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奇縁堂だより 号外【作家・直木三十五】
前回の「奇縁堂だより」を更新してからかなりの期間が空いてしまいました。おそらく半年くらいでしょうか?
決して飽きたわけではなく,編集の仕事の方をがありがたいことに事に忙しかったことと,また次回のネタをどうしようかと考えていたら,こんなにも期間が空いてしまいました。
これから,以前のように文学作品を紹介する「奇縁堂だより」を更新していこうと思っているので,ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
さて,ここからが今回の記事の本題です。
みなさんは,横浜市金沢区には意外と史跡が多いことを知っていましたか?
過日 “🎵 春のうららの〜” と口ずさみたくなるような陽気に誘われて,趣味の街歩きを兼ねてぶらぶらと,その史跡の一つである作家・直木三十五が晩年に過ごした旧宅跡を訪れ,その足で彼のお墓にお参りいたしました。
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今更ではありますが,新進・中堅作家によるエンターテイメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)に贈られる直木賞(正式には直木三十五賞)は,彼の名を記念して制定されました。
旧宅は老朽化のため2011年に取り壊されましたが,その門前(横浜市金沢区富岡東4-1-23 慶珊寺脇の坂を登る)には横浜ペンクラブによって文学碑(“芸術は短く貧乏は長し”とは意味深です)が建立されています。
文学碑の説明の隣には,旧宅の写真や家の図もあったのですが,撮り忘れてしまいました。
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また,お墓はこの文学碑からほど近い長昌寺(同区富岡東3-23-21)にありますが,何とお隣さんは『黒パン俘虜記』で直木賞を受賞した胡桃沢耕史のお墓ではありませんか! 聞くところによると,胡桃沢は直木賞受賞に執念を燃やし,直木の墓がこの寺に改葬されるに際して隣の墓地を確保していたとのことです。
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私は35年も前に転地して以来,幾度となくこの寺の前を通りながら,一度も墓を訪うことのなかった非礼を,墓前で深くお詫び申し上げました(🙏)。
少し直木三十五の話から離れますが,直木三十五の墓がある長昌寺や旧宅の近くにある慶珊寺は,かつて海沿いに位置していました。(かつて海だった場所は埋め立てられ,団地や工場が多く建設されています。)
台湾で「国父」,中国で「革命の父」と呼ばれる革命家・孫文が日本に亡命した際,かつて海沿いだった富岡近辺に上陸したということです。そのため,慶珊寺の門前には孫文が上陸したことを示す記念碑が建てられています。
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長昌寺と慶珊寺は,京急線京急富岡駅の東口を出て,徒歩で10分〜15分ほどの距離にあります。長昌寺の隣には富岡総合公園があり,広い芝生の広場が設置されているので,これからの季節,ピクニックなど散策にぴったりだと思います。
興味がある方は是非とも訪れてみてください!
本来ならば,直木三十五の作品を紹介したいのですが,残念ながら,書肆奇縁堂の在庫には彼の作品がありませんでした。そのため,次回から数回に渡り直木賞受賞作を紹介していきたいと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます。次回から本格的に"奇縁堂だより"を再開しますので,どうぞよろしくお願いいたします。