vol.16「一瞬一瞬を楽しんでほしい」卵卵ふわぁ~む・柳田苗子さん
私が栄養士として働いていた頃、世間では「卵はコレステロールが高い」「サルモネラ菌が心配」など、卵の悪いイメージが強くなっていました。
そんな時、親が経営する鶏卵販売の会社が「うちの卵の良さをお客さんに直接伝えられる場所を作ろう!」と動き始めたんです。
親から「おまえも一緒にやらないか?」と声をかけられて…
「きほくる | 紀北町魅力ナビ」にお越しいただき、ありがとうございます。
今回の「しごとカード」インタビューは、
紀北町長島(きほくちょう・ながしま)にある、たまご屋が作るこだわりスイーツの店『卵卵ふわぁ~む』のマネージャーであり管理栄養士の柳田苗子さん(やなだみつこ)さん。
「よそに出たい」「進学するなら資格が取れる学校へ」という気持ちで愛知県にある短大に進んだ柳田さん。
卵卵(らんらん)ふわぁ~むをやることになったきっかけ、結婚・出産を経て得た変化など、溢れる思いを明るく語っていただきました。
この記事は「しごとカード」に登場していただく“紀北町で働くひと達”に、地域おこし協力隊の豊川がインタビューしていくシリーズです。
あなたは、どんな風に働きたいですか?どんなところで、どんな人たちと働きたいですか?
あなたが、自分に問いかけ、自分の中にある答えと出会っていく。そのきっかけに、この note がなれたら嬉しいです。
1.これをやるのは私だよね!
ーーこれまでの経緯を教えて下さい。
柳田さん(以下、敬称略) 私は1979年(昭和54年)、紀北町長島(きほくちょう・ながしま)生まれ。現在、長島在住です。
海野(かいの)小学校、紀北中学校、長島高校と進み、愛知県にある短大に進学。
そこで栄養士の資格をとって、卒業後は紀北町に戻って小学校の栄養士になりました。
ーー栄養士の資格を取ろうと思った理由は?
柳田 当時の私は深く考えてなかったんです。
「よそに行きたいな」と思っていたのと「進学するなら資格が取れる学校がいいな」と。
そして自分の成績で行ける学校を選んだら、そこで取れる資格が保育士か栄養士の二択でした。
私は保育士は向いてないと思ったので、栄養士にしました。
ーーなるほど。
柳田 私の実家は鶏卵の生産販売会社(垣善フレッグ株式会社)をやっています。
振り返ると当時の私は、心のどこかで「栄養士の資格をとって実家の会社に入って働けばいい」と思っていたのかもしれませんね。
ーー小学校の栄養士になったきっかけは?
柳田 きっかけは短大の教育実習です。
教育実習先を「学校・病院・福祉施設」の3つから選べたので、私は学校を選んで紀北町内の学校で教育実習をしました。
その時にお世話になった先生が私のことを覚えてくれていて、栄養士の臨時採用の募集があると教えてくれました。
それを聞いて「せっかく取った資格だし、学校で働いてみたい」と思って、卒業後は紀北町に戻って赤羽(あかば)小学校の栄養士になりました。
ーーその後は?
柳田 赤羽小は2年間という期間限定だったので、終了後は実家の会社に入りました。
でも「やっぱり栄養士をやりたい」と思って、明和町の小学校で3年間、尾鷲市の小学校で2年間、栄養士として働きました。
ーー卵卵ふわぁ~むに携わることになったのは?
柳田 私が30才になるかならないかの頃だったかな。
当時、世間では「卵はコレステロールが高い」「サルモネラ菌が心配」と卵の悪いイメージが広がっていたんです。
栄養士であり、卵の良さを知っている私は「そんなことないのに…」とモヤモヤした気持ちを抱えていました。
そんな時に親が「うちの卵の良さをお客さんに直接伝えられる場所を作ろう!」と動き始めたんです。
そして「おまえも一緒にやらないか?」と声をかけられて…
私は栄養士の資格を持っている。うちの卵の良さも知っている。
これをやるのは私だよね!
