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第49回 マンション防災を考えよう

津波防災の日

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。

このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという共同住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

本来、本日は前回考えたマンションの第三者管理方式のメリットデメリットをはじめ、防災の視点で考える課題、解決策を予定しておりましたが、本日は違う話題を挟ませていただきます。

11月5日は、「津波防災の日」です。
平成23年(2011年)6月、「津波対策の推進に関する法律」が制定されました。これは、津波対策を総合的かつ効果的に推進することを目的として、津波対策に関する観測体制強化、調査研究推進、被害予測、連携協力体制整備、防災対策実施などが規定されています。その中で、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるために、11月5日を「津波防災の日」とすることが定められました。

なぜ11月5日なのかというと、安政元年(1854年)の11月5日に発生した安政南海地震で、当時の紀州藩広村(今の和歌山県広川町)を津波が襲った際に、濱口梧陵(儀兵衛)という人が稲むら(稲わらを積んだもの)に火をつけて、村人を安全な場所に誘導したという実話があり、そこからこの日を津波防災の日としました。
この実話は、後に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)がこの偉業を基に小説「A Living God」を書き、これを子供たちに伝えたいと、昭和9年(1934年)に中井常蔵という人が記した「稲村の火」という教材用文章が採択され、広く知られるようになりました。

この話は津波が来ることに気づかない村人たちを、稲むらに火をつけて気づかせ、村の高台へ誘導して命を救ったという内容ですが、その後、この地域では津波に備えるための堤防も築かれました。

現在、東南海トラフ巨大地震の発生による津波被害の予測を基に、防潮堤、津波避難タワーの整備などが行われていますが、この「稲むらの火」にも大切な教訓があります。
地震が発生したら津波の発生があることを前提に、速やかに高台等へ避難することです。東日本大震災の際、避難行動を取るかどうかを周りの人と互いに様子見をして時間が経過してしまい避難が間に合わなかった人、家に残した家族の確認をするために帰宅しようとして間に合わなかった人、津波の到来を予測せず、避難しなかったためにのまれてしまった人などがいました。
何はなくとも、まずは避難することが一番重要です。津波警報なども間に合わないケースもあるので、地震が発生したらまず逃げる。空振りでもいい。このような考え方が、津波被害が予測されている地域では必要です。

「釜石の奇跡」と言われる、小中学生たちが地震直後に「津波てんでんこ」を実践して生徒全員が生存したというお話しもあります。

ちなみに、「津波てんでんこ」を単に「人のことをほっておいても自身が助かるためにてんでんばらばらに避難すること」と勘違いしている人がいますが、大きな間違いです。

この言葉は、「平時から家族や地域で行動、集合場所などをきちんと話し合い、確認し合って取り決めておくことで、地震・津波が発生した際には互いに事前に決められた行動を取る事を信じて、それぞれが安全を確保する行動を取る事」を意味します。

そう、やはり平時からの準備が大変重要だということです。
津波対策だけでなく「災害」への対策は、発生した後への準備だけでなく、発生する前の備えをどれだけしておくかにかかっています。皆さんもこの機会に改めて自分や家族の災害への備えを見直してみていただきたいと思います。

今回はここまでです。
次回は前回の続きで、第三者管理方式のメリットとデメリットを挙げ、その中で防災の視点で考えたときの問題点と解決策を考えていこうと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングのご依頼をおまちしております。よろしくお願い申し上げます。

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