第93回 マンション防災を考えよう
ユルいコミュニティの防災組織創り
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
前回、防災の日を機にマンション防災の基本を振り返ろうということでマンション防災の必要性、安否確認の必要性についてまとめました。その中で、マンション防災のベースとなるコミュニティについて、「ユルいコミュニティ」がちょうど良いという考えも出てきました。
さて、ではこのユルコミュニティの中での防災組織とはどのようなものでしょうか。
実は、ユルコミュニティだからと言ってすべてがユルい組織でユルい活動をするわけではありません。ユルいとうことを理解した上で組織され活動を行うというだけで、組織や活動そのものがユルくては、命の危険とも闘わなければならない組織、活動としては成り立ちません。
マンションの中に防災組織を創る際に考えなければならないポイントは2つです。
一つ目は、組織の継続性、専門性を維持することです。マンションの組織というのは、管理組合の毎年の理事会が区分所有者の持ち回り方式を取っているところが大多数であることで、基本的には毎年担当者が変わるようになっているのですが、防災というのはある程度の専門知識も必要になりますし、その活動は災害に備える準備を整えるために様々な決め事があったり、計画的に進めなければならないことがあったりと、時間がかかるものです。したがって、単年で交代するのではなく、できれば3年から5年程度は継続して活動できる方を中心にして、防災の知識を得るために他の組織との兼任もできるだけ避けたメンバーで構成する組織創りが望ましいところです。数年単位での交代があるとしても、組織のメンバーの半数は残るといった形式をとるなど、継続性がある組織を目指していただければと思います。
ポイントの二つ目は、防災の組織はお金を使うことが容易な組織であることです。お金を使うのが容易というのは、自由に際限なくジャブジャブで使えるという意味ではなく、ある程度の予算を確保できて、ある程度それを使う決裁権を持っているという意味です。
一般的に地域の町会や自治会では、町会費、自治会費というのが設けられ、月額または年額の会費制になっていますが、その額は最低限の組織運営に必要な額として月額数百円の設定が多くあります。ところが防災を考える際には、人命救助や被災生活に必要な資機材を購入するにも数万から数十万んの単位で費用な掛かるものもあり、そのたびに臨時費用を徴収するための合意形成を得るために集会を開いて決済を仰いでいては、大変な労力と時間を必要とします。したがって、ある程度の予算を確保でき、ある程度の決裁権を持って購入、使用することができる環境も必要です。
このようなポイントを考えると、マンションでは二つの場合が活動しやすい組織になる可能性が高いと考えます。
それは、管理組合の中に委員会を設けて活動をすること、自治会の活動として防災組織を組成し、管理組合予算での活動をするように管理組合での合意形成を行うことです。
管理組合の防災委員会を結成する場合は、管理規約の中に委員会規定がなければいけませんので、規約改正も視野に入れなければならない点は注意が必要です。また、自治会組織で管理組合予算で活動する場合も、管理組合の総会などで自治会との連携を決議し、理事役員が当該防災組織に担当理事として出席、もしくは組織の一員としてメンバーになっているなどの環境を整える必要があるので、この点も注意が必要です。
実際にはこのほかの自主防災組織結成と管理組合との連携、独自防災会で活動を行っているところも多数あるのですが、いずれにしても管理組合との連携を図り、予算上は管理組合の費用を活動費としているところが多いです。
今日はここまでです。次回は、この組織の作り方とリーダーシップ、主導先導について振り返りを含めて考えてみます。
マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。