白のパンダをどれでも全部並べて、って絶対書けなくない?
アジアの純真だ。PUFFY(パフィー)の楽曲。
北京、ベルリン、ダブリン、リベリア。
『アジアの純真』って言ってるのに、ふた言目にはベルリンが登場して、ヨーロッパにワープさせてくる謎の名曲。
タイトルのアジア縛りを、ふた言目に破るという、天才だけに許される暴挙を真顔でやってくる曲。
『アジアの純真』(PUFFY 1996年リリース)
なぜこの記事を書いているかと言えば、
たぶんCMのせいだ。マクドナルドの。
乃木坂か誰かが出演しているマックのCMのテーマに、この『アジアの純真』が使われている。テレビを見ているとこの曲が流れてきた。だからこの記事を書いている。
私の中で『アジアの純真』は、定期的にやってくるブームソングになっている。大好きな曲のひとつだ。タピオカブームが数年おきにやってくる感覚に似ていて、1年周期でアジアの純真を聴きたくなる波がやってくる。
歌詞の訳の分からなさが心地いいのだ。
書けない。
この歌詞は絶対に書けない。
まず、どうして北京、ベルリン、ダブリン、リベリアが浮かんでくるんだ。いや、なぜこの単語を選べるんだ。で、なんでそれらを束にして、輪にするんだ。書いたのは誰なんだ。
そう、陽水だ。
井上陽水である。
書けない。
やっぱり書けない。
マウスはキーになるのか?
アクセス試そうか、って何をどう試すんだ?
なぜ「ラザニア」が出てくる?
絶対に書けない。
「白のパンダ」がまず浮かばない。だってパンダは白と黒だ。さらにそれを全部「並べて」ときた。
どれでもいいからパンダを全部並べるのか。なぜだ。なぜ並べるんだ。パンダは並べられるのか?
この楽曲の作曲は奥田民生。ビートルズに影響を受けた世代の1人である。イントロやメロディラインからは、ビートルズ中期の音使いの痕跡が垣間見える(知らんけど)。
…
だが、この記事でやりたいのは陽水が書いた歌詞についてツッコむことではない。もうツッコんでるけど。
本当にツッコみたいのは「よし、この曲で行きましょう」と決定した人は誰なんだ? という点である。
だって『アジアの純真』はPUFFYのデビュー曲だよ?
脱力系の2人にユニットを組ませて、さ、この2人を売り出していきましょう、プロデューサーは奥田民生さん、作曲も奥田さんで、作詞は仲良しの陽水さんに任せましょう。さてさて、どんな曲になりますかね?
こんな会議が絶対開かれたはずなのだ。
この楽曲はまず、奥田民生が作曲し、その鼻歌デモテープを陽水に送り付けて「さ、陽水さんお願いします」と投げた曲だったはずだ。
で、あがってきたんでしょ。これが。
井上陽水に「責任」という概念はないのだろうか。
みんな、どう思ったんだろう。絶句したのだろうか。それとも「いいっすね!コンセプトにぴったりだ!」とでもなったのか?
プロデューサーはたしかに奥田民生だけど、多くの大人が関わったはずだ。誰なんだ、最終決定権を持っていたのは。奥田民生はPUFFYに聞いたらしい。
PUFFYの2人は「あ、はぁ~い」とでも言ったのか?言ってそうで怖い。あの2人なら言いかねない。
『アジアの純真』の歌詞のラストは、
で終わるのだが、陽水から上がってきたばかりの歌詞が「アクセスラブ」ではなかったというのは有名なお話かと思う。「いま アクセスラブ」ではなく、なんだったのか?
こうだ。
奥田民生は陽水に言ったらしい。
「陽水さん、さすがにデビュー曲で
ナンマイダはマズいっす」
でしょうね。
陽水はニコニコ言っただろうな。
「あ、そ〜う?」
陽水がこの曲をどのように作ったのか、過去のインタビュー動画があった気がする。私が覚えている「ナンマイダ」の理由は、こうだ。
この支離滅裂な歌詞の並び。
押韻の意図、キャッチーにさせる意図だとかはあるんだろうけど、きっと井上陽水はニヤニヤしながら歌詞を書いたんだろなぁ、すごいなぁ。真剣にふざける大人には誰も勝てないなぁ、なんて思うのであった。
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