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北海道までの飛行機代を知らない人と話して実感すること。
生まれてこのかたずっと北海道に住んでいる。
先日、九州出身だという若い世代の男性とリモートで話をした。共通の知人に紹介されたのだ。基本的に紹介は断らないようにしているのが現段階の私だからこころよく応対させていただく。
電波の向こうには見るからに若い男性が映っていて、すこしだけ緊張しているのが画面越しにも伝わってくる。聞くと九州北部の出身でいまは東京都内で仕事をしているらしい。
仕事の話や、彼がしたいことなどをつぶさに聞いてみる。彼は「ONE PIECEじゃないですけど仲間は10人くらいまでは増やしたいと思っているんです」と言う。
私が仲間になるかどうかは置いといて「ONE PIECEじゃないですけど」と言ってくるということは、彼はONE PIECEを読んでいるということが推察できる。
ちなみに「仲間は10人くらいまでは増やしたい」という言葉は、ONE PIECEの主人公モンキー・D・ルフィが第1巻で言うセリフである。ルフィは故郷のフーシャ村を旅立ち、船の上でひとり「んん…! まずは仲間集めだ。10人はほしいなぁ!!」と言うのである。
彼がONE PIECEを読んでいるということが推察できるわけだから、その後の仕事の話に出てくる複雑な話題をONE PIECEをもってたとえることにした。
「まるでDr.ベガパンクのように」みたいなことを言ってみる。
すると彼はキョトンとした顔で「だれですかそれ?」と言う。なるほど、最新話までは抑えてないようだ。すこし悲しくなるし、肩透かしを食らった気分だ。そこまで思い至っていない私が悪い。なんならそこで変に知ったかぶりをせず「だれそれ?」と聞けるところは好きだ。
話の中で彼が目標について話してくれる時間があった。将来どんなことをしたいのか、なぜいまの仕事をやっているのか。
彼は全国を旅してみたいらしい。
いくらなんでもベタな目標だなと思いながら「じゃあ北海道にはいらしたことはあるんですか?」と聞いてみる。するとハッキリと真顔で「ないです」と言う。そうだよね、そうだよね、大丈夫、大丈夫。
しかし彼は「でも東京から北海道って意外と安く行けるんですよね」と言う。ちなみに北海道 - 東京間は飛行機で片道1万円前後くらいだ。LCCに乗ればもっと安い。
我々北海道民からすれば東京までの飛行機代というのはある程度頭に入っているから、その金額が高いのか安いのかはよくわからない。たとえば私は東京 - 大阪間の新幹線料金を知らない。比較対象の前提知識があり、かつ調べて初めて金額は相対的に評価できる。
「北海道って意外と安く行けるんですよね」
たしかに東京の人間からすれば、北海道までの飛行機代というのはわざわざ行こうと決意して飛行機代を検索しなければわかるはずもない。きっと過去に調べて「意外と安いんだな」と思ったのだろう。逆にそれまでいくらだと思っていたんだろう。
そこで私は自嘲気味に言ってみる。
「東京の人たちからすれば、北海道なんて外国みたいなもんですからね、アハハ」
すると彼はまた真顔で言った。
「そうですね」
思わず笑ってしまった。
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〈あとがき〉
そういう日常を過ごしています。だれかの謙遜とか自嘲の空気を察するのってとても難しいですよね。物事に対する一般的な評価を知っていないとそこを見抜くのは至難の業です。それができているだけで「お、この人わかってるな」と思うものですが、では「東京の人たちからすれば、北海道なんて外国みたいなもんですからね」に対してはどう回答されれば私は気持ちがよかったのでしょう。ちょっと面倒な人間になっている気がします。今日も最後までありがとうございました。
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