
チベットの十字絞りインディゴのティクマ
さて、チベットの十字絞りティクマ(ティグマ)の記事です。
推しの人ならぬ、
推しの物です。
もう散々、今までもティクマ(またはティグマ)に関して書いてきました。今後、古手の物は、もう多くは手にできないであろうのを感じているので記録的要素として残しておきます。

古いホース・ブランケット「タ・ケップ」です。馬の鞍の下に敷く分厚い毛布です。チベット語で正確に言うと、ニンバ・ティクマ( ティグマ)・タ・ケップとなります。
十字絞りの名称「ティクマ」に関して、「ティグマ」と呼ばれていたり、または記載しているのは、多くの英語表記だと「ク」の表記が、「g」(tigma)となるからだけど、実際のチベタンのチベット語の口語表現だと、「ク」(音聞き)になる場合が多く、僕は「ティクマ」と表記しております。
さて、早速。

蒼いインディゴで染められたの布地バージョンです。実物は深い青で良い色をしております。ティクマの布類または織物には、絞りを入れる「地布の色」は、青や赤、紫や白、黄色、緑など、多彩な下地の色がありますが個人的に青という色が好きです。

美しい十字紋様が明確に表現されてます。
輪郭に薄い黄色が現れています。

実用の用途は大きな馬用なのでサイズは大きい場合が多いですが、小型も存在します。物としての美しさ、完成度が素晴らしい。上部部分の赤色が鮮やかに撮れてしまっていますが、実物は燻んだ赤をした古色です。


古手です。本当に古いです。近くで見ると良さが増します。


無数に表現された十字紋様。所々、十字紋様が紅い色でも表現されている。以前、他の店の知人でないチベット人業者で「十字の数」なるものを言う人も居たが、個人的には、それは売り文句であろうと感じている。十字紋様ティクマの数の意味や数による価値の有無は、今まで納得できる理由を地元民を含めて僕は聞いたことがない。そういう現地業者の売り言葉が学者に信じられて伝聞してしまうのかもしれない。

白黒にしてみました。十字紋様が惹き立つのです。

安易に民芸または民藝という言葉は使えませんが、問答無用に美しいチベット民藝と個人的には思っています。
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以前も書きましたが、ティクマ(ティグマ)のホース・ブランケットと言えど、多種多様で、サイズ・年代・裏地の素材や色、などなど、様々な種類がございます。
十字紋様であるティクマ絞りは、チベット本土ラサやシガツェ近郊はもちろん、ラダックやザスカールなどでも目にします。民族衣装や、祭事衣装、靴や帽子、座布団、馬具や法具類にも表現されているチベット仏教圏での伝統的紋様です。
古くは、ネパールにもチベットから渡ってきたティクマの織物たち。ネパールでも、10年前位には目にする機会も今よりも多く、値段も比較的買いやすかった。チベット本土ラサとか東チベットには、今や、じぇんじぇん無いよ。いや、ほとんど無い、と言った方が正確かな。
ラダックであってもザンスカールであっても、古く、十字紋様が多く表現された質の良い民族衣装ゴンツェや、マントであるリンツェは、もう、だいぶ少なくなってしまいました。
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この投稿のホース・ブランケットは、普段、店を開けない知人のチベタンの店に有った物。前々から彼が持っていたのは知っていたけど、オリジナルのジービーズも扱ってるし、「めっちゃ良いけど、高いんだろうなー」と思って今まで見ていた。
ティクマ絞りの良い物は可能な限り、手に収めておきたい。
そこで、英語がほぼ話せない彼の店で、お茶をしてるついでに値段を聞いてみた。
「やっぱ、高けぇ」
そう思ったよね。
しかし、むっちゃ良い。
よく見せてもらったが、
問答無用に良い。
店主も「これ、めっちゃ良い」とか「本当に古いぜ」とか「もう入ってこないんだよね」とか言っている。
まぁ、たぶん事実よね、これに関しては。
俺が「高いよ、値引きしてよ」と言うと、全然割り引かず、「安いよ!」と言い、奥から、センゲェ(雪獅子)柄の大きく古いオリジナルのチベタン・ラグを出してくる。「これなんか、〇〇万ルピーだよ」とチベタンの親父は言う。
超高い。でも、業界相場的には安い部類なんだろう、とも感じた。
ニューヨークとか持っていったら幾らの値段がつくか分からん。同時に、このホース・ブランケットの「物の美しさ」は、個人的には、その超高額なラグに劣る物ではないと感じた。
状態も良い。十字絞りティクマも良いし、大きさもある。裏地も良い。古さもある。何より、好きなインディゴ・ベースだ。色も良い。
この先、また出会いのは簡単ではないだろう。出会えるかもしれないし、出会えないかもしれない。出会ったとしても、いつになるのかは分からない。
僕は決めた。
「分かったよ、買うよ。金、持ってくるから待っとけ」
そう言うと、僕は現金を取りに帰った。
1000ネパールルピー札(約1100円)の、分厚い札束を持って戻ると、僕は買い取った。
あー、もー、やんなちゃうな
でも、良い物を手に入れられました。
そんな思い出です。