うたとえ2024『欠食』及川恒平

詩/有働薫 詩集『モーツアルトになっちゃった』より
演奏/PaperLand〜及川恒平(歌、曲、撮影、作画)
本田修二(ギター、鍵盤ハーモニカ) 幸田実(ベース)

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「欠食」 

  
青葉の放課後
給食のミルクの匂い
ララ物資の脱脂粉乳は
上澄みを飲んで顔をあげると
どの子も白い口髭の老人

メラニン樹脂のお椀の底に
厚ぼったく沈殿している
黒板のみぞには
白墨の粉が詰まっている

秘密を抱えたわたし
(それがうれしくてたまらない)
両腕で囲んだけばけばのぴくぴくを
覗きこむと出てくる小さなため息

よしこちゃんは
お椀を腕に抱えて
校門を出る

ランドセルが踊り
両手が揺れて
家につくころには
お椀の底に
へばりついている
ローセキの
粉みたいに

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