青い大きな大きな水槽の前で
待てども届かない。
その時間のために巡る。
雨のような空気はからりと晴れた。
あっさり上品なモンブラン。
使いたくなる決め台詞。
3歳ぐらいの頃の水族館の思い出。
大きな大きな水槽の中に、イルカが気持ちよさそうに優雅に泳いでいた。私は、ぺたりと大きな青い水槽に顔を付けて、気持ちよさそうに泳ぐ姿を見ていた。
その時、くるりと泳いでいたイルカが、すいーっと私の顔の目の前に泳いできて、ぴたりと止まり、顔をくしゃっとしてにっこり笑顔を向けてくれた。
私は近づいてきてくれて、笑ってくれたことがうれしくてうれしくて、その場面だけずっと忘れられずにいる。
このことを大人になってから、数少ない人に話したけど、へえーと無関心だったり、笑われたりするばかりで、その時の感動が伝わったと思えたことはないのだけど、あれは私に笑いかけてくれたんだとずっと信じている。
思えばその頃から、ずいぶん大人になった今でも、目の前をふわりと横切って飛んで行った鳥や、猫に「にゃあ」と話しかけて返事をしてくれた時や、犬が尻尾をちぎれそうに振って喜んでくれた時に、おかしな話だけど、私にエールを送ってくれている!とうれしくなっている。
生き物にも感情があって、気持ちがあって、何かを伝えようとしてくれることがあるんじゃないかと思っていて、小さな頃、自分の気持ちを言葉にするのが苦手だった私は、ずっとそんな生き物たちからエールを送ってもらっていた気がする。