『アナと雪の女王2』〜アナとエルサの苦悩と父系の毒〜
『アナと雪の女王』1から2の間は3年が経過している。その間いくらアレンデール王国が平和であっても、アナとエルサには幼少期のつらい記憶が残っているはずである。そのことはどうなっているのか、ということに注目して視聴した。
アナ雪2は、アナやエルサたちがアレンデールを救うために冒険する物語である。一方で、エルサが自分とは何者であるかを探す物語でもあり、それは特に映画の後半でエルサが歌う「Show yourself」の歌詞に表れている。エルサは、「自分は人と違う。世の中のルールにも適合しない。それはなぜなのか」「今までの人生、私は引き裂かれてきた」とはっきり歌っている。観ている私は、そうだよねそうだよね、と思いながら号泣した。
ではアナはどうか。本編では、アナは常にエルサを気にかけて葛藤しているが、自身の内面と向き合って悩むようなシーンは見受けられない。しかし未公開シーンでは、アナが実は悩んでおり、それを解決するシーンがあった。すなわちアナは「自分は両親に信頼されていなかったのではないか」と悩んでいたが、エルサがアートハランから持ち帰った記憶により、アグナル王とイドゥナ妃が「航海から戻ったら、アナにエルサのことを打ち明けよう。エルサを助けられるのはアナしかいない。」などと話し合っていたことを知らされるのである。アナはそれを見て泣きながらエルサに抱きつき「ありがとう」と言う。感動的で素晴らしいシーンであり、私はやはり涙を禁じ得なかった。しかし、「自分は両親に信頼されていなかったのではないか」と思うのは、アナよりエルサの方がしっくりくるのでは?とも思った(1でもエルサは父の言葉が呪縛となっているし)。でもそれ以前にエルサは魔法が使えること自体が大きな謎であり、それが彼女の根源的な悩みになっていることを描くだけでいっぱいいっぱいだったのであろう。
したがって、アナとエルサはともに平和な王国での生活を謳歌してはいたが、やはり心の根底の部分に悩みを抱えていた。それが3年間は発露されなかったが、エルサが記憶の声に呼ばれ、森の精霊たちを呼び覚ましたことで表面化した、と解釈できる。
もうひとつ2を観て気になるのは、アナとエルサの家庭は父系の毒が連鎖しているのではないかということである。彼女たちの祖父ルナードは、物語の終末近くで明かされるように、ノーサルドラの長を殺した悪人である。そしてアグナルは幼くして王となった。一国の王ということは、言うまでもなく権力の頂点に君臨するわけだから、威厳ある荘厳な振る舞いと、国民に不安を与えない行動•政治が求められたであろう。エルサの魔法をコントロールさせようと躍起になるのも、イドゥナではなくアグナルである。(イドゥナは傍観。親であるならもっと介入すべきだと思うのだが……。)そしてそれが1の、エルサの魔法の暴走へとつながるのだ。
こう考えると、申し訳ないけどアグナルが早死にしたことで、アナとエルサは解放されたと言わざるをえない。2人がおばさんになるまでアグナルが生きていたらどうなっていただろう。2人とも狭い王宮の中で一生を過ごし、自分たちの人生を生きられなかったのではなかろうか。
様々な偶然や必然が重なって、最終的にはアナもエルサも居場所を見つけることができた。人生の痛みや悲しみの中で幸せを作っていく彼女たちの姿は非常に人間的である。2のハッピーエンドは理想的すぎると思わなくもないけど、私はアナとエルサを応援してしまうし、彼女たちに深く共感してしまうし、パワーを貰える。