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第99回 マンション防災を考えよう
マンションの災害対策本部組織
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
前回、マンションの「災害対策本部(災対本部)」について考えました。最初から災対本部要員を決めておいても、発災時に不在の可能性も多々あることから、組織構成とその役割、作業内容だけを考えておき、発災時にその場に(マンション内に)いた人で結成し、行動するというものです。
今回はその組織構成から考えてみましょう。
最小限の形を考えたときに、基本となるのは「本部(本部長・副本部長)」「情報班」「保安班」の構成です。
「本部」は、本部長、副本部長で構成され、すべての決定を行う最終決定者として指揮します。副本部長は組織が拡大されたでも、すべての情報をまとめて本部長に上げ、進言するなどのサポートを行います。
「情報班」は、発災直後の安否確認からマンション内の被害状況、近隣地域情報、避難所との情報連携、災対本部から居住者への情報展開など、情報に関する業務を取りまとめて行います。
「保安班」は、発災直後は情報班と連携して救護者の支援、救護などを行い、その後に備蓄資器材の搬出や管理運営、警備などの保安業務にあたります。
以上は、最小単位での組織構成です。マンション内に居た人の人数が多くなれば、その分いろいろな作業に当たることができますので、人数に余裕によって例えば「本部班」「情報班」「救護班」「物資班」「保安班」などに分業することも可能です。
反対に、発災からの時間経過により災害対応活動の終息に向け、組織構成を縮小することも可能です。
各班は最低3~4名の構成員がいるといいと思います。行動は本部長・副本部長以外は自らの安心のためもできるだけ2名以上の複数名で行うことが、望ましいです。
また、マンションは高層建て、低層建て、複数等建てなどマンションごとにその建物構造、構成が違いますので、その対応も考えておく必要があります。例えば多棟建ての場合には災対本部を各棟ごとに小隊として結成し、全体本部を別に構成することで、命令系統を整理し、棟間の距離があっても行動がしやすく情報がまとめられやすくなるなどが考えられます。
一方、マンション棟内では、高層階の方は1階に設置された災対本部との連絡や物資の移動にも苦労する場合が多いので、3~5階ごとに階層でそれぞれ班を設置して行動、物資などはバケツリレー方式で高層階に運搬するなど、対応を考えた方がいい場合も多々あります。
それではここで、災対本部を設置する方法について考えます。
事前に人が決まっていないので、そこにいた人たちで役割を分担します。例えばの方法ですが、発災後(地震発生後など)に、3階ごとに決められた階層ごとに集合場所(エレベーターホールなど)に一旦集まるようにします。この段階である程度の安否確認も同時に行います。
そして集まった中から、年齢・体力などを互いに話し合い、班に割り当てるという方法です。このような方法は大型ではないマンションでは、全体で行います。管理室前や集会室に集まってもらい、そこで決定して災対本部を設置するというものです。もちろんその後に人数が増えたり適任者が帰宅するなどした場合は適宜交代するなどフレキシブルに対応します。
でもここで、問題が生じます。各役割・班の構成員が何をすればいいかがわからないという点です。
そのために、近年ではFAB(First Action Box)、FMB(First Mission Box)など名称はいろいろですが、初期段階の行動をまとめ、その場で見てすぐに行動できる指示書的なものが入ったBOXを各集合場所に設置しておき、集まった人たちでその箱を開け、書いてある指示に従い行動するという方法が主流となりつつあります。
マンションで制作した防災マニュアルに書く場合もありますが、発災時にマニュアルを自宅から持ち出す、指示や行動が文章で書かれたものを見るより、わかりやすい方法がいいと考えます。
このFABでは、例えば「●●にある●●室のカギを取ってくる。」「入出したらホワイトボードを図のように配置する。」など、最初にすることが順を追って「ひとつづつ」誰でもわかるように書いてあります。(わかりにくいと、誰かに聞く、確認するだけで手間がかかり、その確認の相手は誰なのか、なども不明確になるため「聞かなくてもできる」レベルにまで指示を書きます。)
このように、発災時に誰でもその場にいた人たちで災対本部を立ち上げ、共助の活動を開始するということが重要です。その後は、被災生活などを含めある程度マニュアルに記載して活動を行うことが可能でしょうし、また記載があっても想定外の事態が生じるのが災害時なので、臨機応変に居住者どうして「共助・助け合いの観点」をもって、決めていっていただきたいと思います。
今日はここまでです。次回はこの連載もついに100回を迎えます。まだどうするか決めていませんが、少し別の話しも含め考えたいと思います。
またその後は、振り返りまとめとして各宅内の対策について考えていきたいと思っております。
よろしくお願いいたします。
マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学
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