第14回 マンション防災を考えよう
在宅避難生活のポイント12(その他の設備2)
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えよう、在宅避難のポイントについてこれまで様々な問題を考えてきましたが、そろそろ一旦最後のポイントとします。
今回のポイントは、その他設備、施設の中でも普段はあまり居住者が目にすることが多くはない、機械室、電気設備などです。
通常、マンションの機械室などは地震の際にもあまり揺れない構造や、設置場所になっている場合も多いのですが、災害には強いと思われている場合も多いのですが、注意が必要です。
東京近郊のタワー型マンションで、台風が通過した際の大雨で内水氾濫が生じ、マンションの地下にある高圧受変電設備が冠水して停電したというニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。このシリーズでも言っているように、停電はマンションのエレベータ、給水設備等の停止を意味します。まさにライフラインに直結する問題です。さらにこのケースではタワーマンションであったために、エレベータの停止が居住者にとってどれほど大変であるかを認識する機会となってしまいました。
この件は、特にマンション防災を考えている方からは単なるニュースとしてではなく、大きな問題であると認識されました。
なぜなら、一番の問題は機械室が地下にあるということだからです。
なぜ大問題かというと、このような施設、設備は簡単に移動できません。そのような空き部屋があるわけでもなく、機械は大変な大きさと重量で、配線などの問題もありますので、浸水被害があったからと言ってじゃあ2階に移そうかという簡単な話しではないのです。そもそものマンション設計から見直さなければならないのですが、それは不可能です。
だからこそ、きちんと水害時の水の経路なども確認し、対策をしておくことが重要になってくるのです。
令和2年6月には、国土交通省が「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を取りまとめました。そこでは、電気設備を浸水リスクの低い上階に設置することや、建物外周に水防ラインを設定し浸水経路に対策を実施すること、設置室への浸水防止対策の実施、復旧体制の整備などが盛り込まれています。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000132.html
このような設備、施設は普段はあまり居住者が目にすることがないため、災害が発生してから確認をするにしても、どこあるのか、どのようなものが収容されているのか、どう対処すれば良いのか、ある程度の知識を事前に確認して準備することが必要です。
管理会社と相談し、図面の確認から始めて、防災委員会や大祭対策員会で確認後に、防災マニュアルに織り込むことや、居住者の見学ツアーを防災訓練時に企画するなど、周知に努めましょう。
また、機械室は一か所とは限りません。マンション内の途中の階に中継機器用の設備があったり、収容機器の種類によって分かれていたり、様々な場合があるので注意してください。
ちなみに、例えばインターネット通信の設備としては、共用部の機械室や管理室に外部からの回線を接続する機器が設置され、そこからマンション内の各部屋への配線の途中で中継機器があり、各々が廊下の壁にある小規模な機会室(機器収納スペース)に入っている場合がほとんどです。
ということで、本日はここまでです。
これまでたくさんの、家庭内の備蓄を含む備え、ライフライン、地震発生時の行動、マンション設備などを考えてきました。このほかにもマンション内の設備や居住者の準備はまだまだありますが、それはまた追ってお話ししたいと思います。
次回からは、少し目線を変えて、「マンション管理組合の防災活動」を考えていきたいと思います。これは、マンションというのは(特に分譲マンション)区分所有者によって構成される管理組合によって維持管理されており、それはすなわち防災活動の主体も管理組合になるということです。そこで、管理組合がどのようにして多数の人がいるマンションで組織的な防災活動を行うのか、その中身は何があるのか、それを実践するにはどうして行くか、などを一つ一つ考えていきたいと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
マンション防災研究所 所長 城戸 学