と使命感みたいなものを感じたんです。
そして、実家の会社に戻って『卵卵ふわぁ~む』を立ち上げることになりました。
2.卵の良さを伝えるお店
ーー卵卵ふわぁ~むの誕生ですね。
柳田 最初は、卵の直売所をやる予定だったんです。
でも「卵だけ買いにきてくれるかな?」という疑問が湧いて…
地元の人が買いに来てくれるモノで『卵の良さを伝えられるモノ』って何だろう?と考えました。
ーーなるほど。
柳田 この地域には手土産になるようなモノがないと思ったんです。
「卵をたくさん使ったお菓子が良さそう!」
「手土産になるようなモノなら地元の人が買いに来てくれるんじゃない?」
そんな発想からたまご屋がつくるこだわりスイーツの店・卵卵ふわぁ~むが生まれました。
ーーそんな経緯で生まれたお店だったんですね!
柳田 そうなんです。
卵卵ふわぁ~むはお菓子屋さんのイメージが強いと思います。
でも本当は「卵の良さを伝えるお店」なんです。
そんな理由から店名も「卵卵ふわぁ~む」にして、店内のあちらこちらに「卵」のモチーフを使っています。
イートインスペースの卵のモチーフ
ーー商品のラインナップにも特徴が?
柳田 はい。一般的なケーキ屋さんのようなフルーツをたくさん使ったスイーツではなく、卵をメインで使っているスイーツにしました。
オープン当時は「ロールケーキ・プリン・シュークリーム」から始めました。
しばらくするとお客さんから「日持ちがするものが欲しい」と言われて、カステラに挑戦し、今も色々と商品を開発しています。
3.スタッフが幸せなら、お客さんもきっと幸せ。
ーーお店はどんな風に運営していますか?
柳田 店舗は10時~18時まで営業しており、水曜日定休です。
スタッフは朝7時半から18時半まで稼働しています。
私の仕事は、業務やイベントのスケジュール立てやちょっとした補助など、ほとんど裏方です。
たまにスタッフと一緒に商品開発をしたり。お店にいることも少ないです。
お店の運営はスタッフが本当に良くやってくれています。
私が「明日はお店に出るかもよ~」とスタッフに伝えても「あぁ、そうですか~」的なリアクションで、あまりアテにされていません(笑)。
ーーマネージメントがうまく出来ているということですね。
柳田 そうなんです!最高です!それが本当に幸せです。
ーー最初からそんな感じだったんですか?
柳田 全然違いましたね。
オープン当初は「私がやらなければ」「私が頑張らなければ」という気持ちが強くて、すごくピリピリしていました。
私がそんな雰囲気だからかスタッフも居づらかったんでしょうね。採用しても定着しなくて、すぐに辞めていく。
そうなると人員不足で余計に私がピリピリする。
人の入れ替わりが激しいと仕事の効率も悪くなり、悪循環でした。
ーーどんなきっかけで現在のような良い雰囲気になったんですか?
柳田 私が子どもを産んだからかな。
子育てするようになって、お店の切り盛りが自分1人ではどうにもならなくなったんです。
周りの人に頼らざるを得ない状況になって、そこから何かが変化してきたんだと思います。
ーー子育てしながら仕事するって、それも経営側となると大変ですね。
柳田 スタッフに頼らないとお店がまわらないという状況になって、スタッフが自らやってくれるようになりました。
現在はスタッフに「どうする?」と相談すると「じゃあ、こうしてみましょうよ!」と提案してくれるようになりました。
お店もどんどん良くなっていると思います。本当にありがたいです。
ーー他に変化はありましたか?
柳田 お店のオープン時、私には『地域のひとが「うちの地元のお菓子なんだよ」と誇りを持って手土産にできるものを提供したい』という思いがありました。
それに加えて、お店が上手くまわるようになって新たな思いが湧いてきました。
うちの店を『「私、卵卵ふわぁ~むで働いているんだよ」とスタッフが周りの人に自慢できるようなお店にしたい』と思うようになったんです。
柳田 スタッフが誇りをもって働いていたら、お客さんも楽しく買い物が出来たり、美味しいお菓子を味わうことが出来る。
「スタッフが幸せなら、お客さんもきっと幸せな気持ちになるだろうな」
そんな風に自然と思えるようになってきたんです。
柳田 出来るかどうかは分からないけれど、スタッフがうちの店で働いていることを誇りに思えるような、そんな店を目指しています。
スタッフにも「なぁなぁじゃなくて、ひとつ上の店を目指そう!」と話しています。
その分、うちの店は厳しいと思いますけど(笑)。
4.子育てするようになって気づいたこと。
ーー出産されたのは何才ですか?
