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和田大仏~横穴古墳群に彫り込まれた磨崖仏~
福島県は東北地方のなかでも磨崖仏が多いのではないかと感じる。磨崖仏とは、石仏の一種で自然の岩壁や露岩などに造立された仏像のことである。福島県須賀川市にある和田大仏は、鎌倉時代の作と推定される磨崖仏である。
大仏付近には大仏大橋という橋があるほか、地名も「和田大仏」となっている。大仏の姿は道路からでも木々の合間から見ることができる。大仏大橋の下に車を停め、大仏へ向かう。石段の下からでも厳かな雰囲気が漂ってくる。
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石段を登ると和田大仏と横穴古墳群の全容が見えてくる。横穴古墳群があることも相まって大仏の存在感に圧倒される。訪れたのは12月初旬だったが、周囲は銀杏の匂いに包まれていた。
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和田大仏は、横穴古墳群が築造されていた崖面に彫りこまれた高さ約3.6mの阿弥陀如来(一説には大日如来)坐像である。伝説によると、大同3(808)年に弘法大師空海が諸国を行脚した際、この崖面に三鈷を用いて彫ったとされる。
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風化が激しく像容ははっきりしないが、個人的には大日如来ではなく阿弥陀如来のように見える。
大日如来とする説は空海が彫った(空海が開祖した真言宗の本尊が大日如来であるため)という伝説によるものから生まれたのではないだろうか。
大仏の乳部がえぐられているが、これは昔、乳不足の婦女子が大仏の乳部を削って飲むと乳の出が良くなるという信仰によるものだそうだ。この大仏が人々の生活に密接していたことが伺い知れるエピソードである。
蛇足だが、大仏の前には土偶の顔のようなものが置かれており、なんだか土着の呪術めいて見えた。
大仏の周囲にある横穴のなかにも磨崖仏が彫られているが、風化が激しく像容を伺うことはできない。
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元々浮彫されていたものが剝落したのか、石仏の跡が残っている。
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この付近一帯は古墳時代には石背国の中心地であったようで、たくさんの古墳が点在している。
大仏の彫られた崖面にも数十基の横穴古墳が築造されており、これらは阿武隈川流域を中心に勢力をもっていた豪族の墓跡と考えられているという。仏教伝来以前からの聖域であったようだ。
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他にも、江戸時代の石仏も1基あり、花瓶が置かれ花が供えられていた。
今も地元の方々から大切にされている場所だということが伝わってくる。言うまでもないことだが、こうした磨崖仏や石仏を見に行く際は、地域の信仰の場であることを常に意識した振る舞いをしなければならない。
和田大仏を後にし、車に乗り込んでから靴が銀杏臭くなっていることに気づいた。知らず知らずのうちに銀杏を踏んでいたようだ。これも石仏巡りの醍醐味と言い聞かせ、銀杏臭さに閉口しながら次の目的地へ向かった。
【所在地】福島県須賀川市和田大仏
【駐車場】なし(大仏大橋の下に車を停められるスペースあり)