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銀座でバブルを垣間見た日
こんにちは、ぱんだごろごろです。
先日、娘と二人で、銀座で待ち合わせ、晩ご飯を食べて来ました。
銀座8丁目
場所は銀座8丁目、出世街道と呼ばれる、細い路地を入ったところにあるお店でした。
その帰り道、銀座8丁目から、新橋駅へ向かおうとしたところ、
まるでかつてのバブルの頃のような光景を目の当たりにしたのです。
道路いっぱいにタクシーが溢れ、車道から歩道へと縫って走るのは、きらびやかな女性の後ろ姿。
白いロングドレスに、うなじを見せたアップの髪、高いヒール。
それも一人ではありません。
すぐ後ろには、華やかな色彩の、こちらは肩を剥き出しにしたロングドレスの女性が小走りに駆けて行きます。
これぞ、噂に聞く、銀座の『夜の蝶』。
思わず娘と顔を見合わせて、
「これは、もしやバブルでは?」
と呟いていました。
「うんうん、バブルの頃って、こんなだったのかも」
娘も頷きます。
今、日本は円安の打撃と諸物価の値上がりで、不況の真っ只中のはずですが、東京・銀座8丁目のクラブ街には、それをものともしない華やかな世界が広がっていたのです。
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大沢在昌『晩秋行』
しかし、なぜすぐに、バブルのことが頭に思い浮かんだのかと言えば、
数日前に、大沢在昌の新刊『晩秋行』を読んでいたからです。
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今は目黒で居酒屋を経営している、62歳の主人公、円堂は、銀座7丁目にある知り合いの店を出て、花椿通りを歩いていた時に、かつてのバブルの頃に顔見知りだった男に会い、ある情報を得る・・・。
62歳の円堂は、かつてのバブルの時代、不動産の地上げで金を儲け、派手に遊び歩いていました。
私自身は、バブルの頃には、すでに子どもが生まれていて、育児に忙しい日々を送っていたため、バブルの狂躁を、実際に見たこともなければ、感じたこともありません。
ただ、この小説の主人公とはぴったり同世代です。
バブルの恩恵に浴さなかった代わりに、何の痛手も被らなかった私にとって、この小説は、同時代を生きていながら、見ることのかなわなかった、華やかな時代を垣間見せてくれたのです。
そんな小説からの連想も相まって、
『今、私、タイムスリップして、バブルの頃の銀座にいるのかも』
という妄想を楽しみながら、娘と二人、新橋駅へ向かいました。
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出世街道のレストラン
私と娘がディナーを楽しんだレストランは、銀座8丁目の出世街道と呼ばれる、細い路地の中にあります。
クラブ「Nanae」が入っているビルが目印です。
その横の、えっと思うほど細い路地ですが、通れます。
そもそも、その路地が出世街道と呼ばれるようになったいきさつですが、
田中角栄に関係があります。
昔、田中角栄が、出世街道沿いの店で食事をしていたとき、
国会からの呼び出しを受けて、路地に出て、そのまままっすぐ進んで行くと、
道は次第に広くなり、国会議事堂にまで続いていた、というのです。
国会議事堂へ向けて、次第に広くなる路地を駆け抜ける角栄の姿、
彼が後に総理大臣にまで上り詰めたところから、
この細い路地は、出世街道とよばれるようになった、とのことでした。
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このレストランに行くことになったのは、
かつて私がよく通っていたレストランのシェフから、
この度、銀座のこのレストランを任されることになりました、という知らせが来たからでした。
美容師さんもそうですが、私は、その人の持つ腕に惚れるので、
美容師さんが別のヘアサロンに移れば、私もそのサロンに移りますし、
今回も、シェフが別のレストランに移ることになったので、
お祝いも兼ねて、彼の新しい城である、8丁目のレストランを訪ねたわけでした。
雰囲気は申し分なし。
初めてのお店ですし、気心の知れたシェフですから、
メニューを見ることもなく、お任せで頼むことにしました。
「これだけは食べていって欲しい、というものはありますか?」と尋ねると、
「いや、全部そうなんですよ」とシェフ。
「ホッキ貝はお好きですか」
「好きです」
「いい牡蠣があるんですが」
「ぜひ!」
「パスタは、渡り蟹のトマトクリームソースでどうでしょう」
「もちろん!」
「今日は、山形牛のA5があるんですよ」
「楽しみです!」
まず、美しい女性スタッフが注いでくれたシャンパンで乾杯。
ホッキ貝が運ばれます。
次は、フランス産の生ハムにパテ、これがまた美味しかった。
その次に、大きな牡蠣と、ソフトシェルクラブを揚げたもの(本当に柔らかくて、バリバリ食べました)。
次がパスタで、これも絶品。
もちろん、付け合わせの野菜も含めて、すべて完食しています。
そして、いよいよメインのA5級の山形牛です。
美味しい。
美味しい。
・・・、もうこれ以上、何も食べられない。
男性スタッフに、
『○○さん(シェフの名)に、もう何も食べられない、とお伝えください』
と頼みました。
彼は頷くと、
「○○シェフは、あとは、本当に小さなパンナコッタをご用意していました」
と言いました。
それくらいなら、食べられそうです。
私は娘と目を見交わしました。
二人そろって頷きます。
完食した山形牛のお皿を下げた後に、
小さなパンナコッタと、コーヒーが運ばれて来ました。
うんうん、こういうのを至福というのよね。
しみじみと味わったあと、お勘定を頼むと、厨房から、再びシェフがやって来ました。
すべてが美味しくて、すべてが私の好きなものでした。
この人、本当に私のこと、よくわかってくれている。
お客にそう思わせるという点で、彼は紛れもなくプロでした。
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そうして、彼と一緒に路地に出て、再会を約束して別れました。
新橋駅の方向へ歩いて行った時に、あのバブルの光景を見たのです。
娘は地下鉄を使うため、私は一人で、グリーン車に乗りました。
あと何回、こんな夜を過ごすことができるでしょう。
いえ、望めばきっと、何回でも。
信じていれば。
きっと。
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今日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。
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