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巨乳ごときにうろたえない。
北海道のとある企業の男性から「SNSを使って会社への問い合わせを増やしたい」という相談がきた。仕事の話である。
なるほど。
となると私が気になるのは、その会社の現状がどうなっているかだ。すでにSNSはやっているのか? そもそもどんな目的なのか? そしてその方の知識はどれほどなのか?
すばらしいことに、その方は事前に「こんなことがしたいメモ」と「こんな疑問があるメモ」を用意してくれていて、データを送ってくれた。
それを見ると、なんというか、もう涙ぐましいというか。
一言で言えば、すばらしい、だった。
その会社ではSNSは全くの未知の領域であり、担当の方の知識も、そうだな、バブバブとした赤子そのもの、といいますか。じゃあ、なにに対してすばらしいと思ったかというと、その心意気にである。
未知の領域に飛び込まなければ時代に取り残されるは自明。担当としてSNSの活用を社長に進言していたものの、社長はなかなか首を縦にふってくれなかったという。
こういう自発的に動く人材がいる企業というのは、なんだかうらやましい。いい会社なんだろうな、と思える。
…
さて、面談当日。
私がその担当と会うと、もう1人、女性がいた。年齢はそうだな、50代くらいだろうか。とても元気でハツラツとしている方。「はじめまして!」とあいさつをしてくれる。「まったくの素人なのでよろしくお願いします!」とおっしゃるので、全然問題ない旨を伝える。
お話の席について、事前にくれているメモを前提に質問に答える形式をとった。
私としては、それだけのメモを事前にくれているわけだから、その心意気にこたえたい。ちょっとびっくりしてもらおうと思って、10ページくらいの資料を作っておいた。
「その会社の分析・SNSの考え方・それ以前に必要な会社としての考え方」をまるっとつめこんだ指南書みたいなものを作っておいた。
すぐに何か具体的な仕事にはならないだろう、と思いつつも1時間半、話を聞いた。先方はとても感動してくれた。よかった。
細かな話は省くが、その話の中で、インスタグラムの画面、アルゴリズム、広告の仕組みを話す場面があった。実際に私のインスタグラム画面を見せながら「ここはこうで、こういう嗜好のある人に最適化される、広告は〜」などの本当に初歩的なこと。
先方2人は「ほほう!」と言いながら聞いてくれたのだが、
そこで、以下に引用する「X」な出来事があった。
地方のとあるお客さんに自分のインスタ画面を使って、広告概念の説明をした。
— イトーダーキ (@itooohdaaaki_2) September 29, 2023
ワイ「フォローしてる人が出てきますよね、広告も出てきますね」
フムフム(スクロール、スー)
(巨乳のグラドルがおすすめに出る)
「はい、これが巨乳の人ですね」
「なぜ出てくるんですか?」
「なぜですかね」
なぜですかね。
吾輩はうろたえない。
巨乳ごときにうろたえない。
巨乳だぁ? あ? かかってこいよ?
インスタグラムのアルゴリズムが私の嗜好を解析し、私に最適なコンテンツを画面におすすめしてきた結果、巨乳の水着美女が両腕を後頭部においたポーズをしていても、私は1ミリたりともうろたえない。
吾輩は微動だにしない。
正直、そんな画面がこのタイミングで出てくるとは思っていなかった。焦ったにはあせった。が、焦りを見せたらおしまい。ここは、それがさも当たり前かのように振る舞う必要がある。
気にしない。巨乳が出てきても気にしない。
「〜となるわけですから、こんな風に表示されるわけですな」
「おぉ、なるほど〜」
そのお話の最後には次なる具体的なステップをまとめた。去り際に2人してニコニコと、こう言ってくれた。
「イトーさん、本当に有意義でタメになる時間をありがとうございました!」
2人はとても満足そうだった。
私もキリッとした顔で「こちらこそ(スッ)」といってお辞儀をした。
巨乳のグラドルが記憶から消えてますように。
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<あとがき>
たとえば1時間の話をしたとして、強烈な印象に残っている話や場面ってあるじゃないですか。たいていそれはストーリーものの話が脳にこびりつくので、意識的にストーリーを随所に話すことにしているんです。が、今回の場合だとおそらく、巨乳の印象が強すぎて、私は「巨乳の人」になっているかもしれません。今日も最後まで巨乳でした。
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