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第87回 マンション防災を考えよう

マンション防災計画の考え方3 活動単位

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

前々回から、マンション防災を計画する際の考え方、考えるときの整理の仕方、考える際の方向性の分類を何回かに分けて考えていますが、今回はその3回目です。

今回は【活動単位】です。
マンション防災を考える場合、もちろんその全体像は管理組合が主体者となります。これはマンションという区分所有建物の共有財産の価値を維持向上させるための管理運営を担うのが管理者であり、通常の分譲マンションではその管理者は管理組合(区分所有者)から選出された理事会の長、理事長がその役目を負っています。したがって、管理組合またはその下部組織としての防災委員会、またはマンション内の居住者活動を担当している自治会などが組織的な防災活動を行いますが、実際には組織的防災活動だけでは不十分です。
それは、やはり各専有部(各住戸)は個人が所有しているものであるという区分所有建物、集合住宅の特殊性のある部分が大きく関係します。そのため、各専有部(住戸)では組織とは別に個人での災害対策が必要になるということです。

今回の、マンション防災を考える際の一つの考え方、見方の分類としての「活動単位」とは、すなわち、個人(各住戸)、管理組合、そして近隣組織(公的機関を含む)の3つです。言い換えると、よく耳にする言葉だと思いますが、「自助、共助、公助」に近いものです。

最初に自助、個人(各住戸)です。
これは、特に地震などの突発的な災害発生時に、命を守るための宅内対策、初動としての消火や一時避難のための準備、家族の安否確認や行動計画、被害を最小限にするための対策、被災生活を過ごすための備蓄などです。管理組合が考える防災活動になぜこの自助が出てくるのかと質問をいただいたことがありますが、それには以下のようにお答えをしています。
防災についてはよほど普段から考えている人でなければその知識もなく、何を行えばよいか分からない人が大多数です。したがって、管理組合より各住戸に対して、どのような準備をしなくてはならないかを示し、また管理組合で行う準備と各住戸で行う準備の違いを周知することで、管理組合費を無駄に使わず、互いに適切な準備が整うようにすることも管理組合の役目です。

次に共助(管理組合)です。
これは、これまで述べてきたことをはじめとした、俗に言うマンション防災の中心になる部分で、事案の準備対策、訓練、災害対策本部の計画、災害時行動、復旧活動に至るまで組織として行う活動の全般と考えてください。自助(各住戸)と分けて考えるという前提があれば、名の意をするべきかを考える際に、組織でしなくてはならないことがわかりやすくなっていると思います。

最後に公助(近隣組織)です。
一般的に公助は自治体、消防、警察、自衛隊などの公的機関の支援を指す場合が多く、公助には期待しないという大前提が市民の防災活動にはあります。確かに災害発生時の救助活動や避難所など災害発生後の発災急性期の支援には期待ができません。しかし、その後の復旧期には大きな支援が期待できます。また、ここで言う公助には近隣組織が含まれています。これは、地域に存在する自治会町会などの組織、他のマンション、医療機関や福祉関係施設など、災害発生直後から生き残るために協力して活動できる可能性がある組織のことです。けが人などの救助、初動に近い範囲での消火活動、数日間の滞在場所の確保など、可能性を探っていくことで、防災活動におけるマンション内での活動範囲、限界の理解と地域連携を考えるきっかけになります。

以上、これまでが防災活動の考え方のヒント3つ「項目分類」「フェーズ」「活動単位」です。
よく考えるようになると、この3つはどれか一つではなく、3つの考え方を多面的に考える必要があることに気づきます。言いかえれば、三次元的に、立方体のように3軸を設けて、全体を9つのブロックに分け、それぞれで必要なことを考えるという作業になります。
ただし、いきなりそれは難易度が高いので、例えば項目分類(設備、体制、意識)で考えた後に、フェーズや活動単位の目線で見たときにどうかということを検証していくことで、全体の活動が整合性のとれた、穴の無いものにブラッシュアップしていけると考えてください。
相当な時間も手間もかかりますので、一歩一歩、ゆっくりでいいので進めていきましょう。

今日はここまでです。次回は8月も真っ盛りなので、少し夏休みに関わる話題も考えていきたいと思います。またよろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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