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店員さん「カレーの飲み方はどうします?」

カレーは飲み物ではない、という話が書きたい。


お昼前に休憩と昼食がてら、札幌市内中心部の瀟洒なホテルラウンジ『THE HOTEL(仮名)』に行った。

THE HOTELは数年前にできた自然派なホテル。2階に夜でもやってるラウンジがあるのだが私は日中ごくたまにここにやってきてコーヒーを飲んだりコーラを飲んだりする。

たまにカレーライスも食べるのだが、このTHE HOTELのカレーライスはルーと白米だけである。具がない。なんの手も加えていないオーガニック風を気取った、とても気に食わないカレーである。

THE HOTELにやってきたのは今日の11時半すぎ。早速カウンターに行き、腹ペコでもあったのでカレーのセットメニューを頼むべくメニュー表を凝視した。私の応対をしてくれる店員さんは、これまた気に食わないくらいにかっこいい。THE HOTELめ、いい採用をしてるな。


メニュー表に並ぶ文字列を凝視していると、

タンカレー

という表記が目に入った。あとで知ったが「タンカレー」とはお酒であるらしい。世界的なジンのブランド名だとのことである。

諸悪の根源


私はもちろん、お酒としてのタンカレーを知るような世界線で生きてない。だから当然こう思う。


むむむ? タンカレー? 

「牛タンカレー」ってことか? なんだよTHE HOTEL、あのちんけな具なしのカレーをやめて新メニューを開発したのね。

いいじゃん、いいじゃん、ちょうどお肉食べたかったわ! よし、今日のお昼はタンカレーで決まり〜!

いぇーい! 肉だ〜!


というわけで私は意気揚々と、なおかつイケメン店員さんに負けないよう精一杯低く抑えたダンディズム真っ盛りな声でこう頼むのである。

(低い声)「えーとじゃあ、タンカレーをひとつ。それと、そうだなぁ……コーヒーをひとつください」

店員さんは「えっ?」といういぶかしげな顔をしていた。当然である。真っ昼間にタンカレー(お酒)とコーヒーをセットで頼む奇特な人材をこれまで見たことがないのだろう。店員さんは「ではお会計、1200円です」と言うので会計をしようとしたのだが、続けて彼は私に尋ねた。



「タンカレーの飲み方はどうされますか?」



......

……飲み方だと?

......カレーの? 

彼の言っている意味が1ミリも理解できないので「の、飲み方ですか?」と聞き返す。

なんだイケメンめ、俺のことを「カレーは飲み物」と言うようなオーバーオール君だと思ってるのか? 失礼なやつだ。今の俺の服装を見てみろ、オーバーオール着てないだろ。カレーを出されたら「うわあ! 最高〜!」と言ってまる飲みするような食いしん坊に見えてるのか? 見えたならすまん。じゃあ今後のために覚えておいてくれ。俺はオーバーオールを持っていない。

なので私は聞き返す。


「の、の、飲み方って、どんなのがありますかね?」


すると店員さん「ジンとかそういう飲み方がありますね」と言う。スットンキョーなすまし顔で言うのである。

そのあたりで私は全てを察した。

「......え、あ、タ、タンカレーってぼく、牛タンカレーライスのことだと思ってました!」と笑ってごまかす。

「すみません、すみません、本当にすみません」とあたふたして言うと店員さんは「いえいえお気になさらず」と言う。

それでも私は恥ずかしいので「タ、タンカレーって有名なんですか?」と聞いてみた。すると店員さんは「せ、仙台あたりでは有名かと」と言う。

心の中では「あ? 仙台で『牛タンカレー』が有名なのはわかっとんねん。伊達政宗とサンドウィッチマンしかいない街だろ。なんだ? この会話はアンジャッシュのコントか?」と思ったり思わなかったり。


結局、いつもどおりの何の工夫もない具なしのカレーライスを頼んだ。それこそ飲み物のように飲み込んだ。

無知は罪だと思う。

仙台の人にも申し訳ない。


あと、カレーは飲み物ではない。


<あとがき>
タンカレーってそんなに市民権を得ているようなお酒なんですかね。マジで私が無知すぎて申し訳ない手間をかけちゃったなと反省しました。店員さんに「タンカレーの飲み方はどうされますか?」と聞かれたときは、え、どういうこと? 生きてる世界線が変わったの? と慌てました。今日も最後までありがとうございました。

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