柳田 結婚したのが32、3才で、35才のときに第1子を産みました。
子どもが出来るまでは、朝7時から夜8時位まで仕事をしていました。
でも、子どもを産んだらそんな働き方は出来なくなりました。
ーーハードワークは無理になりますね。
柳田 夫婦2人の時は、まだ大丈夫だったんです。旦那さんは大人だし(笑)。
旦那さんは独身のときはご飯を炊いたことがなかったみたいですが、結婚してから説明書を読みながらご飯の炊き方を覚えてくれました。
料理もしたことがなく、ニンジンの皮を剝くことを知らなかったんです(笑)。それが、今ではだいたいものを作れるようになっています。
ーー旦那さんも成長されてますね!
柳田 はい、ありがたいです。子ども2人までは土日は旦那さんが子守をしてくれて、私はお店に出ることが出来ました。
でも、3人となると「さすがに、無理」と言われて…
保育園が休みの日は私が子守をして、お店はスタッフに任せています。
スタッフは大変だと思うけれど、本当に助かってます。
ーー仕事の転機は、出産・子育てだった?
柳田 そう思います。そして、子育てをし始めて私の着眼点も変わった気がします。
「子育てしていなかったら、こんな事には気づかなかっただろうな」と思うことが増えました。
ーー例えば、どんなことですか?
柳田 経営側(雇用主)という立場だと、人材を募集するとき「子育てしながら働きたい」と言われると「働いてもらえる時間が少ないなぁ…」と思っていました。
でも、自分が子育てするようになってその気持ちが分かるようになりました。
企業として発展し地域の発展にも貢献したい。でも、人材不足という悩みがつきまうのが現実。
雇用主として「スタッフの幸せ」を考えると、若いスタッフに早く結婚させてあげたい、子どもも早く産ませてあげたいと思う。
でも、女性は子どもを産むと働けなくなる。そうなると企業としては働き手が少なくなってしまう。
とてもジレンマを感じています。
早く働きたいと思っている親が働きやすい環境が整えられることを願っています。土日保育や病児保育などが整うとだいぶ変わるのかなって。
ーーなるほど、雇用主と子育てしながら働く人、両方の思いが分かるようになったんですね。
柳田 そうなんです。子育てしやすい、働きやすい町になったらいいなと思っています。
5.一瞬一瞬を楽しんでほしい。
ーーあなたにとって、仕事とは?
柳田 なんだろう…私にとっての仕事…
ほぼ、全て、かな。
仕事もプライベートも全部一緒な気がします。
先日、スタッフが泣いていたんです。その姿が、私にはわが子が泣いているように見えました。
スタッフとわが子が並んで二人とも困っていた場合「どっちから助ける?」と聞かれたら、私は答えに悩みます。
「仕事だから」と割り切れない。
スタッフも家族のように思っています。
ーー紀北町で好きな場所は?
柳田 夜、帰宅途中に山と山の間(荷坂峠の辺り)に列車が一瞬見える場所があるんです。
真っ暗な中に、スーッと車窓の光が見える。
偶然それが見えたら「今日はラッキーな日!」って思うんです。それが大好き!
ーー二十歳の頃の自分に声をかけてあげられるとしたら?
柳田 二十歳の頃の自分に?!
「早く結婚して、早く子どもを産んで下さい」かな。
ーーどうして?
柳田 私は子どもがたくさん欲しかったんです。
今、子どもが3人いて、第3子は1才ちょっと。
3人目を産んだあと「もう一人欲しい」と思ったけど、自分の年齢(41才)を考慮して諦めました。
だから、二十歳の頃の自分に「早く結婚して早く子どもを産んで下さい」と言いたいです。
そして、今の私はたくさんの人に支えてもらっているおかげでとても幸せなので「出会いを大切にしてほしい」と伝えたいですね。
ーー最後に、若い世代の人たちへのメッセージをお願いします。
柳田 一瞬一瞬を楽しんでほしいです。
今いる場所も、今という時間も、楽しいことも辛いことも、全部楽しんでほしいと思います。
ーースタッフも家族のように思っているという言葉が印象的でした。今日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
【卵卵ふわぁ~む・柳田苗子さんからのメッセージ】
・周りの人に頼らざるを得ない状況になって、そこから何かが変化した。
・出会いを大切に。
・一瞬一瞬を楽しんでほしい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の 卵卵ふわぁ~む・柳田苗子さんのお話はいかがでしたか?
あなたの中にある仕事に対する思いや大切にしていることを感じるきっかけになったら嬉しいです。
(取材先情報)卵卵ふわぁ~む
https://ranranfarm.com/
〒519-3205三重県北牟婁郡紀北町長島629-1 TEL:0597-47-3931
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