第81回 マンション防災を考えよう
災害発生の可能性について
皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。
今回は、災害発生の可能性について考えてみようと思います。
と言っても、確率論で細かい計算をしようというのではありません。自分が、自分の家族が、自宅が、災害で被災するとは想像できていない方がとても多いので、マンション居住者に限らず、日本に住んでいる限りその度合いはともかく、災害からは逃れられないということを認識するために、少し考えてみようということです。
これも、災害時の行動についてよく言われる「正常性バイアス」と言われる心理的状態とよく似た考え方になってしまうことで、認識が甘くなっている可能性があります。
正常性バイアスは、平時、通常時と違い状況に急になってしまった場合に、大変なことになるはずがない。きっと大丈夫だ。何もない。これまで大丈夫だったし、これからも何もない。と、いきなりの緊急事態に精神がパニックになって崩壊してしまいそうになるのを、何も根拠がなくても平静を取り戻そうとする自己防衛的な心理状態です。
普段から危機を想定した準備や行動計画を立てておくことで、危機的な状況が急に起きても、パニックにならず落ち着いて行動ができるようになります。これが「訓練」です。何事も予測、想定して訓練をしておけばいざというときに行動が変わり、いろいろ助かることがあります。
では、最初に地震です。
政府の地震調査研究推進本部では、南海トラフでのM8~9クラスの地震の発生確率は30年以内に70~80%としています。この80%を高いと感じますか?低いと感じますか?
海溝型と断層型では考え方が違うところもありますが、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は、直前の発生確率が0.02%~8%、熊本地震もほぼ0%~0.9%となっていました。また、政府の調査では大阪北部地震のようなM6クラスの地震発生確率については対象外で発表されません。(対象はM7.0以上を起こす断層)
さらに、海溝型の地震は地球上のプレートの動きによって定期的にひずみが生じて発生するメカニズムのため、定期的に発生することが知られています。その発生間隔を考えると、現在はその発生予測期間に入ってしまっていますので、非常に可能性が高まってきていると言えるでしょう。
また相模トラフでの地震発生確率がM7クラスで70%程度とされているため、南海トラフとどちらかの地震が発生することで互いに影響をしあい、結果的に両方で地震が発生する可能性が非常に高いのです。これは過去に発生した東南海トラフ巨大地震がそうであったことで、同様に予測されているのです。
地震の発生はこの相模トラフ、南海トラフに限りません。日本海溝沿いの太平洋側、日本海側での発生予測もされていますし、日本中に活断層があるために、どこで発生してもおかしくないのがこの日本なのです。
今日はここまでにします。
次回、その他の災害についても考えたうえで、マンションではどのような対策をすべきか、何から始めるのか、なども考えていきたいと思います。
またよろしくお願いいたします。
マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学
マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。
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