのきっかけにはなる気がしています。今日も最後までありがとうございました。
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