なごり雪
今いる部屋のベランダからは、中学校が見える。
かつて、僕も通っていた学校だ。
一応母校になるのだろうが、
ほとんど愛着はない。
その頃の友達とはほとんど誰ともつながっていない。
地元に愛着を感じないのはそのせいかもしれない。
2年生の冬、僕はアメリカから帰国した。
自分の意見を持ち主張することが当たり前の感覚で教育を受けた僕に、クラスメートの不思議な反応の意図を汲むことは容易ではなかった。
ある日クラスの悪ガキ大将みたいなデブに呼び出され、みぞおちに膝蹴りを受けた。
同様のことが何度か繰り返された。
はじめ仲良くしていた友達も段々と表面的になり、僕自身も、心から誰かを信用することはできなかった。
卒業式に、担任の先生が
なごり雪を弾き語りしてくれた。
楽しいどころか、辛いばかりの日々だったのに
泣きそうになったが、悔しくて泣くのを堪えた。
ベランダからは今も変わらず吹奏楽部の練習の音が聞こえてくる。